2017年12月10日 09:22 弁護士ドットコム
かつて人気を博した歌手「愛内里菜」から改名した垣内りかさん(37)が、12月4日放送のテレビ番組「もしかしてズレてる?」に出演。未婚のシングルマザーだったことを打ち明けた。過去の恋人と別れた後に妊娠が発覚したという。ただ、認知を求めず、連絡もとっていないという。
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垣内さんはブログで、「父親がいないという境遇を背負わせながら、ひとつの人生を羽ばたかせるため18年の歳月をかけて一人前に育てあげるということは容易いことではないと思っています」とつづったうえで、「母として、父としての分まで頑張っていこうと思います」と決意を表明している。
垣内さんは認知を求めていないとのことだが、未婚の女性が出産して、父親が認知しない場合、どのような影響があるのだろうか。作花知志弁護士に聞いた。
「父親が子どもを『認知』しない限り、父子が法律上の親子になれません」
作花弁護士はこのように語る。
「未婚のまま子どもが生まれた場合、母親が出生届を出すことで、母親を筆頭者とする新しい戸籍がつくられます。子供は母親の戸籍に入りますが、父親の欄は空欄のままです。この状態では、子供と父親との法律上の親子関係は存在していません。
父親と子どもが、法的に親子になるためには、父親が、子供が自分の子供であることを認める『認知届』を提出する必要があります。認知は、子どもが胎児の間でも行えます(ただし、認知について母親の承諾を得ることが必要)。さらに、子供から父親に対して認知の訴えを起こすこともできます」
認知しない場合、どんな影響があるのか。
「認知せずに、父親と子どもが、法的な親子関係にないということになると、父親が養育費を支払う義務はないということになります。養育費を求めるのであれば、父親の認知を求めることになります」
他に影響はないのか。
「相続の問題があります。相続人になるためには、父親・母親と子供との間に、法律上の親子関係が存在していることが必要です。
まず母親は、最高裁の判例により、子供を認知したかどうかは関係なく、分娩によって法律上の親子関係が生まれるとされています。(最高裁昭和37年4月27日判決)。したがって、母親が亡くなった場合、子供は当然に母親の相続人になることができます。
それに対して父親の場合は、父親と子供との間に法律上の親子関係が生じるためには、先述のように『認知』の手続をしなければなりません。父親が子どもを認知していなければ、父親の死後、子どもは相続人にはなれません。死後認知という方法はありますが、父親が死亡した後3年が経過すると認知の訴えを起こすことができなくなりますので、注意が必要です」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
作花 知志(さっか・ともし)弁護士
岡山弁護士会、日弁連国際人権問題委員会、国際人権法学会、日本航空宇宙学会などに所属。
事務所名:作花法律事務所
事務所URL:http://sakka-law-office.jp/