11月19日に決勝レースが行われた第64回マカオグランプリ・FIA-F3ワールドカップ。このレースにモトパークから参戦した佐藤万璃音が大会を振り返った。
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「最初に結論を言えば、最終結果こそ決勝レース1周目にリタイアに終わったとはいえ、第64回マカオGP・FIA-F3ワールドカップに出て良かった。貴重な経験を積みました」
「2017年のFIA-F3ヨーロピアン選手権(ユーロF3)で所属したドイツのモトパークで今回もシートを確保し、FIA(国際自動車連盟)などに承認され、周囲の後押しも得て参戦にこぎ着けた今年のマカオGP。期待していたとおり“サイコー”のイベントでした」
「マカオGP参戦が今回で5回目というベテランの関口雄飛さんと一緒に、僕は月曜日にマカオ入りしました。小学生のときにマカオのタイパ島で開催されたカート・レースへ来て以来、久しぶりの僕にはとても頼もしい存在」
「また、FIAや主催者が用意してくれた宿は、フェリー・ターミナルから徒歩で10分も掛からないハーバービュー・ホテル・マカオ。各種ショップ、レストラン、コンベンション&エキシビション施設などがある総合娯楽施設の一角です。ただ、近年になって開発された場所なので、マカオらしさはあまり味わえません」
「初めてのマカオGPは、もちろん物事がすべてうまく運んだわけではありませんでした。初日から原因不明のタイヤトラブルに遭って、4日間のタイヤストラテジーで困難を来たしました」
「マカオGPは木曜日に練習走行1回目と予選1回目、金曜日に練習走行2回目と予選2回目、土曜日に10周の予選レース、日曜日に15周の決勝レースが実施されます。マカオGPでは3.5セットの新品タイヤしか供給されないので、この長丁場でのタイヤの使い方がキモとなるからです」
「こうした厳しい条件があるなかで、僕のミスではないにもかかわらず、本来であれば金曜日まで使う予定だったタイヤを捨てざるを得なくなり腹が立ちました。どうにか気持ちを切り替えて練習走行で走り込み、予選もぶつからないように余裕を持ちながら攻めました」
「結果、予選は15番手、予選レースは14位と想定の範囲内の成績を残せました。ここまでは及第点だったと思います。今年のマカオGPの目標は、“クラッシュしない”“可能な限り周回数を重ねる”“あくまで来年に勝負するための準備”だったからです」
「土曜日の予選レース終了後、僕はハーバービュー・ホテルからは少し離れたマカオ旧市街の日本料理屋さんへ関口さんなど一緒に行きました。と誰かに話すと、なぜ、美味しいかどうかも分からない、価格も高い、日本人シェフも居ないような、外国の日本料理屋さんへ行くの? と尋ねられます」
「たしかに、これは失敗と感じるお店はヨーロッパにも少なくありませんが、それも勉強です。ちなみに今回は関口さんがお薦めする店でもあり、大正解でした。お寿司も鶏の唐揚げも稲庭うどんも焼き海苔も納豆も、たいへん美味しゅうございました」
■決勝レースは1周目にクラッシュ。「涙が止まらなかった」
「迎えた日曜日の決勝レース、インスタレーションラップやフォーメーションラップの段階で気を付けなくてはいけないと注意していた場所で、1周目にクラッシュしました。それまで無事故無違反だっただけにショック。かなり落ち込みました。ピットガレージへ戻るとチームのスタッフは気遣いを感じられる言葉を掛けてくれ、涙が止まりませんでした」
「過去2シーズンのイタリアF4や今季のユーロF3に参戦していたときには一度も現場へ姿を見せなかった両親も、今回のマカオGPには揃って来てくれました。でも、自分が最後まで走り続ける姿をふたりに見せられませんでした」
「ユーロF3最終戦を終えてマカオGP前に僕は、来季に向けてイギリス・シルバーストン、オランダ・ザントフールト、ドイツ・ニュルブルクリンクなどでテストに勤しみました。マカオGPに向けては、牧野任祐選手とハンガリー・ハンガロリンクのテストへ赴きました。しっかり準備してきたはずなのに、マカオGPを最後まで走りきれなかったのは悔やまれます」
「しかし、初めてのマカオGPを終えて1週間が過ぎ、ようやく気持ちの整理がつきました。18歳の誕生日を迎えてしばらく取り損ねていた自動車運転免許証を取得するため、日本へ戻って自動車教習所に通い始めました。12月に入れば来季のユーロF3参戦に向けた、スペインやポルトガルでのテストも始まります」
「アニメやライブを楽しむ機会もかなり限られ、東京・秋葉原や首都圏の美味しいラーメン屋さん巡りもできないツライ毎日が続きますが、“2018年の佐藤万璃音はちょっと違う”という姿をご覧いただけるよう、このシーズンオフは自分の力を1000%レースに傾けるよう努めます。来季もご支援、ご声援をよろしくお願い致します」