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男子高生が出会い系で「女子高生」になりすまし電子マネー要求…どんな罪に問われる?

2017年12月12日 11:02  弁護士ドットコム

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名古屋市内にある私立男子高校生たちが出会い系アプリで女子高校生になりすまし、男性らに電子マネーを要求していたことが11月下旬、報じられました。報道によると、男子高生たちはいずれも2年生で、少なくとも39人が関わったといいます。


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男子高生たちはスマートフォンの出会い系アプリで女子高生になりすまし、接触してきた男性らに「会いたかったら電子マネーを送って」と要求、amazonの電子マネーを受け取っていたとのことです。手口を知って興味本位でやったといい、巻き上げた電子マネーで、部活用のスパイクや練習着を買っていたと報じられています。


高校では警察に相談しているとのことですが、通常はどのような罪に問われる可能性があるのでしょうか。服部啓一郎弁護士に聞きました。


●「ただちに詐欺罪になるわけではない」 そのポイントは?

出会い系アプリで女子高生になりすまし、男性から電子マネーを要求する行為はどのような罪にあたるのでしょうか。


「詐欺罪(刑法246条)にあたる可能性があります。ただし、出会い系アプリで女子高生になりすましたり、電子マネーを要求する行為が、ただちに詐欺罪になるわけではありません。


被害男性が電子マネーを提供した動機において、『相手が女子高生であるかどうか』はそれほど重要ではなかったのであれば、詐欺罪が成立しない可能性も十分あります。被害男性との間の具体的なやり取りは分からないので、男子高生たちの行為に詐欺罪が成立するとは断定できません」


仮に詐欺にあたるとして、今回は電子マネーを要求したということですが、現金を要求した場合とは何か違うのでしょうか。


「Amazonの電子マネーは、ギフト券番号が印刷されたカードを受け取る場合と、ギフト券番号が表示されたメールや画像をダウンロードする場合があります。


前者の場合は、財産的価値のある物を受け取ったということで、現金を受け取ったのと同様に詐欺罪(刑法246条1項)が成立します。後者の場合は、物を受け取ったとはいえませんが、財産上の利益を得たといえるので詐欺利得罪(刑法246条2項)にあたります。どちらも法定刑は10年以下の懲役刑です。


なお、意見は分かれますが、実際に物やサービスを購入していなくても、ギフト券番号の記載されたカードや電子メール等を受け取った時点で、詐欺罪や詐欺利得罪の既遂になると考えられます(最高裁平成18年2月14日決定、東京地裁平成22年3月12日判決)」


●実際に刑罰を受ける可能性は?

今回、集団で行っていたと報じられていますが、単独で行うのと集団で行うのとでは、法的に違いはありますか。


「役割を決めて分担したり、マニュアルを共有するなどしていたのであれば、詐欺罪の共同正犯(刑法60条)となり、自身が直接連絡を取っていない被害男性との関係でも責任を問われる可能性はあります。


なお、39名はかなりの数ではあるものの、『団体』といえるような共通目的や指揮系統があったとは考えにくく、組織的詐欺罪(組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律3条1項13号)には該当しません」


今回は未成年による行為でしたが、罪に問われるとしたらどのような場合でしょうか?


「詐欺の事実が捜査機関によって認定されると、未成年のため、家庭裁判所に送致されます。家庭裁判所の審判では、保護観察や少年院送致などの処分を受ける可能性はありますが、これは刑罰ではなく、前科にもなりません。


かなり悪質と判断されれば、いわゆる『逆送』(少年法20条1項)となり、刑罰を受ける可能性も生じますが、それは例外的な場合といえるでしょう」


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
服部 啓一郎(はっとり・けいいちろう)弁護士
これまで刑事事件や債務整理事件を多数受任してきた。
弁護士登録後1年で独立。2013年4月に、パートナーとして深澤諭史弁護士を迎える。
現在は、刑事事件、IT関連事件、債権回収などを精力的に取り扱う。

事務所名:服部啓法律事務所
事務所URL:http://hklaw.jp/