2017年12月06日 16:22 弁護士ドットコム
スーパーコンピューター(スパコン)の開発を手がけるベンチャー企業「PEZY Computing」(ペジーコンピューティング)の幹部が、国立研究開発法人「新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)」から助成金をだまし取ったとして、同社の社長ら2人が12月5日、詐欺の疑いで東京地検特捜部に逮捕された。
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報道によると、2人は2014年、NEDOから助成金をだまし取ろうと共謀して、助成事業に要した費用が約7億7300万円だったと水増しした嘘の書類を提出し、助成金約4億3000万円の助成金を振り込ませた疑いが持たれている。
世界のスーパーコンピューターランキング「TOP500」が公表した最新のランキングでは、同社などが開発した「暁光」が4位に入った。同社長も異端児として業界で知られており、12月11日放送のNHK番組『プロフェッショナル 仕事の流儀』に登場する予定だったという。
今回の逮捕をめぐっては、東京地検特捜部が動いたということも注目を集めている。どうして、東京地検特捜部は動いたのだろうか。元検事の落合洋司弁護士に聞いた。
「東京地検特捜部が強制捜査に乗り出す場合、その端緒(手がかり)としては、告訴・告発や、投書などの情報提供、風評(噂)、内偵によるものなど、さまざまなものがあります。
捜査にとりかかった場合も、強制捜査にまで至るのはごく一部で、ほとんどは強制捜査前に捜査が打ち切られたり、不起訴処分になったりします。
その意味で、今回、東京地検特捜部が関係者の逮捕にまで至ったのは、証拠によって、犯罪が十分立証でき、起訴して有罪判決が得られる見込みが相当高いという判断に基づいていると推測されます」
東京地検特捜部による取り調べはどうなっているのか。
「警察が逮捕した場合、その後の勾留も含めて、通常は警察の留置場で身柄が拘束されます。一方、東京地検特捜部に逮捕された容疑者は、東京拘置所で身柄を拘束されて、取り調べも基本的にそこでおこなわれます」
今回の事件について注目すべきポイントはどこだろうか。
「東京地検特捜部が、このような詐欺事件で強制捜査に乗り出す場合、その件(本件)だけでなく、余罪(別件)に対して重大な関心を抱いていることが少なくありません。つまり、捜査対象がほかにもある可能性があるということです。
最近では、なかなか立件が難しくなっていますが、東京地検特捜部のメインターゲットは中央政界、高級官僚です。そのような人たちの不正、腐敗を正すことを重要視してきた伝統があります。
助成金の詐欺が問題となっていますが、報道によると、詐欺の余罪になりうる事実も含めると、相当多額の資金が動いているようです。その資金の流れが捜査される中で、贈収賄などの余罪が浮かび上がってくるかどうか、今後注目されるところではないかと思います」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
落合 洋司(おちあい・ようじ)弁護士
1989年、検事に任官、東京地検公安部等に勤務し2000年退官・弁護士登録。IT企業勤務を経て現在に至る。
事務所名:泉岳寺前法律事務所
事務所URL:http://d.hatena.ne.jp/yjochi/