2017年12月07日 09:32 弁護士ドットコム
チャーチャーチャッチャチャッチャー。毎月月末の金曜日に放送されるテレビ朝日の討論番組「朝まで生テレビ!」のスタイルを取り入れた「朝まで生会議!」がとある企業で、毎週金曜日の深夜に開かれていた。
【関連記事:渋谷駅前で「フリーおっぱい」服の上から「胸を揉ませる行為」は罪に問われる?】
テーマは「どうなるニッポンの政治」みたいなノリで、「どうなるわが社のサービス」というどこか漠然としたテーマ。金曜日の夕方から、じっくりと長時間かけて、部署のメンバー一同が仕事についてざっくばらんに語り合うものだったが、完全な強制参加だったため、この部署に在籍していた雅彦さんは大きな不満を抱いていた。
建設的な議論になるかと思いきや、平日でみんな疲れていることもあって、深夜零時ごろからグダグダになって、結局は朝に「各々頑張ろう。まずは今の予算達成」という身もふたもない結論で締めくくられていた。田原総一朗さんばりの仕切り屋もいないため、あるメンバーが「こんな会議やっても意味がないでしょ」とキレてしまい、この会議は何の成果もあげないままに終了してしまった。
一応スタートするのは平日ではあるものの、このような会議に深夜から明け方まで強制的に参加させることに法的な問題はないのだろうか。裁量労働制ということで、残業代の支払いはなかったそうだが、問題はないのか。山田智明弁護士に聞いた。
「まず前提として、個々の労働者に時間外労働をさせることを強制できるかという問題という問題がありますが、この点については、就業規則等があり、業務上の必要性があれば許容されると解されています」
では、朝まで会議をすることも許容されるのか。
「この『業務上の必要性』というのは、実際上は比較的緩やかに理解されてはいますが、今回のように、業務上の必要性に明らかに疑問がある場合には、業務命令によって会議への参加を強制することはできません。
仮に、使用者(会社)側が、業務命令が無効となる場合に会議への参加を強制した場合は、不法行為として損害賠償責任を負う可能性もあります」
では、残業代が出ないことについては、どう考えればいいのか。
「裁量労働制は、実際の労働時間に関係なく、協定で定める時間数労働をしたものとみなす制度ですが、裁量労働制が適用されるためには、労働基準法上の厳格かつ様々な要件を満たす必要があります。
今回のケースでは、それらの要件を満たしているかは不明ですが、裁量労働制が適用になるには、そもそも仕事をするうえで、時間配分等について、裁量があることが前提となります。
しかし、今回は会議への参加が強制されていることなどで、裁量があったかがどうかが疑問視される可能性があります。
業務の裁量性が存在しないということになれば、裁量労働制が適用されず、その結果として、使用者側は労働者に対し、時間外・深夜労働の割増賃金を支払う必要があります」
(編集部補足:仮に裁量労働制であっても深夜労働の割増賃金は発生します)
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
山田 智明(やまだ・ともあき)弁護士
2008年弁護士登録。2013年、柏第一法律事務所を開設。一般民事を中心に業務をおこなっており、労働問題については労働者側の代理人として活動している。
事務所名:柏第一法律事務所
事務所URL:http://www.kashiwadaiichi-lawoffice.com/