トップへ

女性に体液かけたら、なぜ「暴行罪」? 長野五輪銅メダリストの容疑者逮捕

2017年12月03日 10:22  弁護士ドットコム

弁護士ドットコム

記事画像

電車内で女性に体液をかけたとして、長野五輪ショートトラック男子500メートルの銅メダリストで、会社員の植松仁容疑者が11月30日、暴行の疑いで愛知県警に逮捕された。


【関連記事:夫が自宅のテレビでAV鑑賞、妻が頼んでもやめてくれない…法的な離婚原因になる?】


報道によると、植松容疑者は今年4月、名鉄線の車内で、女性の右足に体液をかけた疑いが持たれている。植松容疑者は車内で体液を出したことは認めているものの、「かけるつもりはなかった」と容疑を否認しているという。


植松容疑者は、1998年に開催された長野五輪のショートトラック男子500メートルの銅メダリスト。今回の逮捕容疑は「暴行罪」だったが、体液をかける行為も「暴行」にあたるのだろうか。奥村徹弁護士に聞いた。


●暴行とは、人の身体に対する「有形力の行使」をいう

「暴行罪(刑法208条)の『暴行』は、程度を問わず、人の身体に対する『有形力の行使』をいいます。物を投げつけるような場合も含みますので、他人の着衣に体液を付着させることも『暴行』にあたりうることになります」


ほかの罪には問われないのだろうか。


「そのほかに、器物損壊罪(261条)、強制わいせつ罪(177条)という罪名になることもあります。


器物損壊罪については、物理的にモノを壊すだけでなく、飲食店の食器に放尿する行為など、心理的にモノの効用を侵害する場合も含みます。体液をかけられた着衣を着るのが苦痛だという点をとらえれば、『損壊』と評価される可能性があります。


強制わいせつ罪については、体液を他人の着衣に付着させたケースでの裁判例がいくつもあります。『わいせつ性』は認められる可能性があります。


ただし、強制わいせつ罪における『暴行』は『被害者の意思に反してわいせつ行為を行うに足りる程度の暴行』とされて、ある程度の強度を要するとされています。


体液をかけるというだけでは、強制わいせつ罪の『暴行』として弱い場合もありえます。今回の事件で、強制わいせつ罪でなく、暴行罪で検挙されたのは、そういう点を配慮したものだと思います」


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
奥村 徹(おくむら・とおる)弁護士
大阪弁護士会。大阪弁護士会刑事弁護委員。日本刑法学会、法とコンピューター学会、情報ネットワーク法学会、安心ネットづくり促進協議会特別会員。
事務所名:奥村&田中法律事務所
事務所URL:http://www.okumura-tanaka-law.com/www/top.htm