2017年11月26日 11:03 弁護士ドットコム
ネット掲示板「5ちゃんねる」は11月12日、ルール違反をした「まとめブログ」運営者への対応を変更した。違反があった場合、DMCA(デジタルミレニアム著作権)侵害として申し立てるという。
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5ちゃんが設けている「まとめブログ」の主なルールは、(1)ステマの禁止、(2)レスの捏造、改変の禁止(個人情報の伏せ字化などは可能)、(3)嫌儲板のまとめ禁止、(4)元スレへのリンクを貼ること。
ルールを守れば、コンテンツ使用を許諾する一方、無断使用は著作権侵害などになるとして、DMCA侵害として申し立てるとともに、民事・刑事による法的対応もとるとしている。
ネット上では、流入や広告がなくなる可能性があるため、「アフィ(アフィリエイト)ブログ死亡」などと騒がれている。DMCAとは一体なんなのか。そもそもこのルールに従う必要はあるのだろうか。田中一哉弁護士に聞いた。
ーーDMCAって何?
「米国の著作権改正法の1つで、デジタルコンテンツの保護を目的とした広範な規定を備えています。著作権者は、この法律に基づいて、プロバイダや検索エンジンに対し、違法なコンテンツの削除を申請することができます」
ーー侵害の申請をされるとどうなる?
「申請を受けたプロバイダ等は、当該申請が形式的要件を備えている限り、対象コンテンツを削除することになります。このように、形式審査のみで、迅速に削除が行われる点がDMCAの特徴です。
もっとも、DMCAは米国の法律ですから、日本国内のプロバイダを直接拘束しません。しかし、グーグルは、日本国内からも、DMCA申請を受け付けています。そのため、国内のサーバ上に置かれたまとめブログであっても、グーグルへのDMCA申請により、いわゆる『グーグル八分』の状態に置かれる可能性があります」
ーーつまり、検索エンジンからの流入や広告収入(Google AdSense)などが望めなくなり、ダメージを受ける可能性があるようだ。このほか、民事・刑事での対応を考えているようだが…
「民事上の法的措置として、まとめブログ管理者に対する、侵害行為等の差止請求、損害賠償請求、不当利得返還請求、信用回復措置請求などが考えられます。また、刑事上の措置としては、まとめブログ管理者を、著作権侵害を理由に告訴することが考えられます。
ただし、民事では、まとめブログの管理者を特定することが必要になります。そのため、相手方が特定できているケースに比べ、裁判に時間がかかることが見込まれます。一方、刑事については、捜査機関にやる気さえあれば、民事よりも迅速な事件処理が期待できます」
ーーそもそも、5ちゃんねるの書き込みは、投稿主に著作権があるのでは?
「いいえ。著作権者は、5ちゃんねるの運営会社(Loki Technology, Inc.)になります。投稿者は、5ちゃんねるに、無償で著作権を譲渡することを承諾した上で、書き込みを行っているからです」
ーー確かに、知的財産権などを「無償で譲渡すること」に承諾しないと書き込めない仕組みになっている。だとしたら、違法な書き込みがあった場合、5ちゃんねるが悪いということにならないのか?
「実際のところ、5ちゃんねるが、書き込みについて、責任を負うことはほとんど無いでしょう。プロバイダ責任制限法によって、掲示板管理者の責任が制限されているためです。
具体的には、『書き込みによって他人の権利が侵害されていることを知っていたとき』あるいは『書き込みを知っていた場合であって、その内容の流通によって他人の権利が侵害されていることを知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるとき』にのみ、5ちゃんねるに法的責任が生じます(同法3条1項)。なお、その場合でも、投稿主は免責されません」
ーー著作権は5ちゃんねるにあるが、書き込み内容については投稿主が責任を負うというわけだ。でも、「引用」ならば、いちいち5ちゃんねる側の指示に従わなくても良いのでは?
「確かに『引用』であれば、許可なく自由に行うことが可能です(著作権法32条1項)。ただ、そのような『適切な引用』と認められるためには、『引用者の叙述部分が主で、引用部分はその従に過ぎない』という関係が必要です。しかし、まとめブログの多くは、固有のメインコンテンツを保有しておらず、この要件を充足していないと考えられます。
著作権が5ちゃんねるにある以上、書き込みの『転載』には、その許可が必要になります」
ーーつまり、5ちゃんねるが、ルールを守ることを「許可」の条件にしている以上、まとめサイトはこのルールに従わないといけないようだ。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
田中 一哉(たなか・かずや)弁護士
東京弁護士会所属。早稲田大学商学部卒。筑波大学システム情報工学研究科修了(工学修士)。2007年8月 弁護士登録(登録番号35821)。現在、ネット事件専門の弁護士としてウェブ上の有害情報の削除、投稿者に対する法的責任追及などに従事している。
事務所名:サイバーアーツ法律事務所
事務所URL:http://cyberarts.tokyo/