「これが義務教育だったら良かったのに」―。大人になって、そう痛感したものはけっこうある。
個人的には、たとえば車の運転。35歳でなんとか免許は取得したものの、運転がこんなにも難しいものだと知らずにいた。結果、運転恐怖症の完全ペーパードライバーの出来上がり。30万強の高い授業料を払って得たのは顔写真入りの身分証明書と「車に乗るのは怖いこと」という実感のみ。
現実的には有り得ないが、道路交通法と運転技術を中学生ぐらいで一斉授業として習い、学校が用意した広場で慣れるまで練習できていたなら、と思う。もしかしたら、下手なドライバーが減って今より事故も少なくなったかもしれない。(文:みゆくらけん)
日本の性教育は「浅すぎる」?
先日のガールズちゃんねるにも「これを義務教育にしたらいいかも。」というトピックが立っていた。投稿者は手話や点字を義務教育化すべきとの考えで、「少なくとも、ダンスなんかよりよほど役に立つのではないか」と主張している。確かに皆が手話ができたらいろんな場面で役に立ちそうだ。
他に義務教育化すべきものとして「税金、借金、ローンの仕組みなどお金についての授業」「冠婚葬祭のマナー」「動物の飼い方」「着物の着付け」「護身術」などが挙がっていたが、最も多かったのは「きちんとした性教育」だ。
現在の性教育の内容では「浅すぎる」という意見が多くのコメントに共通する。「保健体育でサラっとやるのでなく通年でみっちりやるべき」というコメントを筆頭に、
「中絶、産み捨て、性感染症、卵子の老化、性的虐待、レイプとか、そういう負の問題は習わなかった気がする。そこが一番大事なのにね。負の部分をちゃんと教えて、悲しい事件の防止に役立ててほしい」
「どうしたら妊娠するかは特別授業みたいなので習った気がするけど初期の流産が多いことは知らなかったから教えてほしい。妊娠したら産めると思ってた」
などという声が挙がっていた。確かに妊娠や出産については、いざ大人になってから「初めて知った」ということも多いのが現実。
たとえば「35歳を過ぎたら妊娠率は著しく低下する」ということを、具体的な数字(妊娠率など)で知ったのは不妊治療をスタートしてから、という人も多い。確率的にどの人にとってもけして他人事ではない初期流産や妊娠中の疾患についても社会的な認知度は低い。産婦人科を舞台にしたドラマ「コウノドリ」(TBS)あたりが頑張ってくれているが、本来知っておくべきことをドラマから学ぶというのもなんだかおかしな話だ。
フィンランドでは15歳になったらコンドーム配って避妊の仕方を指導
ちなみに日本の性教育の「浅さ」については、12月10日の「そこまで言って委員会NP」(読売テレビ)に出演した森田豊医師も次のように発言している。
「日本の性教育は具体的にコンドームを配ったりはしない。たとえばフィンランドなんかは15歳になったら皆にコンドームを配って避妊の仕方、性行為感染症について指導する。それで性病の罹患率も少なくなった」
外国の実践的な性教育に比べ、日本はだいぶ遅れている。しかし、日本の教育現場でコンドームを配布したら、「性行為することを勧めているのか!?」と問題になりそうでもあるが。
他にも、タコ足コンセントからの火災や海水浴の離岸流など、日常で起こりうる危険について義務教育で教えるべきだという声もあったが、これには強く共感する。育った環境により「自然に身に付くことかどうか」は違ってくるからだ。命にかかわることは特に重要だと思う。そして何より、「親が子に教える」という大切な任務も忘れてはならないだろう。