2017年12月05日 10:12 弁護士ドットコム
共同通信の本社勤務の男性デスク(50代)が社内で女性社員を盗撮していたと週刊文春(2017年12月7日号)が報じた。
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週刊文春によると、男性デスクは着衣の状態で女性社員の胸や足を撮影していた。会話中に撮影されたことに気づいた女性社員が不審に思い、上司に相談したことが発覚のきっかけだったという。
弁護士ドットコムニュース編集部が共同通信に問い合わせたところ、「弊社の男性職員が、職場で業務中などの女性職員の画像を撮っていたことが分かりました。職員に不快な思いをさせたことは間違いなく、適切に対処します」と回答している。
今回男性デスクは社内で処分される可能性はありそうだが、服の上からの撮影行為が犯罪になる可能性もあるのか。伊藤諭弁護士に聞いた。
服の上からの撮影行為は犯罪になるのか。
「東京都迷惑行為防止条例(他の自治体においても同種の条例があります)第5条における『卑わいな言動』にあたるかどうかが問題になります。
この点について非常に重要な最高裁判所の判例(平成20年11月10日)があります。この事例は、ショッピングセンターにおいて、デジタルカメラで細身のズボンを着用した女性の臀部(でんぶ、体の尻の部分)を至近距離から複数枚撮影したというものでした。
この事例で最高裁判所は、『被告人の本件撮影行為は、被害者がこれに気付いておらず、また、被害者の着用したズボンの上からされたものであったとしても、社会通念上、性的道義観念に反する下品でみだらな動作であることは明らかであり、これを知ったときに被害者を著しくしゅう恥させ、被害者に不安を覚えさせるものといえる』とし、着衣の臀部を撮影する行為について『卑わいな言動』にあたると判断しました」
服の上からとはいえ、至近距離から女性のお尻を撮影していれば「卑わいな言動」と言えるということだ。では、全身や足のみの場合はどうだろうか。
「問題となるのは、どの程度のものであれば『性的道義観念に反する下品でみだらな動作』といえるかということです。最高裁の基準によれば、着衣であっても女性の胸を取り立てて撮影したものであれば、『卑わいな言動』と言えると思いますが、肌の露出していない足などの場合は、それだけで卑わいな言動といえるかというと疑問です。
ましてや、特定の部位が強調されているわけではない全身のスナップ写真等の場合は、卑わいとはいえないと考えます。
なお、条例違反が成立するためには、こうした卑わいな言動が『公共の場所又は公共の乗物』で行われる必要がありますので、社内でこうした撮影行為が行われたとしても該当しません」
では、今回の男性デスクの事例の場合、刑事責任は問えないということか。
「そうなります。ただ、刑事責任を問えないとしても、民法上の不法行為が成立する可能性はあります。社内において同僚を無断で撮影する行為は、明らかに業務の必要性がなく、撮影された人が不快に思うことであり、その行為態様や頻度によっては慰謝料請求が認められる可能性が十分あります。
また、社内の風紀を乱す行為ですので、懲戒処分の対象となることも考えられます」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
伊藤 諭(いとう・さとし)弁護士
1976年生。2002年、弁護士登録。神奈川県弁護士会所属(川崎支部)。中小企業に関する法律相談、交通事故、倒産事件、離婚・相続等の家事事件、高齢者の財産管理(成年後見など)、刑事事件などを手がける。趣味はマラソン。
事務所名:弁護士法人ASK市役所通り法律事務所
事務所URL:http://www.s-dori-law.com/