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悪質クレーマーには「刑事告訴も辞さない態度を」…土下座強要、大声など7割が経験

2017年12月04日 10:22  弁護士ドットコム

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客の悪質クレーム(迷惑行為)の問題が深刻化しているようだ。外食や流通などの労働組合でつくる産別労組「UAゼンセン」が、スーパーや百貨店などで働く人にアンケートをとったところ、約7割が業務中に悪質クレームを受けたことがあると回答した。


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UAゼンセンは今年6月~7月、加盟組合に対して、アンケート調査をおこなった。5万878人から回答を得て、このうち約7割にあたる3万6002人が悪質クレームを受けたと答えた。内容としては、暴言が2万4107人、何回も同じ内容を繰り返すクレームが1万4268人、土下座の強要が1580人だった。


弁護士ドットコムの法律相談コーナーにも、「クレーマーが毎日のように職場にやってきて、他の客の前で大声で叱責してくる」「店内で転倒した客の家族からなぐられた」といった相談が寄せられている。


UAゼンセンは11月中旬、厚労省に対して、悪質クレームの対策を求める要請書を提出した。今後は「お客様は神様だ」といわれてきた風潮も変化していくかもしれない。現状、こうした悪質クレームはどう食い止めればいいのだろうか。飲食店の問題にくわしい石崎冬貴弁護士に聞いた。


●刑事告訴も辞さない毅然とした態度が必要だ

「どのようなクレームを『悪質』というかは別として、たしかに難癖のような、法的に理由のない主張をしつこく繰り広げる人が増えているようですね。私自身、クライアントからそのような相談が増えている印象があります。


悪質なクレーマーへの対応方法は1つです。不当な要求に対して、はっきりと『NO!』ということです。エスカレートするようであれば、刑事告訴も辞さない毅然とした態度が必要になります」


法的にはどのような対応ができるのだろうか。


「店舗の場合、まずその客との取引きを停止して、今後の来店を断ることからでしょう。来店を拒否したという事実を残すために、書面を手渡すこともあります。


私の場合、クライアントから相談があったら、すべて私を窓口にしてもらうように言っています。私自身、最初は電話などで丁寧に応対するように心がけていますが、あまりに非常識だったり、恫喝するような言動がみられるようであれば、その後はすべて書面やメールなどでのやり取りを求めています。


それでも直接店舗に訪れたり、電話をかけ続けるようであれば、民事事件にとどまらず、威力業務妨害などでの刑事告訴もありえます。実際に、店員に土下座をさせたとして、強要罪で逮捕されたという報道もありましたよね」


●悪質なクレーマーは「お客様」ではない

もし会社側が、そんなクレーマーにきちんとした対応をとらず放置した場合、責任はないのだろうか。


「悪質なクレーマーがいるにもかかわらず、会社が適切な対応をとらず、従業員個人任せにしたことで、従業員に精神疾患が発生したとなると、職場の環境をしっかりと調整しなかったということで、会社側に損害賠償義務が生じる可能性があります。


そこまで至らずとも、会社全体の士気に影響がありますから、会社としては『従業員を守る』という姿勢をしっかりと打ち出すことが必要です」


「お客様は神様」という風潮を変える時期にきている?


「私の印象としては、会社のほうが『お客様は神様』という言葉にとらわれてしまっていると思います。本当に悪質なクレーマーは『お客様』ではありません。『できないことは、できない』と会社がしっかりと対応しないと、さらに新たなクレーマーを生み出すことにもなりかねません。


私自身、飲食店のクライアントがほとんどであるため、このような相談は日々あります。すべて毅然と対応したほうがよいとアドバイスしています。もし対応に苦慮したら、すぐに専門家に相談することをおすすめします」


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
石崎 冬貴(いしざき・ふゆき)弁護士
神奈川県弁護士会所属。フードコーディネーターなど食品・フード関係の資格も持ち、飲食店支援サイトを運営するなど、食品業界や飲食店の支援を専門的に行っている。
事務所名:弁護士法人横浜パートナー法律事務所
事務所URL:http://www.ypartner.com/