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「おとり捜査」にならない? 客を装った捜査官に「牛の生レバー」提供の店長逮捕

2017年12月13日 10:33  弁護士ドットコム

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牛の生レバーを客に提供したとして、兵庫県加東市の焼き肉店の店長が12月上旬、食品衛生法違反の疑いで県警に逮捕された。


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報道によると、店長は今年9月と11月、牛の生レバーを十分に加熱するよう伝えず、客に提供した疑いが持たれている。警察の取り調べに対して、容疑を認めているという。


牛の生レバーの提供は法律で禁止されているが、この店で「裏メニュー」として提供されているという情報が寄せられて、客を装った捜査員が訪れたところ、店員が「きょうは生レバーがあります」とすすめたという。


一方、ネット上では「おとり捜査じゃねコレ」「こんなのおとり捜査でひっかけるほどの問題なのかなあ…」「日本はおとり捜査はダメと聞いた記憶があるが」といった声があがった。


はたして、今回のように、捜査員が客を装うのは「おとり捜査」なのだろうか。刑事事件にくわしい片田真志弁護士に聞いた。


●「犯意誘発型」と「機会提供型」がある

「現在の日本の法律には、いわゆる『おとり捜査』について『どこまで適法で、どこからが違法になる』のかを定めた規定はありません。また、基準を明確に示した判例もありません。ただ、一般的には、次の2つに分けて議論されています」


どのような議論なのだろうか。


「1つ目は、犯罪をおこなう意思を持っていない人に対して、捜査機関が働きかけて、犯罪をおこなわせる意思を誘発する場合です。『犯意誘発型』と呼ばれています。捜査機関の強い働きかけで犯罪が生み出されたといえるので、違法と評価されやすくなります。


たとえば、捜査機関が、ネット上に『今すぐお金が必要な方へ。急募!銀行口座1件10万円で買いとります!』と広告を打ち、それを見て連絡してきた人に口座を作らせた場合などは違法とされるでしょう。金に困っている人に対し、10万円という高額の報酬を提示して捜査機関が積極的に犯罪を作り出しているといえるからです。


2つ目は、もうすでに、機会さえあれば犯罪をおこなう意思を持っている人に対して、捜査員が機会を与えただけの場合です。『機会提供型』と呼ばれています。


たとえば薬物の密売人が多く出入りと噂されている場所に、捜査員が一般人を装ってうろつき、『薬いらないか』と声をかけてきた密売人を検挙するような場合です。


あるいは、痴漢が多く起こっている電車に捜査員が私服を着て乗っていたところ、痴漢被害に遭ってその犯人を検挙するような場合です。いずれも捜査員からの積極的な働きかけはありませんので、犯罪の機会を与えただけと評価され、適法とされるでしょう」


今回のケースはどちらにあたるのだろうか。


「客として来店しただけの捜査員に、店員側が率先して生レバーをすすめてきたようです。したがって、典型的な『機会提供型』として適法とされる可能性が高いと思われます。


逆に、たとえば、客を装った捜査員が、店員に対して『生レバーを出してくれ。絶対に秘密にするから』と強く求めて、店員が『違法なので出せません』と断っても、捜査員が『通常代金の2倍はらう。出してくれないならこのまま帰る』などとしつこく迫った場合は、『犯意誘発型』として違法とされるでしょう」


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
片田 真志(かただ・まさし)弁護士
弁護士法人古川・片田総合法律事務所 代表。2014年弁護士登録。大阪弁護士会所属。2004年大阪地裁にて裁判官に任官。2014年に退官して弁護士登録。元・刑事裁判官の経験を活かし、刑事事件にも力を入れている。
事務所名:弁護士法人 古川・片田総合法律事務所 大阪事務所
事務所URL:http://www.fk-lpc.com/