12月12日放送の「ガイアの夜明け」(テレビ東京)が、再び外国人技能実習生の問題に切り込んだ。8月の放送で、外国人実習生たちの過酷な労働環境が紹介され大きな反響を呼んだが、今回はさらに発注元の親会社の対応に非難の矛先が向かった。
彼女たちが日々作っていたという服が画面に映し出されると、すぐにネットユーザーによってブランド名が特定された。いわゆるギャル向けの人気女性服ブランドだ。すぐさまツイッターで炎上し、トレンド入りする事態になった。(文:okei)
工場の弁護士「だってやれるんだもん。法律が認めているんだから」
問題になった孫請け、岐阜県の縫製工場は、実習生たちをほぼ休みなく時給400円で長時間労働させた上に、1人600万円以上にものぼる賃金や残業代が未払いのままだ。請求されると「倒産した」として支払いを免れているが、場所や社名を変えて再び開業。明らかに、国の「未払い賃金立替制度」を悪用した計画倒産だ。
請求した実習生5人は解雇され寮も追い出され、訴えはいまだ無視されている。実習生たちを支援する岐阜一般労働組合のケンカイさんが電話で問題点を追及すると、弁護士は悪びれず「だってやれるんだもん。法律が認めているんだから」と言い放った。
技能実習生の問題に詳しい指宿昭一弁護士は、こうした制度の悪用はよく行なわれており、違法ではないが「制度上の不備がある」と問題視している。本当に、技能実習生とは名ばかりの「安く使い倒す労働力」になってしまっているのだ。
親会社「法的義務のないことについて、取材には応じられません」
悪いのは直接雇用する縫製工場やその弁護士ではあるが、そこに発注しているアパレル会社に責任はないのか。ケンカイさんは、実習生たちと共に東京・代々木にある親会社へ要請文を手渡しに向かった。アパレル会社の社長宛てに辛かった労働の日々と賃金未払いの窮状を綴り、
「どうかお願いします。私たちのような実習生をこれ以上出さないと約束してください。そして、その約束を世の中に発表してください」
と訴えた。未払い賃金を払ってくれと言っているわけではなく、こうした窮状を知って、今後こうしたことがないようにして欲しいと願い出たのだ。
しかし、会社の外で待っていた担当者の対応は冷たいものだった。手紙は受け取ったが質問には一切答えず、「これでよろしいですか。もう結構です」と言って建物内へ消えた。実習生たちは中にも入れないことに呆然としていた。
後に送られてきた通知文には、「法的義務のないことについて、取材には応じられません」とあった。実習生との間に法的契約や労使関係は無く、法的要求を受ける立場も義務もないという。
確かに法的義務はないかもしれないが、道義的責任はないのだろうか。ツイッターユーザーからは「同じ日本人として恥ずかしい」など、批判や失望の声が上がり大炎上。「大手なのに危機管理ゼロなの?」といった声もあったが、彼女たちの話を真摯に受け止める姿勢を少しでも見せていれば、ここまでの批判には至らなかったのではあるまいか。
世界的にも生産現場の環境改善を求める動き
親会社としては、ちゃんと契約した加工賃を払って発注しただけで、悪徳企業は孫請けだという言い分があるだろう。もっと言えば、いい物を安く求める消費者ニーズに答えただけというかもしれない。
しかし、こうした考え方がいつまで通るだろうか。今年3月、「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングは、工場の労働環境の改善や生産過程の透明化を求める声に押され、主な縫製工場のリストを公表した。こうした動きは欧米のアパレル企業で進んでおり、日本でも広がる可能性があるという。末端の労働環境に配慮しないメーカーは、今後淘汰されていくのかもしれない。