2017年5月、第101回インディ500を制した佐藤琢磨。時速380kmという超高速域での戦いには、ドライバーが信頼できる「戦友」が必要だ。
琢磨とともにインディアナポリスを疾走したヘルメットを見てほしい。高強度カーボンファイバーで作られるアライヘルメットのハイエンドモデル『GP-6RC』。琢磨は内装のフィット感にこだわり抜き、徹底したチューニングを施している。外装を見ると、おびただしい数のブラックマークが前から後ろへと流れ、超高速域で受ける衝撃の大きさが伝わってくる。
頭頂部付近に掲げられるのは、インディ500予選直後というタイミングで交通事故により他界した2輪世界王者ニッキー・ヘイデンへの思い。「同じホンダのライダーとしてイベントなどで一緒になることも多く、親交があった。モータースポーツを愛する者として悲しい出来事だった」という琢磨は「決勝もニッキーと一緒に走った」と語る。
捨てバイザーと呼ばれる、ティアオフシールドは「F1時代は3枚程度だった」が、2017年のインディ500は15枚を装着して決勝をスタート。4枚を残してチェッカーを受けた。ティアオフはレーシング・オプティクス社製。
通常のレースでは換気や冷却のため、わずかにシールドを上げて隙間を空けておくのが一般的だが、インディ500は例外。「超高速だからシールドを全閉にしていてもヘルメット内側では風が舞い、目が乾燥する」のだ。琢磨は「極力、目のまわりに“空気の動き”を作りたくない」という狙いのもと、シールド開口部に沿って軟質ウレタンフォームを貼り、気密性を高めている。これはインディカーでもロード/ストリート/ショートオーバルでは使わず、スーパースピードウェイだけに投入されるアイテムだ。
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