2017年11月26日 11:03 弁護士ドットコム
死刑のない国が主流になる一方、国会議員の間では議論すら難しくなっているーー。日弁連主催の死刑制度を考えるシンポジウムが11月20日、都内で開かれ、法務大臣経験者2人を含む弁護士出身の元国会議員3人が、「死刑制度の議論をしたら、選挙がどうなるかわからない」などと議員の心理を語った。
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アムネスティ・インターナショナルによると、2016年12月末時点で死刑を廃止している国は141カ国(韓国など実質廃止の国も含む)。2000年には108カ国だったが、2000年代に大幅に増えた。
一方、死刑を続けている国は、中国やシンガポールなど57か国。先進国グループであるOECD加盟国に限定すれば、日本とアメリカ(23州は実質廃止)のみだという。
国連総会でも、死刑廃止を求める決議案がたびたび採択されており、日本に対する視線は厳しいという。しかし、国会議員の間で、死刑問題についての議論はむしろ後退しているそうだ。
「死刑ではっきり物事を言うのはリスクになる、という議員心理がある」と語るのは、衆議院議員を引退したばかりの漆原良夫氏(現公明党顧問)。漆原氏は、超党派の「死刑廃止議連」に所属し、終身刑の新設などを議論していた。しかし、最盛期は100人ほどいたメンバーが現在は30人程度になり、活動が停滞しているという。
野田佳彦内閣で法相を務めた平岡秀夫氏(元民主党衆院議員)も、在任中の執行はなかったが、一部の支援者から「死刑を執行しなかったら、応援しませんよ」と言われたことがあると明かした。
小泉純一郎内閣で法相を務めた杉浦正健氏(元自民党衆院議員)は就任直後の記者会見で、「死刑は執行しない」と話し、物議を醸した。当時は死刑について特別な考えがあったわけではなく、「急に話を振られたから」からだという。しかし、騒動をきっかけに、死刑制度について調べ、結局サインをしないまま任期を終えた。
杉浦氏は、「(法相就任当初の)私みたいに、死刑についてあまり考えていない政治家は多いのではないか。役所は説明してくれない。議員に対する情報が不足している」と述べ、議連の縮小も、情報不足に拍車をかけていると語った。
2014年の内閣府の調査によると、死刑を廃止すべきとする国民は1割。一方、やむを得ないとする人は8割もいる。しかし、終身刑の導入を前提とした問いでは、「廃止した方が良い」が37.7%、「廃止しない方が良い」が51.5%と、両者の差は縮まる。
死刑制度を議論すれば、被害者や遺族の感情、予算の問題など、大きな反発も予想される。それでも平岡氏は、「世界を見たら、なおさら議論しないといけない」と強調した。
(弁護士ドットコムニュース)