WEC世界耐久選手権第9戦バーレーンは11月18日、6時間の決勝レースが行われ、最終戦での逆転チャンピオン獲得を目指すクリアウォーター・レーシングの61号車フェラーリ488 GTE(ウェン-サン・モク/澤圭太/マット・グリフィン)はLM-GTEアマクラス2位表彰台を獲得した。戴冠を目指したチームタイトルはレース前の3番手からひとつ順位をあげたものの王座には届かなかった。
チームランキング首位で迎えた前戦の上海ラウンドで不運なアクシデントに見舞われたことで、獲得ポイントを伸ばせずにランキングトップから3番手に陥落してしまったクリアウォーター・レーシング。
チャンピオン獲得のためには2位以上の順位でフィニッシュすることが絶対条件となるなかで迎えた最終戦。舞台となるバーレーン・インターナショナル・サーキットは、ロングストレートからハードブレーキングを強いるコーナーが1周の中に4箇所もあることに加えて、サーキット路面のμが低いためタイヤの消耗が厳しくなることが予想された。
モク、澤の両名にとってはバーレーンは初走行のコースだったが、コース習熟はシーズン序盤から何度も繰り返してきたこともあり、チームとして大きな混乱もなくマシンのチェックや予選シミュレーション、決勝バランスの確認を行なっていくことができた。
前日のフリープラクティスをクラス2番手で終えたチームは、翌日の公式予選もこれまでと同様にオーナーのモク、エースのグリフィンの2名に任せ、トップのアストンマーチン・レーシング、98号車アストンマーチン・バンテージから0.3秒差のクラス2番手、フロントロウを獲得する。
18日(土)17時00分にスタートが切られた決勝レースでは澤が今季6回目のスタートドライバーを担当。スタート直後にポールシッターの98号車アストンマーチンを交わしてトップに立つと、後続が競い合う間にギャップを広げていく。
その後、同じフェラーリ488 GTEを使用するスプリット・オブ・レースの54号車フェラーリが98号車アストンマーチンをパスして迫ってくるが、澤は自身のスティント終盤に再度ペースアップ。ギャップを約3秒まで広げて最初のピットインタイミングを迎えた。
澤から交代したモクは初走行のコースながらコンスタントにラップを重ね、3番手でグリフィンにバトンタッチ。その後、グリフィン、モクとつないだチームは残り2時間でふたたび澤にステアリングを託す。
2回目のドライブを受け持った澤は2番手に浮上していた54号車フェラーリをパスするとピットタイミングの差によって接近した首位の98号車アストンマーチンとの競り合いを制し、見た目上の首位で最後のピットストップに向かう。
最終スティントの担当はグリフィン。チームのエースは跳ね馬に鞭を打ち首位のアストンマーチンを猛追するも1分20秒という差は詰めきれず、結局2位でチェッカー。ランキング首位のアストンマーチン・レーシングが優勝したため、ドライバーズとチームチャンピオンの両タイトルは98号車アストンマーチン(ポール・ダラ-ラナ/ペドロ・ラミー/マティアス・ラウダ)が獲得することとなった。
なお、チームランキング、ドライバーズランキングともに3位で最終戦を迎えたクリアウォーター・レーシングは今戦の2位獲得によりチームランキングをひとつ上げる2位、ドライバーズランキングはレース前と変わらぬ3位で参戦初年度を締め括っている。
■澤圭太「チームも自分もさらに強くなって、チャンピオン奪還を目指す」
「世界選手権という夢のような時間を1年間、無事に戦い終えることができました」語った澤は2017年シーズンを次のように振り返った。
「開幕戦シルバーストンはとてつもない緊張のなかでスタートドライバーを務め、ラストラップの劇的ドラマでいきなり初優勝を飾った。第2戦スパ・フランコルシャンは世界選手権の厳しさを再認識するも、世界屈指の難コースでの3位表彰台を獲得できました」
「自身2度目のル・マン24時間レースは全体としては地に足付けた戦いができたが、表彰台のチャンスを逃すパンクチャーの原因となった接触が悔やんでも悔やみきれません。しかし、クラス5位(WEC参戦組では最上位での)完走でチームランキングトップに立ちました」
「第4戦ニュルブルクリンクではシリーズに慣れてきて、スタートドライバーとして良い走りができたと思います。また、第5戦メキシコは接触で勝負権を失い5位となりましたが自分のスティントではミスなく走ることができました」
「オースティンでは2位でしたが、会心のスタートでトップに立って、首位のままピットに帰って来れたことで自信が付きました。母国ラウンドとなった富士は初めてのポールポジションスタートから優勝目前だったけれど、雨とセーフティカーに翻弄され悔しい2位に……。しかし、チームランキングではふたたびトップに返り咲けました」
「そんななかで迎えた第8戦上海は接触で4位。これでチームタイトル獲得も厳しくなってしまいました。今回の最終戦は来季の参戦継続が発表され、プレッシャーフリーで戦うことができましたが、やはり年間を通して強かったアストンマーチンが速く、我々は望みうるベストの戦いをしたものの届かなかったという印象です」
最後に「チームとしても自身にとっても初の世界戦行脚でしたが“初”が多いなかで客観的に見ても本当に良く戦えたと思います」と総括した澤。
「全9戦で5回の表彰台獲得は自分の与えられた仕事を期待通りに達成できた結果で、自分のレーシングドライバーとしての能力もまだ成長していることを実感しました。世界戦の裏で行なっていたレッスン事業のワンスマ活動との両立は色々な面で本当に苦しかったですが、新しい世界、新しい自分にまた出会うことができたシーズンでした」
今季と同様の布陣で挑む2018/19年のWECについては「来シーズンはチームも自分もさらに強くなって、チャンピオン奪還を目指して頑張りたいと思います」とさらなる飛躍を誓っている。