トップへ

アイドル×ホログラフィックに見る、ライブ演出の新たな可能性 『Future LIVE~複合現実~』レポ

2017年12月14日 08:02  リアルサウンド

リアルサウンド

写真

 DMM.yellとDMM VR THEATERのコラボイベント『DMM.yell×DMM VR THEATER Future LIVE~複合現実~ vol.3』が11月25日、DMM VR THEATER YOKOHAMAにて開催された。


参考:Amazon EchoとEcho Plus、音楽ファンが買うべきスピーカーは? デザインや機能を比較


 タイトルの「Future LIVE」とは、ホログラフィック技術とライブを融合させた新しいエンターテインメントのこと。第3回目を迎えた今回のイベントでは、計5組のアイドルグループが登場し、各グループがホログラフィック技術とコラボレーションしたステージを展開。全3公演で行われ、第1公演はamiinA、ヲルタナティヴ、OnePixcelの3組、第2公演は「sora tob sakana」、第3公演は「まなみのりさ」が出演した。本稿では、第1公演の模様をレポートする。


 「Future LIVE」のステージでは、客席とステージの間に設置されたホログラフィックスクリーンと、ステージ後方の背面スクリーンに挟まれる形で、アイドルはパフォーマンスを行う。前面と背面のスクリーンに映像が映し出されることによって、映像の中に演者が入り込んでいるような、立体的なライブ演出を実現することができる。また、ステージの両サイドには縦型のスクリーンが設置されており、ステージを飛び出す形で映像が流れる仕組みとなっている。


 スクリーンを一枚隔ててライブを見ることに対して、「肝心のアーティストが見えにくくなるのでは?」と不安を抱く人もいるかもしれない。しかし、最後列で見ていた筆者の体感としては、よく目を凝らして見ないとスクリーンがあることにも気付かないくらい、ホログラフィックスクリーンの透過率は高かったように思う。


 ライブ1組目として、5人組アイドルグループのヲルタナティヴが登場。ホログラフィックスクリーンを使用した演出がはじまり、燃え盛る炎や水の揺らぎ、宇宙を回遊しているようなものから、時にはサイケデリックな映像も楽曲のイメージにあわせて映し出された。ステージ装飾という点での豪華さはもちろん、目まぐるしく変わる映像は視覚的な意味でのインパクトも強い。さらに映像演出がダンスとシームレスに融合することで、パフォーマンスのダイナミズムも高まる。観客も、よりライブに没入することができるのではないだろうか。


 また、映像演出のバリエーションも多い。放射状の光が飛び出す映像では、ステージ奥から客席に飛び出してくる3D感があり、空中に立体的な歌詞が浮かび上がってくる演出も迫力があった。普通なら画面越しで観るMVの世界を、リアルな距離感で見ているような感覚に近い。特に歌詞の演出は、観客と一緒に歌うパートやポエトリーを含んだ楽曲に活用することで、演者と観客の一体感がさらに高まりそうだ。また、「夏の香のパ・ド・ドゥ」ではMVがステージ上やサイドスクリーンに映され、MVとシンクロするようなパフォーマンスも見ることができた。ステージの演出だけでなく、アイドル自身の表現の幅も広がると言えるだろう。


 続けて登場したのは、3人組ガールズグループ OnePixcel。魅せるダンスを得意とする同グループは、観客との一体感や迫力を趣向していたヲルタナティヴの演出とは違い、ダンスパフォーマンスを引き立たせるようなステージ演出を行っていた。1曲目「sora」は光が降りそそぐ演出からはじまり、カラフルでポップなステージを作り上げ、続く「seven colors」では<アンブレラ>という歌詞にあわせるように、雨が降る演出を取り入れていた。ホログラフィックの近未来的な演出は、エレクトロニック系の音楽やダンスとの親和性が高く、ひとつのアクセントとして彼女たちのダンスを彩っていた印象だ。


 3組の中で一番ファンタジー色の強いステージを見せたのが、最後に登場した2人組アイドルグループ amiinAだ。ふたりのポジションを切り抜く形でホログラフィックスクリーンに映像が映し出され、まるで巨大な絵本がステージ上に登場したような感覚を覚えた。また、彼女たちの指の動きや体の回転にあわせて線が浮き出てくるのも面白い。映像のプログラミングとダンスをシンクロさせていると思われるが、その点においてはグループの人数が少ない方が、より複雑な演出が可能になるのかもしれない。今回のイベントでは、それぞれのグループ対して異なるVJが担当していた。ホログラフィックスクリーンを使用したライブでは、担当するVJによってライブのクオリティや性質も大きく変わるため、アーティストやライブのコンセプトと親和性の高いクリエイターをブッキングするのも重要になってくるのは間違いない。


 昨今のライブでは、最新のテクノロジーを利用した意欲的な演出が次々と登場している。今回の「Future LIVE」でも三者三様のステージを見せてくれたが、映像演出の自由度が高いだけに、まだまだ表現のバリエーションは広がっていきそうだ。今後は、画期的なライブ演出のシステムを、いかに使いこなしていくかが重要になっていきそうだ。(取材・文=泉夏音)