2017年11月27日 10:32 弁護士ドットコム
自宅前の道路で男性を突き飛ばしたとして、大阪府堺市の男性(79)が11月8日、傷害の疑いで逮捕された。自宅前の私道を自転車で通行した男性を押し倒したという。
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報道によると、自宅前の私道をめぐって、男性は度々トラブルを起こしていた。この道路は周辺住民が共同で所有するものだが、男性は自宅前に白いペンキで「私有地」と書き、通行人を怒鳴りつけていたという。
今回は傷害の疑いだが、そもそも私道であった場合、不特定多数の通行を阻止しても問題ないのか。関戸淳平弁護士に聞いた。
私道であった場合、不特定多数が通行することはできないのか。
「『私道』は、文字どおり私人が所有する通路のことです。本来であれば、私道は所有者だけ(共有であればその共有者だけ)しか使用できません。所有者が通路を塞いだり『私有地』と書いたりして他人の通行を認めないことも自由です。他人は所有者に無断で通路を通行することはできません。
ただ、この原則を貫くと、公道からの出入りが不可能となるなど、国民生活に支障がでます。そのため、法律や解釈によって、通路の所有者の権利が制限される場合があります」
具体的には、どういった場合に制限されるのか。
「例えば、私道であっても、建築基準法上の道路とされている場合には、その道路の変更や廃止は制限されます。
また、私道の所有者がむやみに他人の通行を妨害することは、『所有権の濫用』と判断されることがあります。回りくどい言い方になりますが、他人に『通行権』が正面から認められるわけではなく、『所有権の行使が制限される結果として、他人であっても通行できる』ということになるのです」
今回の事件の現場となった道路の場合、どうだろうか。
「今回の事件でも、報道されている通路の形状や所有形態からすると、所有者が他人の通行を阻止することは、権利の濫用となる可能性が高いと思います。
なお、私道の所有者にどのような権利があったとしても、暴力などの実力行使によって他人の通行を阻止することは違法であり、傷害罪や往来妨害罪などの刑事責任に問われることになります」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
関戸 淳平(せきど・じゅんぺい)弁護士
中央大学法学部卒。2004年弁護士登録(横浜弁護士会)。2009年より横浜ユーリス法律事務所パートナー。不動産売買、賃貸、マンション問題、相隣問題等、不動産に関連する事件を数多く手がけている。
事務所名:横浜ユーリス法律事務所
事務所URL:http://www.jurislaw.jp/