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『陸王』は現代版・桃太郎? お供を連れた役所広司、鬼退治成功なるか

2017年12月03日 06:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 「タチバナラッセル」社長・橘(木村祐一)の裏切りで、ますますおもしろくなってきた日曜劇場『陸王』(TBS系)。物語は、経営難に陥った老舗足袋業者「こはぜ屋」の社長・宮沢(役所広司)が、自社の危機を乗り切るべく、世界一のランニングシューズ「陸王」の製作に挑むヒューマンドラマだ。


(参考:松岡修造、日曜劇場『陸王』出演決定 「このチャンスにチャレンジせずに今後の僕はない」


 ドラマ開始当初、宮沢の周りには敵ばかりだった。だが、宮沢の熱意と人柄に惹かれ、回を追うごとに協力者が増えていく。打倒「アトランティス」を掲げて歩き始めた宮沢と仲間たち。その姿は、現代版「桃太郎」のように思えてならない。


 第1話で、埼玉中央銀行・融資担当の坂本(風間俊介)から、新規事業の開拓を提案された宮沢は「こはぜ屋」の強みを活かした事業として、足袋をモチーフにしたランニングシューズを思い付く。ここに、桃太郎・宮沢の誕生である。桃太郎でいうところのおじいさん・おばあさんは、新規事業を提案した坂本、そして、宮沢をサポートするあけみ(阿川佐和子)ら「こはぜ屋」の従業員だろうか。だが彼らと桃太郎だけでは、到底、鬼と戦えない。


 宮沢の転機となったのは、第一の味方となったスポーツ用品店オーナー・有村(光石研)との出会いだ。有村に誘われ「豊橋国際マラソン」を観に行ったことで、ケガによって途中棄権となった茂木(竹内涼真)に興味を持つことになる。茂木を支えるべく、ケガをしないランニングシューズ「陸王」の製作へと取りかかる宮沢。製作費がかさむ一方で、ぶち当たったのがソールの耐久性という課題だった。そんな中、宮沢は「シルクレイ」という特殊な素材と巡り会う。この特許素材を「陸王」の靴底に使用するため、宮沢は「シルクレイ」の開発者である飯山(寺尾聰)の獲得へと精を出すのだった。


 だが、埼玉銘菓「十万石まんじゅう」を土産にするも、きびだんごのようにはいかない。そこで、宮沢が満を持して差し出したのは「物作りのおもしろさ」だった。「こはぜ屋」を見学した飯山は、自身が「シルクレイ」製作の時に感じていた高揚感を思い出し、「俺もあんたのプロジェクトに参加させてくれ」と切り出す。こうして飯山は、有村に続く第2のお供となったのだ。


 続く第3のお供は、シューフィッターの村野(市川右團次)だ。大手シューズメーカー「アトランティス」に務めていた村野は、選手の体調よりシューズの名声を第一に考える「アトランティス」を自ら切り捨てる。そして、「選手思いの宮沢の熱意」と引き替えに、「こはぜ屋」への協力を決意。カリスマシューフィッターの獲得は、「こはぜ屋」にとって大きな糧となる。なにより、村野には茂木からの厚い信頼があり、これによって「茂木に陸王を履いてもらう」という目標へと大きく前進した。


 新商品「足軽大将」のヒットを機に、坂本の後任となった銀行員・大橋(馬場徹)もいつしか宮沢の味方となり、事業は軌道に乗り始める。だが、「アトランティス」も黙ってはいない。茂木の完全復活を見込み、再びサポートに名乗りを上げたのだ。迎えた運命のニューイヤー駅伝。こはぜ屋の「陸王」、アトランティスの「RⅡ」を天秤に掛けた茂木が選んだのは「陸王」だった。この日、茂木は区間賞の快走。そしてレース後、「これからも陸王を履いてどんどん勝ちますから。今度は俺が、こはぜ屋さんの力になりますから」と、茂木は宮沢の仲間になることを約束する。


 それでも、宮沢にはまだ試練が続いていた。アッパー素材に使用していた「タチバナラッセル」に「アトランティス」が大量ロット注文を持ちかけたことで、「こはぜ屋」への素材供給が打ち切られてしまうのだ。貴重な仲間を逃した宮沢だったが、「タチバナラッセル以上のアッパー素材は、俺が見つける」と寄り添ったのは大地(山崎賢人)だった。反発ばかりだった息子が、気づけばかけがえのないお供となっていたのだ。


 商品の売れ行きにこそ伸び悩んではいるものの、メキメキと頭角を現わす桃太郎に、いよいよ本気になった鬼たち。「アトランティス」との直接対決へと駒を進めた「こはぜ屋」の強みは、なんといっても腕利きのお供たちだ。それぞれの特性を活かした切り込み方で、強敵「アトランティス」に立ち向かう。果たして宮沢は鬼退治に成功し、お宝を手に入れ経営危機から脱出となるのか。絵本の続きが気になって眠れない子どものように、ドラマの行く末が楽しみでたまらない。


※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記


(nakamura omame)