FIA国際自動車連盟は、12月6日に開催されたワールド・モータースポーツ・カウンシルにおいて、2018~2019年の年を跨ぐまたぐ形で開催されるWEC世界耐久選手権“スーパーシーズン”の新レギュレーションを発表した。このなかでLMP1クラスのマニュファクチャラーズタイトルの廃止、ポイントシステム、ピット作業レギュレーションの変更がアナウンスされている。
2016年にアウディ、2017年末にはポルシェと立て続けに最高峰のLMP1クラスに参戦するふたつのマニュファクチャラーを失ったことでシリーズの過渡期を迎えたWEC。
同シリーズをプロモートするFIA、ACOフランス西部自動車クラブは、カテゴリーそしてWECというシリーズそのものを存続させるため、LMP1クラスのワークスチームとプライベーターが対等に競えるテクニカルレギュレーションの設定、ならびにシリーズカレンダーの大幅変更という大鉈を振るった改革が行われた。
その結果、来シーズンはSMPレーシング、マノーTRSレーシング、バイコレス・レーシングチームなどのプライベーターチームが新たにLMP1チームとして参戦することを表明。ワークスとして参戦するトヨタを含めればLMP1クラスの参戦台数は、2017年シーズンの4~5台を上回ることとなる。
なお、唯一のワークスチームであるトヨタはスーパーシーズンへの参戦継続について正式発表こそしていないが、豊田章男社長、の村田久武トヨタ・モータースポーツGmbH(TMG)代表の両名が参戦継続を示唆する旨の発言をしていることから、プライベーターを迎え撃つ立場としてシリーズへの参戦を継続するものと考えられている。
そんななか、FIAは6日に開催されたワールド・モータースポーツ・カウンシルのなかでLMP1クラスのタイトルとして設けていた世界選手権枠の“FIA耐久マニュファクチャラーズ・チャンピオンシップ”の廃止を決定。2018年から行われるスーパーシーズンではこれに代わって、“チームチャンピオン”タイトルが設定された。
また、FIAはル・マン24時間を1シーズンに2回開催する変則的な日程となる来季に向けて、ポイントシステムを変更。
6時間で争われるシリーズ戦は今シーズンと同様のポイントシステムが採用されるが、これまで獲得ポイントが2倍、優勝で50ポイントが獲得可能となっていたル・マンは現行システムから増加率が50パーセント下げられ、優勝時の獲得ポイントが37ポイントに減少。また、1500マイルで争われる第6戦セブリングでは、通常ポイントの1.25倍、優勝者に32ポイントが加算されることとなる。
このほか、レース中のピット作業に関するスポーティングレギュレーションも変更されており、これまで安全面を理由にタイヤ交換と同時に行うことが禁止されていた給油を同時に行うことが可能となった。
この変更によって従来1分20~30秒ほどかかっていたタイヤ交換を伴うピット作業は、50秒~60秒程度に短縮されると同時に、各チームの“ピット戦争”がより見応えのあるものに変化することは間違いないだろう。
ACOのピエール・フィヨン会長は「2018/19年のスーパーシーズンの概念とレース距離に応じてポイントを割り当てる新しいシステム、そしてLMP1クラスの統合によって新たに得られたエントリーは、チャンピオンシップにおけるチーム間の激しい競争を保証するものだ。我々は新しいシリーズの構造に将来性があると確信している」と語った。
また、WECのジェラルド・ヌブーCEOは「スーパーシーズンの新たな規則については多くのチームから良いフィードバックを得ており、この規則のもとでLMP1では高いレベルの競争が繰り広げられることを保証する」とコメント。
「また、LM-GTEプロクラスには(BMWという)5つ目のコンストラクターが登場するほか、LMP2とLM-GTEアマクラスはジェントルマンドライバーの関心を高めている。これはモータースポーツファン、特にスポーツカーファンにとって喜ばしいことだ」