2017年11月30日 18:22 弁護士ドットコム
知的障害を持つ、東京都町田市の男性(27)が、指導役の女性従業員からいじめを受け、退職を余儀なくされたとして、元勤務先のスーパーマーケットとこの従業員を相手に、損害賠償など約585万円を求めていた訴訟で、東京地裁は11月30日、会社と従業員に計22万円の支払いを命じた。
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男性側は、女性から何度も暴言や暴行を受けたと主張したが、認められたのは「あんたの仕事は幼稚園児以下なんじゃないの」「馬鹿でもできるでしょ」という2つの発言だけだった。また、会社側の就労環境整備義務違反なども認められなかった。
判決後の記者会見で、男性側は控訴する意向を表明。男性は、「ずっと我慢していて、会社にも店長にも言い続けてきたのに、自分が言っていることを信じてもらえなくて、すごくつらいです」と話し、涙をぬぐった。
判決によると、男性は特別支援学校卒業後の2008年に就職し、2013年まで、この女性従業員とともに働いた。
女性従業員は連絡ノートで、家庭に男性の仕事ぶりなどを報告していた。しかし、男性側は2009年頃から暴言や暴力を振るわれるようになったと主張。男性は同年から就労支援センターに相談し、センターに残っていた相談記録を証拠として提出したが、裁判所は裏付けとなる根拠がないなどとして、2つの暴言以外は認めなかった。
また、男性はセンターを通すなどして、会社側に配置転換や環境改善を要望していたが、聞き入れられなかったという。会社の落ち度を指摘したが、判決では、会社に検討した形跡はあることなどから「合理的配慮が足りなかったといえない」と退けられた。
男性側代理人の黒松百亜弁護士は、こうした障害者の問題が裁判になるのはまれとした上で、「障害者を雇う会社の全体の問題として考えて欲しかった」と残念がった。
現在、障害者雇用促進法で、雇用面の対策は進みつつあるが、定着の難しさが指摘されている。会社が雇用に熱心でも、末端の従業員が、一緒に働く障害者への理解を示せるかも課題とされている。
「我々が一番訴えたかったのは、障害のある方の雇用の定着の点。採用すれば終わりではなく、定着するかこそが鍵。
知的障害があることで、苦手な作業もある。健常者と同じ指導方法だとできない作業もある。だから、どういう障害特性があって、どういう指導方法なら分かるのかなど、会社側が環境整備しないと、作業効率は上がらない。
効率が上がらないと、やる気がないとか、何度言っても間違えるとか、否定的な評価が生じて、いじめに発展する。定着できなくて、辞めざるを得ない」(黒松弁護士)
樫尾わかな弁護士も「会社は障害者雇用に熱心。だけど、現場による。忙しい中で、現場にフラストレーションが溜まっていったのではないか。会社側も就労支援センターのサポートを利用してほしかった」と語った。
(弁護士ドットコムニュース)