仕事や勉強のパフォーマンスを上げるには「集中力」が欠かせない。
しかし、ある研究結果では、「深い集中に入るには平均23分かかる」とされているように、集中するまでに長い時間を要する人もいるだろうし、その持続も難しい。マイクロソフト社の研究によれば、「現代人の集中力は8秒しか続かず、これは金魚の9秒を下回る」のだという。
しかし、短時間で集中状態に持っていくための方法がないわけではない。ここでは、『集中力 パフォーマンスを300倍にする働き方』(井上一鷹著、日本能率協会マネジメントセンター刊)から「それは知らなかった!」という集中力の高め方を紹介しよう。
本書では、メガネチェーン「JINS」が開発した、集中力を測定するメガネ型デバイス「JINS MEME(ジンズミーム)」を活用した実証実験データをもとに、集中力を高める25個のメソッドが紹介されている。
ちなみに「JINS MEME」の研究成果は、2017年7月に行われた経済産業省主催の働き方改革に関するコンテストでグランプリを獲得している。
■「五感を意識した環境づくり」が集中力を上げる
「JINS MEME」での研究結果によれば、集中を生み出すには、
「体調」「取り組み方」「環境」を整えることが重要だという。
本書でとくに興味深いのが
「環境」を整えて、集中力を高める方法だ。
その中から「五感への刺激」で集中力を高める方法を紹介しよう。
視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚は、良くも悪くも集中力に大きな影響を及ぼす。つまり、良い方向に刺激できる環境を整えれば、集中力を高めることができるのだ。
では、上手な「五感」の刺激の仕方とは、どんなものだろうか?
●五感?「視覚」人間の周辺視野は180度以上あるため、その範囲に多くの物があると集中力は削がれてしまう。
しかし、
視界の中に10~15%の割合で植物が置かれていると集中力は高まるという。
植物が視界に入ることでストレスが軽減され、集中力が高まることにつながるのだ。
●五感?「聴覚」音楽を聴きながらの仕事は人によって効果が別れるところ。集中できるという人もいれば、かえって集中を妨げられる人もいる。
ただ、聴覚は集中力向上と密接に関係する。なかでも「ホワイトノイズ」は、聴覚を効果的に刺激して集中を高める効果が期待できるという。
ホワイトノイズとは、アナログTVの「画面が砂嵐のときの音」と言えばわかりやすいだろう。
ホワイトノイズを流したところ、注意力散漫な生徒の学習効果が上がったという研究結果もあるという。あらゆる周波数帯の音を含み、周囲の音を特定しにくくさせることで集中につながる効果があるのだという。
●五感?「嗅覚」集中力を高めるために嗅覚刺激を使うことは古くから行われている。たとえば、密教では写経に入る前に塗香を行っていたことが知られている。
嗅覚で集中力を高めたいときは「ローズマリー」「ペパーミント」などの香りがするアロマなどを用いるといいだろう。
また、匂いを嗅ぎ分けるのには高い集中力がいるという。そこで「今、この状態で何の匂いがするかな?」と意識すると、マインドフルネスに近い効果が得られ、集中力も持続しやすくなるようだ。
●五感?「触覚」長時間の作業で集中が続かなくなる原因の1つに「ワーキングメモリ」の低下がある。
その
ワーキングメモリの回復に役立つのが「噛む」ことだ。
ガムを噛むことでストレスや疲労が低下し、さらには不注意や勘違いの抑制傾向が見られたという研究結果もある。また、ガムを噛む行為は、単純なリズム運動なので、持続的な集中を実現するのに必要な神経伝達物質「セロトニン」を生み出しやすいとも考えられているという。
●五感?「味覚」味覚への刺激ではないが、飲食物で集中力を高めることもできる。
仕事中の飲み物の定番といえば
「コーヒー」だ。コーヒーに含まれるカフェインには興奮作用があり、交感神経が刺激されて意識が活性化し、集中状態が生み出される。
コーヒーとともによく飲まれるのが
「緑茶」。緑茶にはテアニンという成分が含まれており、副交感神経に働きかけ、ストレス緩和やリラックス効果などの効果がある。副交感神経を優位にすると、集中にも効果が見込まれるという。
そして、
カフェインとテアニン両方同時に摂り入れることで、より集中力が上がるとする研究報告があるという。どちらかを飲み続けるのではなく、「コーヒー」と「緑茶」をその都度変えて飲むと、集中力を高める効果が期待できそうだ。
これらは、本書で紹介されているメソッドの一部に過ぎないが、実証データをもとにしたメソッドの数々は、どれも集中力の向上に役立ちそうなものばかりだ。
「集中力が続かず仕事がはかどらない」と悩む人は、ぜひ手に取りたい一冊だ。
(ライター:大村 佑介)