2017年12月10日 08:42 弁護士ドットコム
「バブル期超え」という言葉を聞く機会が増えた。例えば、「バブル期超えの求人倍率」「バブル期以来の株価の連続上昇」といった言葉だ。随分、景気のいい話のように思えてくるが、どうもその実感のない人もいるのではないだろうか。
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その実感の中身については、諸説ありそう(例えば、実質賃金の変化や格差拡大など)だが、現実に差し迫った問題から、少子高齢化などに伴う将来不安もあるだろう。
30年近く前のバブル期と今とで、どのような変化が起きているのだろうか。例えば、同じ年収1000万円プレイヤーを想定した場合、どのような違いがあるのだろうか。吉川勝税理士に聞いた。
年収1000万円プレーヤーでは、バブル期と現在では自由に使える可処分所得が減少していることから「バブル期超え」でもイマイチ実感を持てないのではないでしょうか。
総務省が5年おきに公表している全国消費実態調査の結果を見てみると、バブル期(平成元年)と、少し前ですが現在(平成26年)では、年収1000万プレーヤーの家計の消費支出額は、勤労者世帯ひとりあたり1か月で100,987円から121,992円へと、現在の方が20%以上増加しています(総務省統計局「全国消費実態調査結果」より推計)。もちろん、消費税の税率上昇等により消費者物価が上昇している要因があるとはいえ、実感がなくとも、平均ベースで見ると、バブル期より現代のほうがより多くのお金を使っていることが分かります。
そのうち顕著なものが交通・通信で、これは携帯電話の普及を考えれば当然のものですが、注目すべきは教育・住居・光熱・水道といった生活に必要不可欠なコストが、大幅に増加していることと、こづかい・衣服及び履物・贈与金といったものが減少していることです。
税金的には、消費税の導入から税率上昇による負担感が増したことや、相続税の増税による将来への不安があります。加えて社会保障という観点では介護保険制度の導入、毎年のように行われる年金保険料の増額改定、平均寿命が上昇しているにもかかわらず将来の年金受給額が減少しているなど社会的な不安もあるものと思われます。
企業の利益の高い伸びに比べると賃上げには勢いがありません。にもかかわらず税金や社会保険料などの負担が増え、可処分所得が減少しています。冗費(無駄な費用)を節約しようという社会的風潮もあります。これらが景気回復感を持てない要因となっているのではないでしょうか。
【取材協力税理士】
吉川 勝(よしかわ・まさる)税理士
相続コンサルタント・終活カウンセラー。相続を争族としないようにすることを使命として資産税の税務相談を中心に奮闘中。趣味はゆったりとした無理のないジョギング、毎日一定時間に行っている。好きな言葉は「風林火山」。
事務所名 :吉川勝税理士事務所
事務所URL:http://yoshikawa-cpta.com
(弁護士ドットコムニュース)