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F3マカオGP初挑戦の佐藤万璃音。トラブルを抱えながらも「ひとつひとつ課題をクリアできた」

2017年11月27日 12:02  AUTOSPORT web

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マカオグランプリ初挑戦となった佐藤万璃音(さとうまりの)/モトパーク
2017年シーズンよりFIA F3ヨーロピアン選手権に参戦している高校生ドライバー、佐藤万璃音は11月16~19日に開催された“F3世界一決定戦”『第64回マカオグランプリFIAF3ワールドカップ』に初挑戦し、不運なアクシデントに見舞われながらも所期の目標を概ね達成した。

 フォーミュラカーでのレースキャリア3年目を迎えた万璃音は今シーズン、モトパークからヨーロピアンF3に新規参戦を果たし、スパ・フランコルシャン、ニュルブルクリンクなど自身初走行となるサーキットも多数あるなかで着実に経験を積み上げてきた。

 そんな万璃音はレギュラーシーズン終了後、マカオ市街地に設けられたギア・サーキットを舞台に開催される伝統のマカオグランプリに、シーズンをともに戦ったモトパークから初参戦。F1への登竜門として知られる伝統の一戦に挑んだ。

 走行初日となった16日(木)午前の練習走行1回目、万璃音は初めてのコースを習熟すべく15周をラップ。そのなかでクルマに違和感を覚えていた万璃音のコメントを受けたチームはクルマを入念にチェックした。その結果、左リヤタイヤの内側ショルダー部が内部膨張を起こしていることが判明。

 チームと万璃音はFIA国際自動車連盟、タイヤサプライヤーにこの異常を伝えた上で新品タイヤの追加供給を求めたが、「原因不明で新品タイヤの追加供給は認められない」という判断によって要望は棄却されてしまう。

 不具合の起きたタイヤは17日(金)の練習走行2回目でも使用する予定だったが、万璃音とチームはこのタイヤの放棄を余儀なくされ、4日間で3.5セットという制約があるなかで初日からライバルに対してハンデを背負うことなった。

 初日午後に行われた予選1回目を17番手で終えた万璃音は、翌17日の練習走行2回目では13周を周回。左側2輪にニュータイヤを装着しながらセッティングを調整し、午後の予選2回目に備える。

 迎えた予選2回目では新品タイヤ4本を投入してタイムアタックを実施。自己ベストとなる2分12秒558をマークして日本人ドライバー6名中3番手となる予選レースの15番手グリッドを獲得した。

 18日(土)に行われた予選レース。15番手グリッドからレースを開始した万璃音はスタート直後のライン取りで苦戦。実質的な1コーナーとなるリスボア・ベントに順位を落としてしまうが、その後は落ち着いた走りを披露し、グリッド順位からひとつポジションアップの14位でチェッカーを受けている。

 マカオGP最終日、直前まで降っていた雨によって、ところどころで路面が濡れているなかで行われた決勝レースは万璃音にとって悔しい結果となった。

 14番手からスタートした万璃音は順調な滑り出しで海側区間からリスボア、そして山側区間へと入っていく。しかし、その山側区間から海側へ向かう起点となるメルコ・ヘアピンの立ち上がりで雨に濡れた路面に足をすくわれクラッシュ。ガードレールに車体を打ち付けたことで走行不能となり、リタイアを余儀なくされてしまった。

「路面が濡れていて気をつけないといけないと思っていたその場所でコントロールし損ないました」と決勝日のアクシデントを振り返った万璃音。

「それまでの3日間、“遅くてもいいから絶対にクルマを壊すな”と周囲から聞かされ続け、その言葉の意味を理解しはじめていた直後だけに、あのクラッシュは心に刺さりましたね」

 初日に発生したタイヤトラブルについては「練習走行1回目のタイヤトラブルについて、最初から自分のミスを疑われてやりきれない思いでした。当然怒りを覚えましたし、不満を募らせましたが『これくらいで負けてたまるか!』と気持ちを切り替えました」と語った。

 タイヤの配分でライバルに対してハンデを負った2日目以降は、まっさらな気持ちで挑んだという万璃音。

「2日目の練習走行2回目ではクルマの調整とコースの習熟に専念し、初日のデータと見比べながら、ここはタイムを縮めようというポイントを決めていきました。その甲斐あって予選2回目ではそのポイントでの走りがだいぶマシになりましたね」

「自己ベストを出したラップはリスボア・ベンドで左後輪がすでにグリップを失いつつあったのですが、これが最後のチャンスだと思い、狙ったところできちんとタイムを出せたのは収穫でした。もう少し上の順位だったらうれしいけれど、初のマカオGPでひとつひとつ課題をクリアできたと思います」

 3日目の予選レースは「スタートの出足だけは路面の状態を考えれば結構良かったです」とコメント。

「しかし、マンダリンへ入った段階で自分の位置が分からなくなり、1台に抜かれてしまいました。コースの内側から外側へクルマを振り、リスボア・ベンドで抜き返そうとしましたが失敗。その後は予選レース終盤にもう一発プッシュするためにできるだけリヤタイヤを労わって走り、レース後半に1台を抜きました。それでもタイヤの消耗は予想以上に進んでいました」

「決勝レースは不甲斐ない結果に終わりました。周回数を重ねるという課題は3日目まで無事故でほぼ達成できたものの、一度もクルマを壊すことなく走りきるというもうひとつの課題はクリアできませんでした」

 万璃音にとって2017年のマカオグランプリは0周リタイアという悔しい幕引きとなったが、18歳の侍はすでに来季のヨーロピアンF3に向けて準備を進めている。

「終わったことをいつまでも悔やんで、落ち込んでいるわけにはいきません。来たる12月にはポルトガルやスペインでテストを再開します。2018年のユーロF3に向けていち早く準備を重ね、2018年の第65回マカオグランプリ・FIA F3ワールド・カップに必ず戻ってきます」とリベンジを誓った。