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ALは“バンド”として次なるフェーズへ 『NOW PLAYING』新曲も披露された1年半ぶりワンマン

2017年12月12日 08:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 ALのおよそ1年半ぶりのワンマンライブとなった『AL LIVE 2017』、11月30日の東京・恵比寿リキッドルーム公演。来年1月17日には2ndアルバム『NOW PLAYING』の発売も控えるなか、その新曲や前アルバム『心の中の色紙』、未発表曲もあわせて全22曲が披露された。


 小山田壮平と長澤知之のプライベートユニットとしてスタートし、2011年に初のライブを開催。その後、藤原寛と後藤大樹を迎え、4人編成によるバンド“AL”として正式に活動したのが2015年だ。小山田壮平と長澤知之という、ソングライティングにおいて傑出した才能を持つふたりを擁したAL。小山田と長澤はそれぞれのデビュー頃から互いの存在を知り、作品を聞き合っていた仲のようだ。そしてそこに藤原、追って後藤が加わりバンドで制作してきた楽曲には、スタジオで気がむくまま音楽をやっているような遊び心と、懐かしさや温かさを感じるようなエバーグリーンな魅力が宿っている。


 定刻をすぎ、ステージにふらっと現れた4人。長澤が「よろしくー」と言ってラフにスタートしたこの日のライブは、最初からマジカルな瞬間の連続だった。


 ALの曲は、小山田、もしくは長澤のどちらかがリードボーカルをとる曲もあれば、ツインボーカルの曲もある。そのハーモニーの美学はユニークでありながら、相性はばっちり。小山田と長澤がいろんな声色と節回しを使い分けて<HAPPY BIRTHDAY>と繰り返す「HAPPY BIRTHDAY」。リードボーカルが入れ替わりながら進んでいく新曲「会いにいくよ」。交互に叫び合うようなサビの展開にワクワクさせられる「Mt. ABURA BLUES」。そして「メアリージェーン」では、小山田のリードボーカルに、長澤の高音のコーラスが寄り添う。藤原と後藤も加わった冒頭と最後のコーラスワークが、会場を独特のサイケデリアで包み込む。小山田の伸びやかな歌、あるいは長澤のファルセット、シャウト、ビブラートなどを自在に使い分けた歌の掛け合わせは、ALのオリジナリティを形作っている。


 そして、それはソングライティングにおいても同様である。綺麗なメロディを描く曲。性急なロックンロールナンバー。自由気ままに変則的に進行していく曲。小山田と長澤、ふたりが互いに一歩引いて、どちらかを引き立たせたり、あるいは反発し合うスリルが曲に深い味わいを出させることも。そのバランスが、こうでしか成り立たない、というほどに絶妙なのだ。


 その二人の異なる個性が炸裂した音楽に、躍動感を与えるバンドアンサンブルにも注目したい。特に、3曲目の披露された新アルバムの表題曲「NOW PLAYING」。藤原のリズミカルなベースから始まり、小山田の歌が響き、そこに長澤のギターフレーズが重なる。そして後藤のドラムがスタートすると、曲が途端に疾走し始める。ひとりひとりのプレイヤーの音が重なるたびに高揚感が増し、ステージ上のテンションの高さからも今のバンドの好調ぶりを感じ取ることができた。 


 また、中盤にミディアムナンバーをじっくり聞かせるゾーンも素晴らしかった。小山田と長澤が揃ってアコースティックギターに持ち替えた「地上の天国なソングライターの歌」。続く「あのウミネコ」でも、アルペジオから始まり、4人による厚みのあるハーモニーが奏でられる。さらに、幼き日の原風景をたどるような歌詞とリードボーカルをとる小山田の歌のイノセントな響きに心揺さぶられるのが、新曲「輝く飛行船」。丁寧にコーラスをつけギターを弾く長澤、歌をしっかり聞かせるために土台を固める藤原&後藤のリズム隊には、ALというバンドの熟練のコンビネーションが感じられた。


 ALのステージからは“バンドで奏でる音楽の楽しさ”を追求していることが感じられる。そしてステージの上で鳴っている一つ一つの音、4人のプレイヤーの一挙手一投足から目が離せないような、不思議な吸引力がある。本編ラストナンバー「花束」では、オーガニックな手触りの冒頭から次第に熱を帯びていき、メンバー4人による<花束をあげるよ みんな愛しているよ>のリフレインが、深い余韻を残した。そしてアンコールで、アコギ2本、ベース、カホンの編成で「北極大陸」、「さよならジージョ」を披露し、この日のライブは終了した。


 冒頭に書いた通り、ALは1月17日にアルバム『NOW PLAYING』を発売し、その後3月に『2nd Tour 2018』をスタートさせる。今回は久しぶりのワンマンではあったが、その空白期はまったく感じられないほどにバンドのグルーヴは熟成されており、“バンド・AL”として次なるフェーズに向かっていることが感じられた。『NOW PLAYING』には、それがどのように反映されているのだろうか。リリースを楽しみに待ちたい。(取材・文=若田悠希)