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豪州SC:最終戦はマクローリンが先勝王手も、ウインカップが意地の大逆転戴冠

2017年11月27日 16:52  AUTOSPORT web

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劇的な週末の逆転劇で、自身7度目のドライバーズチャンピオン獲得を決めたジェイミー・ウインカップ
いよいよ最終決戦を迎えたVASCヴァージン・オーストラリア・スーパーカー選手権は、11月24~26日に第14戦が開催され、ラウンド25で完勝を飾ったスコット・マクローリン(DJRチーム・ペンスキー/フォード・ファルコンFG-X)が選手権首位に躍り出るも、最終ラウンド26でまさかの接触ペナルティ。代わってこの1戦を制したレッドブル・レーシング・オーストラリアのジェイミー・ウインカップ(トリプルエイト・レースエンジニアリング/ホールデン・コモドアVF)が再度の大逆転で、自身7度目の王座を決めた。

 ポイントランキング2位でこの最終戦ニューキャッスル500に乗り込んできたマクローリンは、市街の中心部から海岸線に沿って設けられた名物ストリートコースを舞台に気合いのこもったアタックを見せ、予選ポールポジションを獲得。


 5番手に終わった選手権首位のライバル、ウインカップに対しわずかにポイント差で詰め寄り、決勝に向けプレッシャーを掛けることに成功する。

 その圧力に押されたか、翌日のラウンド25で5番グリッドからスタートを切ったウインカップは、なんとオープニングラップで4番グリッドのニッサン・モータースポーツ、マイケル・カルーソ(ニッサン・アルティマ)と交錯しフロントサスペンションを破損するという緊急事態。

 この修復作業のため長らくピットに留まることを強いられたウインカップは、挽回もむなしく首位から13周遅れの21位。

 対して91周目にトップチェッカーを受けたのは、誰あろうポールスタートのマクローリンで、2.4秒差の2位にチームメイトのファビアン・クルサード(フォード・ファルコンFG-X)を従え、DJRチーム・ペンスキーが盤石のワン・ツーをマークした。

 これでマクローリンは2017年最終ラウンドに向け78ポイント差のリードを築いて、初のタイトル獲得に向け視界良好の日曜を迎えることとなる。

 しかし、そのファイナルレースのスタートからタイトルへの重圧に苦しんだのは、マクローリンの方だった。



 この週末2度目のポールスタートから順調にリードを拡げたマクローリンだったが、レース中に都合3度のペナルティを受ける空回りを演じることとなり、流れはみるみる悪い方へ。リカバーしようとプッシュするたび、自らを窮地に追い込む悪循環に陥ってしまう。

 そのひとつ目のペナルティは最初のピットストップでやってくる。はやる気持ちからレーンへの進入速度を焦った彼のファルコンはわずかに速度制限を超え、これでドライブスルーペナルティ。


 レース序盤の消化となり23番手までドロップしたマクローリンは、トラック上での挽回を試みるべく猛チャージを開始するも、そのアタックが仇となり2度目のペナルティを呼び込んでしまう。

 11番手を争うべくシリーズの紅一点、シモーナ・デ・シルベストのニッサン・アルティマに襲いかかったマクローリンは、バトル中のプッシングから彼女のマシンをスピンモードへと押しやり、このインシデントに対しスチュワードはレース後15秒加算のペナルティを宣告。

 この11番手のポジションこそ、マクローリンの戴冠に向けて“必須”の条件ということもあり先を焦った末のミステイクだったが、その後、2度のセーフティカー(SC)を挟んで彼はふたたびのアタックを敢行。


 90周レースの終盤、70周目を超えたところでデブリ処理のため入っていたSCが去り、最後のリスタートが切られると、レースはアクシデント頻発の混沌とした状況へと発展していく。

 そのカオティックな状況の中心にいたマクローリンは、バーテック・モータースポーツのジェイソン・ブライト(フォード・ファルコンFG-X)とのバトルでお互いにマシンをヒットし続ける熾烈なバトルを展開した末、14番手にまでドロップ。

 その際、ボディワークを破損しタイヤから白煙の上がる状態となるも、そのまま走行を続けると、前を行くスコット・パイ(モービル1HSVレーシング/ホールデン・コモドアVF)、ガース・タンダー(ギャリー・ロジャース・モータースポーツ(GRM)/ホールデン・コモドアVF)、ジェームス・モファット(GRM/ホールデン・コモドアVF)の3台を続けてオーバーテイクし、ファイナルラップを目前にして11位まで挽回。

 しかし、ここでマクローリンは痛恨のミステイクを犯し、この日3度目のペナルティを受けてしまう。

 ウインカップの同僚でもあり、トリプルエイト・レースエンジニアリングが運営するサテライト、チーム・ボルテックスのクレイグ・ラウンズ(ホールデン・コモドアVF)に仕掛けられサイド・バイ・サイドとなったマクローリンは、ターン2への進入でドアを閉め進路を塞ぐ形となり、行き場を失ったラウンズのマシンはウォールにヒットし、スピンモードのままバリアにクラッシュ。 

 左フロントサスペンションとリヤのボディワークが大破するアクシデントとなり、これで再びのペナルティを受けたマクローリンは11番手から18番手までドロップ。

 SCの影響で95周チェッカーとなったそのフィニッシュラインをトップで通過した、RBRAのウインカップが今季4勝目を挙げ、勝利の150ポイントを加算。最終的に18位で終わったマクローリンは21ポイント差で、初のタイトル争いに敗れ去る結果となった。


「僕はレースの早い時点で左のサイドミラーを失っていた。だから彼(ラウンズ)が近くにいるのは分かっていたけど、サイドに迫っていることは見えていなかったんだ」と、レース後に肩を落としたマクローリン。

「僕はターン2へのラインを守っただけで、彼を押しやる意図はまるでなかった。こんな結末は本当にハードだ。応援してくれたみんなに申し訳ない……」

 一方、2位にチームメイトのシェーン-ヴァン・ギズバーゲンを従え、前日のDJRに対しワン・ツーのお返しで劇的なタイトル獲得を果たしたウインカップは、「本当に言葉もない。なんて週末だ。ジェットコースターどころの騒ぎじゃないよ」と、消耗戦の末のタイトル獲得を振り返った。

「チェッカーを受けた時は王座を獲得したなんて思っていなかった。クルーが無線で“君がナンバー1だ”と叫んでくれて、ようやく理解できたんだ。こうして苛酷なレースを展開し、ファンに良いショーが披露できてうれしいよ」

「僕らのマシンは1年を通じて最速だったわけじゃない。でもこれはチームスポーツで、全員のハードワークとメンタリティが勝負を分けた。そのことを心から誇りに思う」と7度目のチャンピオンとなったウィンカップ。

 その他、このレースで引退を表明していたニッサン・モータスポーツのトッド・ケリーは土曜15位、日曜10位で無事完走。チームメイトでもある弟リック・ケリーは日曜4位、同じくマイケル・カルーソが5位と、ニッサン・アルティマ2台がトップ5に入っている。