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スカパラ、[Alexandros]、POLYSICS……バンドシーンの充実示す新作

2017年11月28日 08:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 UNISON SQUARE GARDENの斎藤宏介をフィーチャーした東京スカパラダイスオーケストラのニューシングル、いまや音楽シーンのド真ん中に存在している[Alexandros]の新曲など、魅力的なバンドの新作を紹介。これらの作品を通して、多様性を増してきた現在のバンドシーンの充実ぶりを実感してほしい。


(関連:東京スカパラダイスオーケストラと斎藤宏介のスペシャルな宴 「白と黒のモントゥーノ」初披露レポ


■東京スカパラダイスオーケストラ『白と黒のモントゥーノ feat.斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN)』


 UNISON SQUARE GARDENの斎藤宏介(Vo / Gt)をゲストボーカリストに招いた東京スカパラダイスオーケストラのニューシングル表題曲「白と黒のモントゥーノ feat.斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN)」は、スカ、ラテン、ロックが混ざり合い、生々しく、濃密なバンドグルーヴへとつながるアッパーチューン。ここ数年、ブラジル、アルゼンチンなど南米でツアーする機会が増えているスカパラだが、現地のミュージシャンとの交流のなかで得たものは、沖祐市(Key)の作曲によるこの曲にも色濃く反映されている。艶っぽく、妖しい匂いをまき散らすようなメロディを完璧に歌いこなす斎藤のボーカルも絶品。UNISON SQUARE GARDENとは違った魅力を引き出していることも、この楽曲がもたらした大きな成果だろう。


■[Alexandros]『明日、また』


 昨年11月にリリースした6thアルバム『EXIST!』がオリコンやBillboard JAPANチャートなどで1位を獲得するなど、ロックシーンの枠を超えた幅広いポピュラリティを獲得するに至った[Alexandros]。今年の夏フェスでも披露されていた新曲「明日、また」には、ファンキーなギターカッティング、トロピカルハウス的な音像、バウンシーなダンスビートなどが取り入れられ、すべてのオーディエンスに向けられた解放的な楽曲に仕上がっている。意欲的に間口を広げつつ、一瞬で[Alexandros]の曲だとわかる固有性と音楽的なオリジナリティをしっかりキープしているところが、現在の彼らの好調ぶりの要因だろう。何よりもポップであることを恐れない姿勢が素晴らしいと思う。


■BLUE ENCOUNT『VS』


 武道館、幕張メッセでワンマンライブを成功させ、バンドシーンにおける確固たるポジションを築き上げた現在も、ファイティングポーズを崩さないBLUE ENCOUNT。ニューシングル『VS』表題曲は、タイトル通り、彼らの戦う姿勢をダイレクトに示したナンバーだ。その中心にあるのは“自分との戦い”“他者との戦い”の両方の意味合いを兼ね備えた歌詞。自分の弱さと向き合い、逃げ出したくなる気持ちを気合いで抑え込みながら進んでいくブルエンの在り方をそのまま映し出した楽曲と言えるだろう。徹底的にエモーショナルなメロディライン、エレクトロの要素を取り入れながら強靭さを失うことがないバンドサウンドも、歌に込められたメッセージを際立たせている。


■POLYSICS『That’s Fantastic!』


 結成20年目を迎えた今年、新メンバーのナカムラリョウ(Gt / Vo / Syn)が加入。4人体制となったPOLYSICSのニューアルバム『That’s Fantastic!』。“ニューウェイブ×テクノ×パンク”の黄金比をさらに磨き上げたアッパーチューンを中心に、ブラックミュージックのテイストを取り入れ、“はっちゃけたTalking Heads”状態になっている表題曲「That’s Fantasitic!」、ファンから集めた“トイス!”(リーダー・ハヤシヒロユキ(Gt / Vo / Syn / Pro)のキメゼリフ的挨拶)の声で作った「Toisu Non Stop」などビビッドな楽曲が揃っている。ビジュアル/音楽性の両面においてしっかりとスタイルを貫き、常に新しい表現へと突き進むPOLYSICSはバンドの理想形であると断言したい。


■THURSDAY’S YOUTH『東京、這う廊』


 Suck a Stew DryからTHURSDAY’S YOUTHに改名後、初のフルアルバムはまず、『東京、這う廊』というタイトルが秀逸。もちろんNirvanaの名曲「Smells Like Teen Spirit」の歌詞<Hello,how low?>からの引用だと思うが、いまの東京の雰囲気と“どれくらい落ち込んでる?”という挨拶と“這う廊”という言葉があまりにも上手く符合していて感動すら覚えてしまう。夢はない、未来もない、誰にもなれないという現実を正面から見つめ、<生きていてください 死ぬまででいいから>(「さよなら」)と歌う篠山浩生(Vo /Gt)のソングライティングも2017年の東京を鋭く捉えていて、これまで以上に冴えまくり。アルバム全体の印象は軽やかでポップというアンビバレンツ具合も素晴らしい。(森朋之)