F1シーズンを転戦していると、いろいろな人との出会いがある。そんな人たちに、「あなたは何しに、レースに来たのか?」を尋ねる連載企画。今回は、丹下都市建築設計の代表取締役会長である丹下憲孝氏だ。
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2017年の最終戦アブダビGPのパドックには、多くのセレブや著名人が訪れていた。その中のひとりが丹下都市建築設計の代表取締役会長の丹下憲孝氏だ。『世界のタンゲ』と称され、日本の建築界の第一人者として国内外で活躍した丹下健三氏のご子息である。
FIAやFOMに友人がいる憲孝氏は、これまでも度々、F1を訪れている。また昨年の日本GPで表彰式プレゼンターとして石井啓一国土交通大臣を鈴鹿に招いたのも政界にも人脈を持つ憲孝氏の功績によるところが大きかった。
その憲孝氏はいったいどうしてアブダビGPに来ていたのだろうか。
「バーレーン大学が近々、新たな学部を新設するのですが、バーレーン大学はじつは私の父がマスタープラン及び建築設計を行なった大学。そのため、新学部新設にともない、その打ち合わせをしたいということで、バーレーンに立ち寄ったんです」
それでは、アブダビGPはその帰り道に寄っただけなのか?
「いやいや、私にとってはF1のパドックも仕事をするうえでの重要な社交場です。ここには世界中の政治・経済・芸能界の著名人が集います。彼らと出会い、話すことは非常に刺激的な経験になります」
もうひとつ、憲孝氏がアブダビを訪れたのには理由があった。それはアブダビGPがF1ラストレースとなったフェリペ・マッサの激励だ。マッサと交友関係を持つ憲孝氏。じつは今年の日本GP直前に東京を訪れていたマッサとダニエル・リカルドを銀座のすきやばし次郎に招待したのは、憲孝氏だった。
「昨年、自分で行ったら、予約がないので入ることができなかったと聞き、今年は私が手配しました」(憲孝氏)
F1はアブダビGPをもって今シーズンを終えたが、憲孝氏にオフシーズンはない。東京オリンピック関連の仕事も手がけているからだ。
そういって、別れた憲孝氏はバーレーンからアブダビGPを訪れていた政府要人にさっそく呼び止められ、談笑しながらパドックを歩いていた。
F1がほかのカテゴリーと異なり、モータースポーツの頂点にあるのは、ドライバーやマシンが最速だという技術的な理由だけでなく、パドックが著名人たちで華やかに彩られているからだ。そして、その中にようやく日本人も仲間入りし始めている。