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本田翼が明かす、『鋼の錬金術師』への不安と挑戦 「ファンだからこそできるウィンリィを目指した」

2017年12月06日 18:32  リアルサウンド

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 全世界シリーズ累計発行部数7,000万部を超える荒川弘のベストセラーコミックを、『ピンポン』の曽利文彦監督が実写化した映画『鋼の錬金術師』が12月1日より公開されている。日本映画史上最大規模のVFXが駆使された本作では、亡くなった母を蘇らせようと禁忌の“人体錬成”に挑むも失敗し、左脚と右腕を失った兄エドと、身体をすべて失い鎧に魂が定着された弟アルのエルリック兄弟が、失った身体を取り戻すため、伝説の“賢者の石”を求めて旅に出る模様が描かれる。


参考:本田翼は棒ではない、真っ白なキャンバスなのだ 『恋仲』をめぐる通説批判


 今回リアルサウンド映画部では、ウィンリィ役を演じた本田翼にインタビューを行った。もともと大の原作ファンだったという彼女は、ウィンリィを演じることをどのように受け止め、役作りを行っていったのか。イタリアでの撮影やアル役で主演を務めた山田涼介とのエピソードなどとともに、じっくりと語ってもらった。


ーー本田さんはもともと原作の大ファンだったそうですね。ひとりのファンとして、映画の脚本にはどのような印象を受けましたか?


本田翼(以下、本田):自分も含めた『ハガレン』ファンが観たいシーンがたくさん詰まっている印象を受けました。ストーリー展開や名シーンの再現など、原作にも忠実だと感じました。原作には衝撃的なシーンもたくさんあったので、「これをどう実写で映像化するんだろう?」という気持ちが強かったです。


ーー大好きな作品に出演できるということで、本作にかける思いも大きかったのでは?


本田:でも、『ハガレン』がどれだけ人気のある作品かもわかっていたので、嬉しいとか楽しみという気持ちよりは、不安やプレッシャーのほうが大きかったです。小学生の頃からコミックを読んで、アニメも観て、ゲームまでやっていた作品だったので、最初は私がウィンリィ役をやるというのが信じられませんでした。私がウィンリィを演じるということに対して、皆さんがどう思うのかもすごく気がかりで……。


ーー原作ものの映画化には批判がつきものでもありますからね。


本田:ウィンリィは多くの人に知られているキャラクターなので、「どうしよう……」とものすごく悩みました。でもお芝居の仕事を始める前から『ハガレン』ファンだったので、純粋な気持ちで『ハガレン』に触れてきたからこそ持っていたウィンリィのイメージがありました。明るくて、さばさばしているけれど、誰よりもエドとアルのことをわかってる。そのイメージはファンの皆さんと同じだと思ったので、そのウィンリィ像があれば納得してもらえるんじゃないかと、徐々に気持ちを切り変えていって、自分だからこそできるウィンリィ、ファンだからこそできるウィンリィを目指しました。


ーー原作では金髪のウィンリィですが、映画では茶髪と、ビジュアル的には変化がありました。


本田:もちろん原作どおり金髪でもよかったのですが、エドと並んだときに兄妹っぽく見えてしまいそうだなと思ったんです。ホークアイ中尉も金髪ですし。あと何よりも、キャラクターっぽくなり過ぎてしまうのを避けたい気持ちがありました。私が金髪にしてしまうと、リアルな人間に見えにくくなってしまうのではないかと感じたんです。ポニーテールという“髪型”はすごく意識しましたが、“髪色”までは意外と寄せないほうがいいのではないかということは、監督とも話し合いました。監督も「そのほうがいいかもしれない」と言ってくださいましたし、原作の荒川先生も「大丈夫です」と言ってくださったみたいです。


ーーそもそもヨーロッパが舞台の原作をオール日本人キャストで映画化しているわけですもんね。


本田:その話も山田(涼介)くんとしたんですよ。日本人の荒川さんが描いた漫画なので、見た目がどんなにヨーロッパっぽくても、心は日本人。だからヨーロッパであることはそこまで意識する必要はないんじゃないかなと。


ーー山田さんとは現場でも役について話し合ったりしたんですか?


本田:いや、基本的に『ハガレン』の話をしていましたね(笑)。山田くんも『ハガレン』の大ファンなので、「もしも映画の第2部があったとしたら、どの辺りをやるんだろう?」みたいな夢の話をしていました。ウィンリィとエドは幼馴染の設定ですが、そのテンポ感はふたりで合わせなくても、自然と生まれていきました。イタリアで撮影できたことが大きかったかもしれません。


ーーイタリアでの撮影はどうでしたか?


本田:日本で撮影するのとは全然違いました。クランクインがイタリアだったんですけど、まさに『ハガレン』の世界観で、すんなりとその世界に入り込めました。イタリアでの撮影が終わったあとに日本で撮影をしたのですが、実際にその舞台となる地を見たあとだったからこそ、日本での撮影にもいい状態で臨めた気がします。特に印象に残っているのが、汽車のシーン。外の景色もはめ込みではなくて、実際にその風景を撮りながらエドとウィンリィで掛け合いをしているんです。あのシーンは日本では絶対に撮れないシーンになったと思いますし、本当に昔からその場所で過ごしてきたような気持ちにもなれたので、そういう意味でもイタリアで撮影できたことは大きかったです。


ーー7月にはパリで開催された「Japan Expo 2017」にも参加されていましたね。


本田:フッテージ映像を現地の方々に観ていただいたときの歓声が本当にスゴかったんです。私自身、映画の海外ツアーに参加するのは初めてで、世界の『ハガレン』ファンの方々の目にこの作品がどう映るのかは気になっていた部分でもあったのですが、作品の舞台であるヨーロッパの方々からこんなにも大きな歓声がもらえるんだと、自分たちの自信にもつながりました。今後、世界190カ国以上で公開されるというのには、まだまだ実感が沸いていないのが正直なところですが、パリでの反応が想像していたよりもすごくよかったので、世界でも受け入れてもらえそうな気がしています。


ーー今回の作品は日本映画史上最大規模のVFXが駆使されているのも見どころのひとつです。フルCGのアルとのシーンは難しさもあったのでは?


本田:そうですね。実際の撮影現場にはアルがいないわけなので、「目線はこの辺りで」と指示されながら演技をしていったのですが、間違えて全然違うところを見てしまうなど、苦労も多くて大変でした。実際にそこにはいないアルに対して感情を込めたり、熱い気持ちをぶつけたりするのはすごく難しかったです。想像力をすごく鍛えられました。だから完成した作品を観たときに、「アルがいるー!」と、山田くんと感動を分かち合いました。「アルはこんなに大きかったんだね」とか「横幅はこれぐらいだったんだ」とか(笑)。


ーー本田さんが今回のようなアクション映画に出演するのはわりと珍しいですよね?


本田:これまでは少女漫画原作の作品に出演することが多かったので、確かにそうかもしれません。これだけCGを使う作品に出るのも初めての経験でした。アクションシーンは今回の作品の大きな見どころのひとつでもありますが、私自身はあまりアクションシーンがあったわけではないので、今回の経験をとおして、アクション映画への興味がすごく湧いたんです。今回の経験を生かして、今後またこのような作品に挑みたいという気持ちが強くなりました。原作を読んだことがない方にもぜひ観ていただきたいですね。


ーーでは最後に、原作ファンの目線から本作のアピールポイントをお願いします。


本田:原作を知らない方にとっては、まず“錬金術”自体があまり馴染みのあるものではないので、少し身構えてしまう部分があるかもしれないのですが、難しいことは考えずに、軽い気持ちで観ていただきたいなと。原作ファンの方々にも、「一体どうなっているんだろう?」「このキャストでどういう作品に仕上がっているんだろう?」と興味を持っていただけるだけで嬉しいので、そういう気持ちで気軽に映画館に足を運んで、作品を楽しんでいただきたいです。(取材・文=宮川翔)