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綾瀬はるかvs西島秀俊、死闘の末に選んだ未来 『奥様は、取り扱い注意』最終話で明かされた本音

2017年12月07日 14:02  リアルサウンド

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 「何というスリル。やっぱりこの人を愛してる」。12月6日に放送された『奥様は、取り扱い注意』(日本テレビ系)のエピソード10「マイ・スウィート・ホーム」。物語は、伊佐山菜美(綾瀬はるか)が、小雪(西尾まり)から「あんたの旦那は、公安の人間」と、愛する夫・勇輝(西島秀俊)の真実を知らされる模様から始まる。その夜、「あなたのこと、信じてたのに」(菜美)、「だましてたのは、君も同じだろ」(勇輝)と、史上最大の“夫婦喧嘩”が勃発した。


参考:綾瀬はるかと西島秀俊は“理想の夫婦”になれるのか? 『奥様は、取り扱い注意』第9話レビュー


 エピソード10では、それぞれの“本音”が描かれている。勇輝は、菜美が生まれ変わる前の「島田優子」の時から彼女を監視していたことを告白。そして、彼女が「片山菜美」として日本に帰国してきてからは、不可解な行動(受付嬢として笑顔を振りまく様)が目立ち、その動機を探れという命令が下ったため、菜美に近づいたという。だが、勇輝は「君と向かい合った瞬間、俺は君から何かを感じたんだ」と、彼女を本気で愛してしまった苦悩を打ち明ける。


 いわば、勇輝も菜美に“一目惚れ”したのだ。彼が一番欲しいものは、本当に「本物の夫婦」なのだろうか。彼は一体、彼女から何を“与えてもらえる”と直感したのだろう。彼もまた「人生がスリルであふれていた」人物だったはず。余談だが、小雪(西尾まり)の言葉「(勇輝の)戸籍や経歴は完璧に偽装されてた」「公安の人間」が気になって仕方ない。つまり、伊佐山勇輝の本当の名前は明かされていないのである。そして、勇輝が最後のシーンで手に持っていたピストルが、『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』(カンテレ・フジテレビ系)の田丸(西島秀俊)と同じもの。この遊び心溢れる演出に、金城一紀ファンが沸かないはずがない。どうしても勇輝=田丸なのでは?と妄想を膨らませてしまう。


 伊佐山夫婦が本音でぶつかり合う一方で、京子(本田翼)は、夫・渉(中尾明慶)がもう帰ってこないのではないかという不安に押しつぶされそうになっていた。勇気を振り絞って渉に電話をかけ、「もうそろそろ、帰って来てもいいよ」と伝える京子。だが、渉は「僕にまだ覚悟が足りないから」「帰れない」という。「もう、君を悲しませない男になりたい」から、「君を一生愛し続ける覚悟。君を一生養い続ける覚悟。君を一生守り続ける覚悟」が決まったら、「必ず帰る」と本音を漏らす。エピソード10では、この“覚悟”が物語の肝になっていたように思う。


 京子は義母・良枝(銀粉蝶)から、「人から強く愛されたいって思ったら、それが勘違いでもいいから、自分は愛されるに値する人間だって強く信じなさい」と活を入れられ、夫から愛される覚悟を決める。優里(広末涼子)もまた、自分の犯した過ちに対しての覚悟を決め、横溝(玉山鉄二)に「あんたたちの言いなりにはならない」と力強く宣言。そして、「全てを夫に打ち明ける。それで、今の生活を失ったとしても、自業自得だから仕方がない」と腹を括った。


 そもそも、伊佐山夫婦が死闘を繰り広げることになったキッカケも、菜美の「あなたのこと好きだし、愛してるから、本音でぶつかり合いたかった。これまで、お互いをだまし合って来た分、ありったけの力でケンカをして、仲直りをしたかった」というウソを知り、真実を晒す覚悟ゆえの結果である。また、勇輝は「絶対に、君のことを幸せにする」という覚悟を示す代わりに、菜美には「首輪をはめながら生きて行く」ことへの覚悟を求めた。


 だが、勇輝が彼女に求めたことは叶わず、菜美は自分自身の正義を貫く。そして、闘いの最中に、自分が本当に欲しかったものに気づくのだ。それは、穏やかな生活でもなく、温かな家庭でもない。彼女が一番に追い求めてるのは、スリルであった。菜美は、平穏な生活から生まれる幸せを捨て、刺激的な未来を選択する。


 これまでの10回を通して、彼女は多くの主婦を救ってきた。本当に菜美は、友達のため、勇輝のためにカッコいい自分でいたかったのだろうか。戦闘中に彼女が笑顔で叫んだ「気持ちいい~!」という言葉と、彼女の最後のモノローグ「何というスリル。やっぱりこの人を愛してる」からは、自分のために“スリル”を追い求めただけなのではないかと疑ってしまった。だが、多分どっちも“本音”なのだろう。


 刺激的かつ衝撃的な結末に混乱した視聴者も少なくないはず。なぜ、勇輝は菜美に銃口を向けたのか。菜美は勇輝に撃たれてしまったのだろうか。そして、横溝という人物の本当の目的や菜美との関係性は一体何だったのか。謎は深まるばかり。最後のシーンでは視聴者もまた、心の中で「何というスリル。やっぱりこのドラマを愛してる」と叫んだに違いない。(文=戸塚安友奈)