トップへ

苦境の中でも成長を続けた松下信治「2018年はスーパーフォーミュラで自分の実力の証明したい」

2017年12月06日 17:22  AUTOSPORT web

AUTOSPORT web

2017年F2ランキングで6位に終わった松下信治
松下信治のヨーロッパ挑戦3年目のシーズンが終わった。レーシングドライバーとしては、間違いなく今までで最も速く強い自分になれた。アブダビでF2最終戦を終えた後、松下はそう語った。しかしランキングは6位。スーパーライセンス獲得のために目指していた3位には及ばなかった。

 何が苦戦の原因だったのか? 
 最大の理由は、ARTがいまやトップチームとは言えないレベルに低迷してしまったこと。有力エンジニアが抜け、かつてストフェル・バンドーンが圧勝したときのような速さがなかった。

「一番大事なのはレースペースだと痛感した1年でした。例え予選で中団になってしまったとしても、プレマにしてもロシアンタイムにしても、レースペースが速いチームって絶対に上がってくるんですよね。安定して結果を残していくためにはやっぱりレースペースが必要なんです。そこが僕らは良い時もあるけどそういう時が少なかったし、チームとしてその点で負けていたのは確かでした。ドライバーがそこを導き出せなかったという面もあるんでしょうけど……」

 レース週末は毎晩のように遅くまでエンジニアとデータを分析し、遅い理由を見付け出し、次のセッションに向けてセッティングを変え、日曜のレース2になってようやく方向性が見えてくるといったようなことの繰り返しだった。

「ハンガリーあたりからは『なんとなく分かったかも』という感触はありました。ハンガリーのレース2は今季のベストレース。でも前半戦からそういうパフォーマンスが発揮できなかったのが一番大きかった。バクーみたいに自分のミスによる取りこぼしもあったし。遅くて結果が出なかったのではなくて、速かったのに自分のミスで結果を失ったという意味では、バクーがワーストレースでした」


 セットアップにしてもタイヤマネージメントにしても、苦境の中でもがいてきたからこそドライバーとして大きく成長できたと松下は言う。

「自分の置かれた環境の中でやれるだけのことはやったしパフォーマンスも見せたつもりだから、そういう意味では悔いはないし、もうちょっと頑張っておけば良かったっていうようなことはありません。今年はメンタルトレーニングもたくさんやって、追い込まれた時や落ち込んだ時にどうするか、いかにアグレッシブにいくかというようなメンタル面も強くなったと思います。だけど、負けたら悔しくないわけないし、後悔がないわけないじゃないですか」

 プレマやロシアンタイム、ダムスが圧倒的なレースペースの強さを誇る中で、チーム力が低下したARTでランキング3位を掴み獲るというのはかなり高いハードルだった。しかし、レースは結果が全て。

 松下はヨーロッパでの挑戦を終え、2018年はスーパーフォーミュラに参戦する予定だ。
「本当はメチャクチャ悔しいです。だけど僕はこれまで本当に恵まれていて、(FIA F2で)良いドライバーと一緒に走って死にものぐるいで戦ってきて、自分もかなり成長できたと思います。それを来年スーパーフォーミュラで見せられればと思っています。それが楽しみでもあります。今は悔しさと楽しみだという気持ちが半分半分です」

 また日本には戻るが、F1への思いは諦めないと松下は断言する。
「この話を聞かされたときは、正直結構ショックでした。テストでF1に乗って『お、乗れるんじゃん』って身近に感じたものだったし、自分が目指していた世界ですからね。F1というのは次元が違うしそれは自分がここに来て肌で感じて分かったことなんで、やっぱりこの世界でやりたいと思うし、早くここに戻って来たいと思います」

 2018年のFIA F2には松下に代わって福住仁嶺と牧野任祐が参戦するという話もあり、彼らが最も大きなチャンスを持っていることは確かだ。しかし松下にもまだチャンスはある。

「今僕のページがひとつめくれて来年は僕の後輩たちがそこ(最もチャンスがある場所)に行くという話ですけど、僕もまだそこから降りたとは思っていないし、来年はスーパーフォーミュラでそれを示して『おっ、やっぱり!』と言ってもらえるようなレースをしたい。自分のことは信じているし、(F1に行けるのは)僕以外にいないという自信も持って戦います。年齢的なことを含めても僕にはチャンスはあと数年しかないと思うけど、それまでは最後まで諦めることなく頑張ります」

 まずは12月6日・7日に鈴鹿サーキットで行なわれるルーキーテストに参加し、ダンディライアンのステアリングを握る。

 ヨーロッパで孤軍奮闘し戦ってきた3年間の成長を、スーパーフォーミュラで証明してやる。松下はF1への夢を諦めることなく、自分に与えられたスーパーフォーミュラという場で実力をアピールすべく燃えている。

「日本に戻ってきて『あぁ、終わりだな』って思う人もいるだろうけど、そうじゃないぞっていうのを見せたいと思います。スーパーフォーミュラで速さを見せられれば自分の実力の証明になるし、F2というレベルの高いカテゴリーで勉強してきたことを発揮できれば勝てると思っています」