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強制わいせつ判例変更…「ふんぎりが悪い判決」「境目がわからない」弁護側が批判

2017年11月29日 17:23  弁護士ドットコム

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「強制わいせつ罪」の成立に、性的な意図はいらない――。最高裁大法廷は11月29日、このような判断を示した。これまで最高裁の判例(昭和45年)は、「性的意図が必要」とするものだったが「一律に要件とすることは相当でない」として、判例変更をおこなったのだ。


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一方、弁護人をつとめた奥村徹弁護士は「『性的意図は不要だ』と言い切ればいいものを『この事件については不要だ』として、有罪を維持した。これまでの判例だと無罪なのに、(被告人が)実刑に服することになった。ふんぎりが悪い判決で納得しがたい」と批判する。


●「昭和45年判例」とは?

そもそも、今回変更された判例(昭和45年)はどのようなものだったのか。最高裁のホームページなどによると、女性に仕返しする目的で、裸にしてその写真を撮影したという事件だ。当時の最高裁は次のように、強制わいせつ罪の成立には、一律に「性的意図が必要」という判断を示していた。


(1)強制わいせつ罪が成立するためには、その行為が犯人の性欲を刺戟興奮させまたは満足させるという性的意図のもとにおこなわれることを要する


(2)婦女を脅迫し裸にして撮影する行為であっても、これが専らその婦女に報復し、または、これを侮辱し、虐待する目的に出たときは、強要罪その他の罪を構成するのは格別、強制わいせつの罪は成立しない


●判例変更の理由は?

一方、今回は、13歳未満の少女にわいせつな行為をしている様子をスマートフォンで撮影した事件だ。最高裁は次のような判断を示して、強制わいせつ罪の成立には、「一律に性的意図を要件とすることは相当でない」として、判例変更をおこなった。


(a)今日では、強制わいせつ罪の成立要件の解釈をするに当たっては、被害者の受けた性的な被害の有無やその内容、程度にこそ目を向けるべきであって、行為者の性的意図を同罪の成立要件とする昭和45年判例の解釈は、その正当性を支える実質的な根拠を見いだすことが一層難しくなっているといわざるを得ず、もはや維持し難い


(b)個別具体的な事情の一つとして、行為者の目的等の主観的事情を判断要素として考慮すべき場合があり得ることは否定し難い。しかし、そのような場合があるとしても、故意以外の行為者の性的意図を一律に強制わいせつ罪の成立要件とすることは相当でない


●園田寿弁護士「現状と変わらない」

今回の最高裁判決についてどう見るべきか。被告人弁護人であり、甲南大学法科大学院教授(刑事法)の園田寿弁護士は判決後の記者会見で、「昭和45年判決を否定したからといって、すべて性的意図が要件としていらない、ということではない」とコメントした。


園田弁護士は、今回の判決の中で(ⅰ)行為そのものが持つ性的性質が明確な場合、(ⅱ)行為そのものが持つ性的性質が不明確な場合――という2つのパターンがあると指摘されていることをあげて、弁護側の主張のうちで受け入れられた部分があると、評価を語った。


そのうえで、「『性的意図があって、強制わいせつになる』というニュアンスが残っている。捜査実務でも『性的意図があったかどうか』『どんな性癖があったか』は取り調べの対象になってくる。現状と変わらない」と話した。


●「わいせつの定義」には触れてもらえず・・・

一方で、奥村弁護士は「客観的に明らかな『わいせつ行為』と、限界事例との境目がわからないままだ」と批判する。


また、奥村弁護士によると、電車内での痴漢行為は、迷惑防止条例違反になることが多いが、悪質なものは強制わいせつ罪になることがある。その境目がどうなるのか、はっきりしないというのだ。「罪の重さがぜんぜん違うので、実務家としては困る」(奥村弁護士)


今回の事件をめぐっては、いわゆる「わいせつ」の定義も関係していた。「わいせつ」とは、「いたずらに性欲を興奮または刺激させ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的同義に反するもの」とされている。


だが、最高裁はその部分に一切触れなかった。奥村弁護士は「あいまいなまま残った。羞恥心のない乳幼児に対する行為についてはどうなるのか。どういう場合わいせつ行為になるのか。積極的な解決方法が見えてこない。保護法益までさかのぼって説明するのは難しい」と述べた。


(弁護士ドットコムニュース)