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“ポカリ・ガール”天野菜月はポスト綾瀬はるか? 『ラブホの上野さん』『氷菓』でみせた存在感

2017年11月26日 12:02  リアルサウンド

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 現在放送中のフジテレビ系列ドラマ『ラブホの上野さん season2』で、五反田キングダムと並ぶもうひとつの舞台、主人公たちが足繁く通う喫茶店「むちゃカフェ」のアルバイト店員・里帆として登場した天野菜月。まだキャリアの浅い新人女優の彼女だが、なんだかとても気になる存在だ。


参考:山崎賢人×広瀬アリス『氷菓』、実写とアニメはどう違う? “目で語る”役者らの演技を考察


 本郷奏多演じるミステリアスな「上野さん」が、柾木玲弥演じる一条をはじめ、モテない男性陣に恋愛指南するという、バラエティ仕立てのこのドラマ。『Season2』に入ってからは、視聴者に語りかけるという、“第四の壁”を破る手法が目立ち始めている。そんな中で、天野演じる里帆は、上野に協力して“第四の壁”を破る店長の室田(聡太郎)に鋭いツッコミを入れる、というのが主な役割だ。


 15日深夜に放送された第6話では登場シーンはなかったものの、それ以外のエピソードでは毎回わずかな出演シーンで存在感を見せつける彼女。第5話では、フランスに旅立った恋人に想いを馳せる一条に、横から茶々を入れるなど、着実にその役割を増やしつつある。主演の本郷奏多を筆頭に個性の強いキャラクターが集うこのドラマで、大きな見せ場が与えられずに印象的な芝居を見せるというのは、なかなかの素質が窺える。


 本作の主演を務める本郷は、天野と同じ事務所の先輩。多くの若手女優を抱える同事務所の中で、彼女はとくに注目の存在だということなのだろう。実はこの2人の組み合わせ、現在公開中の映画『氷菓』の中でも見ることができる。


 こちらで天野が演じているのは、物語のキーパーソンとなる女子生徒。学園の闇に葬られた事件を、現代の高校生たちが解明していく物語の中で、彼女は33年前の回想シーンに登場する。体制に反対する学生たちが引き起こした火事に巻き込まれ、すぐそばで火薬が爆発。鼓膜を痛めて倒れこんだところを、本郷演じる関谷純に助けられるという、またしても登場時間の少ない役柄なのだ。


 しかし、彼女の役柄が現代パートで斉藤由貴演じる糸魚川養子の高校時代だということが明らかになると、その重要さは一目瞭然である。まさに、作品の本題ともいえる謎を、すべて知っている当事者ということになるのだ。学校から去っていく関谷の姿を、校舎の窓からただ見つめることしかできずにいる彼女の表情。できることならもっと彼女の登場シーンを見てみたいと思わずにはいられない。


 天野といえば、坂井仁香やマーシュ彩、松岡花佳がグランプリを獲得した「ミスセブンティーン2015」の最終選考22人に選ばれ、2016年にいきなり“ポカリ・ガール”に大抜擢された経歴を持つ。とはいえ、これまで多くの大女優が輩出されてきたテレビCMではなく、東京マラソンに合わせたWEBムービー「東京サプライ少女」という、別路線でのデビューとなった。


 それでも、この3分ほどのWEBムービーで彼女が見せる溌剌とした魅力は唯一無二だ。ポカリスエットが入ったタンクを背負いながら、とにかく走り、時には手すりを滑り降りたり宙返りをしながら、ランナーたちにポカリスエットを配ってまわる。このアクティブでフレッシュな姿は、これまでのどのCMをも上回るほど、商品のイメージを体現している。


 まだ垢抜けない感じが残る彼女だからこそ、これから伸びていく可能性は存分に秘められている。登場時間の多いメインキャストとして、彼女の活躍が観られるのも、そう遠いことではないのではないだろうか。いずれは綾瀬はるから歴代のポカリ出身女優たちに匹敵する逸材へと成長してくれる予感がしている。


■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。