マクラーレンのエンジニアリングディレクターを務めるマット・モリスによれば、ルノーのPUはホンダとまったく異なるレイアウトとなっているため、クラッチとギヤボックスの設計をやり直すという。さらに、冷却システムも大きく見直す必要があるという。
では、ホンダPUを搭載することなるトロロッソはどうか。ホンダの仕様を確認したトロロッソのあるエンジニアは「コンパクトさに驚いた」という。ホンダの長谷川祐介総責任者も次のように語る。
「われわれ(ホンダとトロロッソ)はそんなに苦労していません。というのも、ホンダのPUのほうが(ルノーよりも)コンパクトになっているので、車体側の開発の自由度は広がっているからです。逆にマクラーレン側は苦労していると聞いています。ただ、いずれにしてもこのタイミングでパッケージを変えるのは、かなり大変な作業となっているのは確か。ホンダもルノーのレミ・タフィンもチームには『もうエンジンの骨格はいじれないよ』と言っています」
最終戦アブダビGPの後には、2018年型のピレリタイヤの評価を目的としたタイヤテストが2日間の日程で行われる。2015年から参戦することになっていたホンダは、3年前のアブダビテストからマクラーレンと組んでテストに参加した。今回、ホンダはこのテストでトロロッソと組むことは可能なのだろうか。
「マクラーレンとの契約が11月末まであるので、それまでは他チームとのテストはできないことになっています」
では、ホンダのPUがトロロッソと合体するのは、いつごろになるのだろうか。
「年内ぐらいにはわれわれのキーとなるギヤボックスのテストは HRD SakuraかHRD MKのいずれかのダイナモでやろうと思っています。エンジンとギヤボックスは今年の仕様です。今年、課題となっていた駆動系のねじり振動を確認するためです。われわれにとってはギヤボックスのマッチングはとても重要ですから」
このねじり振動の確認は、今シーズン序盤にオシレーション(共振)に悩まされたホンダにとって、重要なテストである。エンジン、ギヤボックス、タイヤなど駆動系にはさまざまな振動がある。したがって、共振もまた必ず発生する。問題はその共振をどのように逃すか。通常はエンジンとギヤボックスの間にインプットシャフトを入れることで共振を逃す。
今シーズンのホンダもマクラーレンのギヤボックスとの間にインプットシャフトを入れていたが、シーズン序盤のホンダのエンジンはある回転域で燃焼が不安定になる悪癖を抱えていたため、その瞬間に予期せぬ振動が発生し、共振を起こしていた。こうした反省も踏まえて、来季へ向けて、ホンダはこの共振の対策に力を入れている。
順調に進んでいるホンダとトロロッソの関係だが、来季に向けて1点だけ、まだ決まっていないことがある。それは燃料とオイルのサプライヤーだ。
今年からホンダはBPカストロールを使用しているが、現在トロロッソが使用しているのはエクソンモービル。決定にはスポンサー料などが関係しているため、チーム側の政治的な要素のほうが大きな割合を占める。だが、燃料はエンジンの燃焼に関わる重要なアイテム。それがまだ決定していない。
「今年、BPカストロールに変更したときは、BPカストロール側がわれわれの意向に沿った燃料を開発し、供給してくれました。燃料というのは燃焼の根幹なす大切なもので、エンジン開発のベースになるので、どちらになるにしても早く決まってほしい」
燃料&オイルのサプライヤーはどこになるのか? それがトロロッソ・ホンダの最大の注目点だ。