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今宮純によるF1アブダビGP採点:アロンソが魅せた渾身の走りと、ホンダに残した最後の置き土産

2017年12月01日 14:32  AUTOSPORT web

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F1アブダビGP 9位に入賞したフェルナンド・アロンソ
F1ジャーナリストの今宮純氏が独自の視点でドライバーを採点。週末を通して、20人のドライバーから「ベスト・イレブン」を選出。予選やレースの結果だけにとらわれず、3日間のパドックでの振る舞い、そしてコース上での走りを重視して評価する。今回はアブダビGP編だ。  

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☆ フェリペ・マッサ
 最後までマッサはマッサらしく、最後の左まわりコースで“ラスト・ポイント”。トルコGP3勝、ブラジルGP2勝ばかりか左まわり7戦連続PPの記録も。15年キャリアのしめくくり、アメリカGP9位~ブラジルGP7位~アブダビGP10位、全部左まわりなのだ。

☆ ケビン・マグヌッセン
 いきなり1コーナーでスライド・アウト、最下位に落ち込みながらそこから抜きまくり13位へ。『抜けないヤス・マリーナ』が話題になったが抜く気満々、(荒っぽいが)やってみせた。

☆ セルジオ・ペレス
 全20戦周回記録はルイス・ハミルトンに次ぐ2位、トップ6ドライバーに次ぐ7位ランクイン。今季100点は昨年の101点と“1点差”、エステバン・オコンとやりあったシーズンの最終ラウンドをきっちり封じ込んだ。

☆☆ パスカル・ウェーレイン
 パワーもないダウンフォースもない、ザウバーで3戦連続14位。チームメイトとの実戦力の違いは誰が見ても明らかなのに、2018年は不明。5ポイントをチームに献上しても評価されない“複雑事情”、やれる限りのことをコース上でやりきっているのに。


☆☆ ロマン・グロージャン
 後方バトルでも見ごたえある序盤の格闘戦。接触寸前で“寸止め”しながら、抵抗する19歳をしとめた。たぶんグロージャンは昔の自分がやっていたブロック・プレー思い出し、その裏を突いていった。予選では『曲がらないマシン』をぼろくそに訴えていても、レースになると入賞手前の11位までもっていった。やるじゃん、グロジャン。

☆☆☆ セバスチャン・ベッテル
 1コーナーでベッテルからブレーキ・ロックの白煙が上がった。その瞬間、ハミルトンはPPボッタスを援護するかのように動き抑え込んだ。メルセデスふたりがフォーメーションを事前に考えていたかに見えるようなプレー、最初で最後のチャンスをつぶされた。孤独な3位レース……、99回目の表彰台で悔しさをにじませた“前四冠王”。

☆☆☆ ダニエル・リカルド
 シーズン・ラスト4戦に3度目リタイア、たまらずにがっくり。3位ベッテルを2秒圏内でフォロー、後ろのキミ・ライコネンをリードしていただけにつらいリタイアだ。終盤に勝負、フェラーリ勢が燃費で苦しむ状況を予測していたのも未遂に終わった。


☆☆☆ ルイス・ハミルトン
 チャンピオンを決めたらもうPPを譲り、ボッタスの脇役にまわったかのようだった。もっといやらしく1位ボッタスを背後からあおるかに思えたがワンミスで2位。それでいい、この2位によって25戦連続入賞、ライコネンが持つ最多27戦記録に迫ったのだから。

☆☆☆ ニコ・ヒュルケンベルグ
 ルノーの看板を背負うワークス・ドライバーのミッションに徹した6位・8点。ペナルティ覚悟でもいくプレーをつらぬいた(アラン・プロストさんなら理解できるはず)。今年もまた表彰台はなかったが新境地ルノーでのマシン&PUの限界域を引き出していたのは確か。


☆☆☆☆ バルテリ・ボッタス
 小国ののどかな町に生まれ、このチームに急に抜擢され、相手はポップスターのようなハミルトン。その居心地は穏やかではなかっただろう。地味な印象だったボッタスにはここが最後に実力証明する機会、PP~トップラン~FLによってそれを果たす。でもまだまだ自分には足りない部分があることも分かったメルセデス1年目、不言実行型の彼は“遅咲き”タイプの道を歩むのか。

☆☆☆☆☆ フェルナンド・アロンソ
 ハミルトンが『1.4秒差がないと抜けないコース』と酷評したヤス・マリーナ。そうだろうか。アロンソにそんなタイム優位性はあり得なかったがマッサを執拗に追い、回生パワーの差異を毎周にわたりピットと交信を重ね、ラインを駆使してストレートエンドで抜いていった。

 やれば抜けるのだ(アナウンサーには絶叫して欲しかった)。あのオーバーテイクは17年アロンソの傑作品、さらにFLラップを狙おうとホンダ回生力をためこみ挑んだファイナルラップの意気込み。彼のホンダ批判コメントばかりが一部メディアで取り上げられてきたがそうではない。

 悲惨だったマクラーレン・ホンダ3年の60戦(アロンソは57戦)、このラスト3戦に最初で最後の“ハットトリック入賞”。かすかなチャンスのFLに挑んだレーシング・スピリットこそ、いまのホンダには必要な置き土産だった。