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aikoが語る、『予告』にこめた思いとこれから 「私は私の道を突き進んでいきたい」

2017年11月29日 18:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 aikoが、37枚目のシングル『予告』を11月28日にリリースした。表題曲はリスナーはもちろん、歌うaiko自身も底抜けに元気になれるというポップナンバー。そしてカップリングにはリアルな心情がこめられ、切なさを纏った珠玉のラブソング「間違い探し」「月が溶ける」の2曲を収録している。


 今回リアルサウンドではaikoにインタビューを行い、全国ライブハウスツアー『Love Like Rock vol.8』の振り返りから『予告』収録曲にこめた思い、さらには来年迎えるメジャーデビュー20周年について話を聞いた。(編集部)


(関連:aikoのライブは常にスペシャルだーー攻めの姿勢と愛に溢れたツアー『Love Like Rock vol.8』


■“特別”の形が少し変わってきた


――今年は全31公演のツアー『Love Like Rock vol.8』で全国を駆け巡ったaikoさん。あらためて振り返るといかがですか?


aiko:毎回そうなんですけど、今回もすべての会場で必死でしたね。何回ライブを重ねてきても、その場の空気によって自分の気持ちを持っていかれてしまうことがあるというか。焦ったり、みんなの熱量に飲まれてしまったり。だからこそ悔しい気持ちになることもたくさんあったんですけど、でもやっぱり何よりも本当に楽しい時間だったなって思います。毎回、抜け殻になるようなライブができたことが嬉しかったですね。ツアー後半に骨折したこともいい思い出です(笑)。


――毎公演、ものすごい熱さでしたよね。お客さんの汗が水蒸気となってライブハウスにモヤがかかるという。


aiko:ほんまにすごかったです! 今回はライブハウスだったので、お客さんとの距離もめちゃめちゃ近かったんですよ。そこで感じるあのむせ返るような汗のにおいがね、私は好きなんですよね(笑)。「ライブやってる!」っていう気持ちにさせてくれるので。


――ライブで味わう濃密な時間は、楽曲制作にもフィードバックすることがあるんじゃないですか?


aiko:そうですね。制作は日常の中で作る感覚でどちらかというと昔はライブと制作を切り離して考えていたところがあったんですよ。ライブはすごく特別なものという感覚があったから。でも、最近はその“特別”の形が少し変わってきたところもあって、曲を作る時にライブの景色を思い浮かべることもあるし、「ライブで歌いたいな」っていう気持ちで曲を作ることも増えてきたんですよね。


――今回の新曲「予告」にはライブでの経験が反映したんじゃないかなと思う箇所がいくつかあったんですよ。実際はどうでしょう?


aiko:影響はあったと思いますよ。ツアーが終わった後に2コーラス目の歌詞を書き、レコーディングをしたので、ライブで感じたことがけっこうダイレクトに出てるかもしれないです。<真っ最中の真ん中は愛おしい>っていうフレーズは、ライブをしている時の花道をイメージして書いたところもあったので。


――なるほど。そう考えると、この曲が持っているハッピーで前を向いたメッセージ自体、aikoさんがライブを通して感じていることのようにも思えてきます。


aiko:確かにそうかもしれないですね。ライブはお客さんがいてくれるからこそがむしゃらに突き進むことができるんですよね。そういう気持ちが今回の歌詞には出たなって自分でも思います。私は日々生きている中で「でも」とか「だって」みたいな気持ちになって立ち止まってしまう瞬間がよくあるんです。でも、そういった気持ちが生まれたとしてもしっかり前を向いていきたいなって気持ちのほうが今は大きいというか。そう思えるようになったのもライブという場所があるからなんやろうなってすごく思います。


――「予告」はそもそもいつ頃に、どんなきっかけで生まれたんですか?


aiko:ワンコーラス分ができたのは去年の末か今年の頭やったと思います。その時、精神的に堕落しすぎてたんですよ。「こんなんでいいのかな?」って思いつつも、動き出すための原動力もないしっていう。


――aikoさんのパワーの源であるライブもそのタイミングにはなかったし。


aiko:そうそう。「私、大丈夫かな?」とかいろいろ考えたりもして(笑)。でも、そういう状況がほんまにイヤになって、自分自身が底抜けに元気になれるような、そして聴いてくれる人も元気になってもらえるような曲を作ろうと思って書いたのがこの「予告」だったんですよね。


――この曲には聴き手の心を躍らせる前を向いた感情しか込められていないですよね。


aiko:自分にとっての願望もたくさん入っています。例えばAメロの<目が覚めたら世界は変わる>って言うのは、みなさんありませんか? 昨日のショックなことを引きずって次の日が来ること。「寝て起きたら変わってたらいいな」って思うけど何も変わってなくて、と言うか自分の気持ちが変わってないんですよね。あの感覚が本当に嫌なんです。ヤル気スイッチがほんまにあったらいいですよね(笑)。


――そもそも明るくなってから寝ることも多いんですよね(笑)。


aiko:はい(笑)。だからそういう生活から抜け出したくてこのフレーズを書いたところもあったと思うんですよね。


――メインの歌に加え、“♪トゥットゥル”パートやフェイク、コーラスといった声の要素がこの曲の楽しさをさらに加速させているところもありますよね。


aiko:この曲は歌い出しの「トゥットゥル」のところからできたんですよ。なのでファンの人がここのフレーズを口ずさんでくれたりするとめっちゃ嬉しいです。コーラスやフェイクもレコーディングの日まであまり考えずに行きました。スタジオブースで思いついたことを入れてみようと思ってやりました。


――シングルの2曲目には「間違い探し」が収録されています。恋愛における切ない瞬間を切り取った内容になっていますね。


aiko:なんとなく「もうダメなんだろうな」って思いながらも関係を続けていて。でも、ふとした時に「これってすごく不毛な時間なんじゃないかな?」ってちょっと思ってしまうっていう瞬間を書いた曲ですね。


――お互いに一緒にいることが当たり前になりすぎて、そこにある感情が愛なのかどうかがわからなくなっている感じ。


aiko:はい。最初に出会った時の「好き」とは別の感情になってしまっていて、それが果たして愛なのかどうなのかっていう。でも相手のことを大切な存在だとは思っているから、その気持ちのはざまで揺れ動いている感じもあるっていう。男子には「めんどくさい女やな」って絶対言われそう(笑)。


■20周年はいつも通り、平常心を保って過ごしたい


――シングルにはもう1曲、「月が溶ける」というバラードも。


aiko:好きな人と電話でしゃべってる時に「ありがとう」って何度も言われると、それが「さよなら」に聞こえてしまうことがあって。なんだか寂しくなっちゃうんです。言い方とかもあったんだと思うんですけど「さよなら」に聞こえてしまって。どうしようもなく好きだからそう聞こえたんだと思うんですけど……なんか、そんな曲です。


――2人の関係はいろいろな受け取り方ができる感じですよね。


aiko:そうですね。私自身、付き合っていたとしても常に不安で、片想いだと思っている人なので(笑)、それがそのまま曲になったような気もします。


――この曲はアレンジとaikoさんの歌が聴いているだけで胸をギュッと締め付けるというか。


aiko:この曲はすごく切ない曲にしたかったんですよ。少し前に作った曲なんですけど 、家でふとした時によく口ずさんでいたので、こうやってCDに入れることができて本当に嬉しいです。


――来年のaikoさんはいよいよメジャーデビュー20周年を迎えます。何か企んでます?


aiko:私としてはあまりなにも考えないようにしています(笑)。周年とか記念日を意識すると舞い上がって逆に何も手につかなくなるので、いつも通り、平常心を保って過ごしたいなと思ってます。とは言え、活動できることはほんまにありがたいことなので、それはしっかり噛みしめたいなとは思ってますけどね。


――では、来年のaikoさんの姿を“予告”するとしたら?


aiko:えー! 予告? ……それも変わらず、ですかね(笑)。私は私の道を突き進んでいきたいです。


(もりひでゆき)