「おんな城主 直虎」が今週末に最終回を迎えるが、大河ドラマって本当に素晴らしいものだ。1つのテーマの時代劇を1年かけてしっかりと描き尽くすなんて、地上波ではなかなか出来ることではない。
稀に例外があるとは言え、大抵は主人公の幼少期からスタートし、少年期、青年期、壮年期、そして晩年に至るまでの日々と、人間関係の移り変わりをじっくり観賞することが出来るなんて、最高じゃないか。
筆者は特に「独眼竜政宗」と「毛利元就」、「北条時宗」に「真田丸」あたりがお気に入りで、いずれも戦国時代が舞台だ。来年の大河は西郷隆盛が主役の「西郷どん」であるが、比較的近世を舞台にした大河はなかなか個人的にハマった記憶がない。
頭が固いので、やっぱりついつい「大河っつったらお前、戦国時代の林立する数々の武家が織り成す血みどろの群像劇が一番面白いだろ!」と思い込んでいるのが、我ながら虚しい。(文:松本ミゾレ)
誰もが知っている大物がいいのか、「重要人物の部下の方が面白い」という説も
先日「はてな匿名ダイアリー」を見ていると「大河ドラマの主役」というタイトルの日記を見つけた。その内容がちょっと面白い。
大河の主人公がどんどんマイナーになっていると指摘しているこの投稿者。いっそのこと、大河の主人公は日本史の重要人物を十数人選んで、それらをローテーションで使い回せばいいというのだ。ローテの例としてこの9人が挙げられていた。
「源義経 平清盛 武田信玄 信長 秀吉 家康 徳川吉宗 竜馬 新撰組」
なるほど、たしかにこれなら直近で徳川家康が連続で主役になったりすることもないから、マンネリも短いスパンでは感じにくい。案外良いアイデアのように思えてしまった。この投稿について、色々な面白いコメントも寄せられているので、いくつか紹介してみたい。
「たとえば大河ドラマを半年で区切って 前半の主役が武田信玄で、後半の主役が上杉謙信で、両方とも配役を同じでやれば 両方の視点で見れて面白いと思うんだ」
「『軍師官兵衛』の頃から思ったけど、重要人物の部下の方が面白い。今の大河ドラマの井伊直政視点の徳川家内部めっちゃ面白い」
と、こんな具合に様々な声がある。前半と後半で敵同士が主役を交代するというのは、結構面白いものかもしれない。もう少し捻れば、やりようはあるかもしれないが、個人的には大河ドラマって全員主役みたいなところもあるので、難しいかなぁ。
主人公がマイナーでも面白い作品はあるよ!
ただ、この投稿者はマイナーな主役がお気に召してないようだけど、主役がマイナーな作品であっても、舞台となる時代によっては大御所の大大名と折衝して渡り合う描写も出てくる。
たとえば1978年放送の大河ドラマ「黄金の日日」では 安土桃山時代にルソンとの貿易で豪商に上り詰めた納屋助左衛門(演:松本幸四郎)が主役であった。筆者は放映当時はまだ生まれてすらなかったので後にDVDでこの作品を観たが、ぶっちゃけた話、最初は「納屋助左衛門? 商人かよ」と舐めていた。
ところが、この作品、マジで面白い作品だったのだ。登場人物はたしかにいち商人に過ぎないかもしれないが、血みどろの戦場の描写は少ない代わりに、当時の経済面での人々の暮らし向きなんかにも触れていて、そこが終始新鮮であった。
さらには、石田三成を善玉めいたキャラクターとして描写し、太閤秀吉が最後の最後まで悪人として描写されているのも白眉。昨年の大河「真田丸」でも、この納屋助左衛門を松本幸四郎本人が再度演じて登場し、ファンとしては嬉しかった。
とかくこのような傑作が生まれてきた過去がある時点で、大物ばかりをローテーションする、という案はちょっとなぁ。やっぱり大河ドラマって、制作発表で「おお、今度はあの武将の話か」と合点したり「え? 誰だ?」と困惑するのも楽しみ方の一つだと思う。