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綾瀬はるかと西島秀俊がついに死闘!? 『奥様は、取り扱い注意』最終回に向けて

2017年12月06日 06:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 秋の連続ドラマもそろそろフィナーレ。『ドクターX ~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日)や『コウノドリ』(TBS)といった医療ものシリーズがヒットし、池井戸潤の原作を『半沢直樹』チームがまたもやドラマ化した『陸王』(TBS)が好調な中、ドラマオリジナルの新作として健闘した『奥様は、取り扱い注意』がいち早く12月6日に最終回を迎える。


参考:『奥様は、取り扱い注意』で新しい作風を確立 脚本家・金城一紀の作家性を読み解く


 ヒロインの菜美(綾瀬はるか)は国際的なスパイ活動を行っていた特殊工作員。そんな裏の世界から足を洗い、望んでいた幸せな結婚をしたかと思いきや、新居を構えた閑静な住宅街ではDVや誘拐、殺人など不穏な事件が次々に起きる。そして、堅気のビジネスマンだと思っていた夫・勇輝(西島秀俊)もどうやら菜美と同じ種類の人間らしい!?


 原案・脚本の金城一紀が連続ドラマでは初めて女性を主人公にしたこの作品。元特殊工作員で腕っ節が強く、悪い男たちを成敗するというヒロインの設定は現実離れしているのに、近所の主婦たちの身に起きることは、別のドラマかと思わせるほどリアルだ。そのギャップを面白いと見るか、ミスマッチだと見るかでこのドラマの評価は変わってくるだろう。


 登場する夫たちのダメさ加減は、新聞の投書欄や相談コーナー、はたまた夫の死を願う妻たちのネット掲示板を書籍化した『だんなデス・ノート』を連想させる。まず、広末涼子が演じる優里の夫・啓輔(石黒賢)は“モラハラ夫”だ。そもそも優里と結婚したのは、大学教授と教え子の関係だったとき。就職する気まんまんだった優里をわざと妊娠させ、社会に出られなくしたというから驚き(ほとんど犯罪!)。そして今、改めて働きに出たいという優里に「主婦として僕と子供をもっとしっかり見つめてくれ」と言って、家の中に閉じ込めようとする。教師と生徒の上下関係をそのまま持ち込んだような家庭の空気はとても息苦しい。しかも、今ではセックスレスとくれば、優里が家出したり浮気したりするのも無理はない。


 本田翼が演じる京子の夫・渉(中尾明慶)は“浮気男”だ。こんなにかわいい妻がいても目移りするのか?というキャスティングへの疑問はあるものの、マザコン気味で、妻との子作りからは逃げ、家の外にときめきを求めて他の女性との恋愛にハマっていく夫像は実にリアル。京子は「彼を脅すようにして結婚した」という負い目があり、また夫の家で姑と同居している弱い立場ゆえ、浮気されても夫を非難できない。


 この2人に比べると、菜美の夫・勇輝は100点満点の夫と言ってもいい。かっこよくて優しく経済力もある。さらに毎晩、帰宅後には「今日は何をしていた?」と話しかけて、妻のたわいない話もよく聞いてくれるのだ。菜美たちが家出したときも「彼女たちが求めているのは、妻としてではなく、人としてきちんと愛されることなんじゃないでしょうか」と女性心理を的確に分析。菜美が結婚前の恋人について質問すると、「君に言われるまで、昔つきあっていた彼女の存在なんてすっかり忘れていたよ」とにこやかに答える。まさにパーフェクトな夫なのだ。いや、「だった」と過去形で言うべきか。


 第1話から多くの人が見抜いていたとおり、勇輝についてはドンデン返しがあった。彼は「福岡に出張」と言っておきながらお台場のレインボーブリッジが見える部屋にいたり、菜美の仲間であるハッカー(西尾まり)に素性を探られると口封じをしたりと、しだいに本性を露わにしてきた。こんな完璧な夫でも、名前から勤め先までのプロフィールが全て嘘で、妻の話を聞くのも愛情からではなく見張るためだとしら、それは人生の伴侶としてモラハラや浮気よりひどい裏切りかもしれない。


 これまでは『だんなデス・ノート』の逆バージョンである『旦那スキですノート』のようなラブラブ生活を送ってきた菜美だが、高い格闘能力を持つがゆえに夫を殺すことも自白させることも可能。最終回ではまさに夫と死闘を繰り広げることになりそうだ。菜美は第9話で「理想の夫婦を目指すことにした」という決意を語っていたが、それは京子が言っていた「どんなことがあっても離れられなくなっちゃった2人」を意味し、たとえ勇輝が敵だとしても別れないということなのだろうか? そんな菜美の選択を見届けたい。そして、菜美のような解決手段を持たない京子と優里が迎える結末こそ、リアルな妻たちにも参考になりそうだ。


 さらに、本当に夫を殺す寸前までいった女性がヒロインの『監獄のお姫さま』(TBS)の結末とも見比べてみたい。今クールの『奥様―』と『―お姫さま』は、アプローチとスタイルこそ違うが、同じテーマを内包している。果たして女が男に絶望した後にあるのは、さらなる絶望かそれとも希望なのか?(小田慶子)