今週末に開催される第14戦ニューキャッスル500を残し、2017年シーズンも大詰めを迎えたVASCヴァージン・オーストラリア・スーパーカー。2017年、ルーキー・シーズンを過ごしたニッサン・モータースポーツの元インディカー、フォーミュラEドライバーのシモーナ・デ・シルベストロが自らの1年を振り返り、来季の確実な進歩に向け期待を語った。
スイス出身で現在29歳のシモーナ・デ・シルベストロは、シングルシーターのフォーミュラ・カテゴリーで頭角を現し、北米インディカーでは表彰台獲得経験を持つ他、F1ではザウバーのリザーブドライバーも務め、近年はアンドレッティ・オートスポートでフォーミュラEにも参戦するなどトップドライバーとしてのキャリアを築いてきた。
そんな彼女が2017年の主戦場に選んだのは、オーストラリア大陸の人気ツーリングカーカテゴリーだった。
そのルーキーイヤーも残すところ1戦となり、自身の1年を振り返って「アベレージとしては悪くない初年度だった」と語った。
「もちろん、初めてのことだらけで浮き沈みはあったけど、ドライバーとしては大きく進歩できたと思う。リザルト的には望むレベルに達しているとは言えないけどね」とシモーナ。
これまでフォーミュラをドライブしてきたシモーナにとって、重量があり視界も制限されるツーリングカーのドライブは、それ自体がドライバーとしての次なる挑戦だったというが、その進化に必要なポイントも、すでに見えてきているという。
「自分自身、そう思っているの。例えば、先日のニュージーランド戦ではとても力強いペースを維持することができた。マシンも私もとても速かった。でも、一番の違いを生み出す最大のポイントは予選の1ラップに尽きる。その点こそ、2018年に向けて改善すべき最大のポイントで、20番手から上位に進出するのは本当に難しい仕事なんだと学んだわ」
しかし、自身のフル参戦3戦目となるパースでは予選14番グリッドながら、チームメイトのリック・ケリーやマイケル・カルーソをオーバークオリファイし、そのスピードの片鱗を見せつけてもいる。
「そう、それが私のドライビングとマシンのセットアップ、そして各セクターベストが揃った最初の予選だったと思う。同じようにニュージーランドでも、セクターベストを繋げばあとコンマ2秒はタイムアップできたし、同じように先輩たちを“仕留めて”ニッサンで最速のグリッドを確保できていたはず」
「彼らのように、トラックのレイアウトを含めて経験のあるドライバーたちは、最後の最後でその詰めが可能になる。一番大事な予選ラストアタックのタイミングでね。私はシングルシーターのクリーンな予選ラップに慣れていて、他のマシンがごった返すなかで、その最後のコンマ数秒を絞り出し、合わせ込む作業に免疫がなかった。この1年で学んだ大きなポイントがそこね」
すでにスーパーカーのマシンを知り尽くしたニッサン・モータースポーツ、ケリー・レーシングのチーム内には確立されたセットアップ哲学が存在しているというが、そこに正解はなくドライビングスタイルによって最適解は千差万別。以前に経験した方法とは全く異なったやり方も学ぶこととなった。
「そう。それは完璧に違っていた。誰もが異なったセットアップの好みを持っているし、初めてのマシン、初めてのカテゴリーの場合、何が正解かを求めるのは本当に難しい。たとえ全然違う好みのセットでも、必ず一度立ち止まって『これが私をより速くするか、それとももっと快適な方向を追求するか』と、問いかける必要がある」
「それを理解し、クルマの細部まで神経を行き届かせてドライブするには、プラクティスの量と経験がモノを言う。当初は私もそこまでの理解がないままドライブせざるを得なかった。でも今は詳細についてひとつひとつチェックボックスを入れ、すべてを把握した上でドライビングできている。それが大きな改善ね」
そうしたマシンへの理解と同様に、シリーズに組み込まれる各サーキットのトラックを経験したのも、来季に向けての明るい材料となる。
「私にとっての今季のハイライトは間違いなくバサースト1000。ワイルドカード枠で過去2回の参戦経験(フォード・ファルコンFG-Xをドライブ)があるだけで、レースでは簡単に上位で走ることが可能になった。最後にスピンしてそれを台無しにするまではね(笑)」
「望んだようなリザルトにはならなかったけど、このスーパーカーのマシンを速く走らせることができると証明できたのは、本当に良い瞬間だった。マシンを理解し、トラックを知り、周囲の物事がどのように機能しているかを把握していると、自分にとってすごく楽になることがわかった。来年はそれが機能してくれることを願っているし、本当に楽しみにしているわ」
こうしてシモーナが来季に向け抱負を語ったのと対照的に、ニッサン・モータースポーツとして参戦し、ケリー・レーシングの共同オーナーとして自らもニッサン・アルティマのステアリングを握ってきたトッド・ケリーが、この最終戦を最後にシリーズからの引退を表明。
同様に、グリッド最年長44歳のジェイソン・ブライトも、プロドライブ・レーシング・オーストラリアとともに戦う最終戦を最後に、30年に及ぶキャリアに幕を引く決断を下したと発表している。