トップへ

坂口健太郎が山口紗弥加から学んだ“患者に寄り添う心” 『コウノドリ』第8話が描く、医師たちの葛藤

2017年12月02日 12:32  リアルサウンド

リアルサウンド

写真

 「ぼくたちは医者である前に人間だ」ーーサクラ(綾野剛)がそういうように、医者もまた、失敗や過ちを犯す人間である。『コウノドリ』(TBS系)第8話では、白川(坂口健太郎)が大きな岐路に立つ。しかし、それはサクラや四宮(星野源)、同期の下屋(松岡茉優)が経験してきた、多くの医師が通る道だった。


(参考:現役看護師が『コウノドリ』のテーマを考察 データが示す“出産後の育児”の現状とは?


 今橋(大森南朋)は、白川の最近の勤務の様子を見て、心配をしていた。それは、自分の医療の腕に自信がつき始めたことで、周りが見えなくなってしまっていること。初心を忘れてしまった過信によるミスを恐れていたのである。サクラも今橋も自らの考えに固執した結果、過去にミスを犯してしまっていた。そして不幸にも、今橋の予感は的中してしまう。


 白川は、担当している患者、風間(芦名星)の赤ちゃんを肺高血圧症と診断し、必死に見守り続けるが、容態は悪くなっていく一方だった。今橋が改めて診た結果、肺の異常ではなく、生まれつきの心臓病、総肺静脈還流異常症。早急に手術をする必要があった。白川は、患者の父親から「それって医療ミスですよね? この人の最初の判断が間違ってたんだろ!」と責められることに。反論できずに、俯くばかりの白川は、手術で別の病院に向かうドクターカーに乗ることも拒むほどに、自信をなくしていた。今橋は珍しく声を張り、「責任を持って最後まで見届けなさい! 君は過ちを犯した。自分の実力を過信して、赤ちゃんの命を危険に晒したんだ。自分の過ちから逃げるんじゃない」と白川を怒鳴りつける。


 白川は、自分の情けなさのあまり赤ちゃんの両親に顔向けすらできなくなっていた。そこに元ペルソナチームの新井(山口紗弥加)が現れる。彼女もまた、ある手術をきっかけに燃え尽きてしまっていた。しかし、医療の道を離れるも、新井は毎日赤ちゃんのことが頭から離れなかったのだという。やっぱり子供が好き、という気持ちは白川にも共通していた。そして、白川が忘れていたのは、患者に寄り添うという心。白川は、勇気を振り絞り、「風間さん。力及ばず申し訳ありませんでした」と深く謝罪を行う。悔しさに涙を流す白川に今橋は「その気持ち忘れないでね」と優しく声をかけるのだった。


 医療ミスは多くの医師が犯してしまうもので、そのキャリアの曲がり角だ。新井と同じように、サクラも、四宮も、下屋も同じ道を通り、乗り越えた先に、それぞれの選択肢があった。下屋と白川は同期。下屋は、母体と赤ちゃん両方を救える医師になるため、産科から救命科へと異動した。白川が選んだのは、ペルソナを離れ、小児循環器科に異動するという道。患者に寄り添うことを思い出した白川は、生まれてすぐの心臓病でも自分で診断して、治療することができるようになるため、小児循環器科の研修を希望。白川は、医師として上ではなく、先を目指し、小さな命に今よりももっといい未来を届けることを考えた。同期の白川と下屋が、それぞれ自分たちの進むべき道を歩み始めた瞬間だ。


 『コウノドリ』では、これまで医師の医療ミスや患者を亡くしてしまった際の心情を、何度も描いてきた。後悔を胸に積み重ね、医者は進んでいくしかない。「いつか最強の新生児科になるから」、白川が下屋にそう宣言したように、2人は意味のある遠回りをしながら、患者に寄り添うために、また新たな道を歩みだす。


(渡辺彰浩)