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風光ル梟が語る、グループの使命と音楽的な個性 「シーンに新しい風を吹かせる」

2017年11月24日 13:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 平均年齢15歳の4人にプレーイングプロデューサーのMisakiを加えた5人組ダンスアイドルユニットの風光ル梟が、11月22日にミニアルバム『風光ル梟』でメジャーデビュー。結成半年にもかかわらず、『TOKYO IDOL FESTIVAL』『@JAM EXPO』など大型アイドルフェスに出演して注目を集める他、Misakiは動画再生回数1000万回以上を記録して2012年にデビューしたDancing Dollsのメンバーとして活躍した経歴を持つ。楽曲は、加藤ミリヤなどを手掛ける3rd Productionsがトラックを提供。王道アイドルの可愛らしさを持ちながら、R&B/ヒップホップのイズムを継承する風光ル梟とは、一体どんなグループなのか?(榑林史章)


・ダンドルのキレッキレのダンスを継承


ーー現在リリースイベントを開催中ですが、その一発目となった11月11日のタワーレコード渋谷でのライブは、お客さんも盛り上がっていましたね。どんな手応えでしたか?


山崎カノン(以下、山崎):少し緊張しましたけど、とても楽しかったです。


植木美心(以下、美心):たくさんの方が来てくれて、曲をやるごとに立ち止まってくれる方も増えていって、すごく嬉しかったです。


大西凜(以下、大西):初めて見てくださった方も多くいらっしゃったので、その方たちにも楽しんでいただけたと思います。


植木琳美(以下、琳美):終わったとき、みなさん「バイバイ」ってやってくれて。それで初めてホッとした感じです。


ーーMisakiさんは、プレーイングプロデューサーということで、ステージ脇からメンバーを見守っていましたが、具体的にはどういった役割りですか?


Misaki:私はDancing Dollsをやっているときから、アイドルをプロデュースすることに興味を持っていて。普通のプロデューサーなら、こうやって表には出て来ないと思いますけど……実際にステージに立っていたからこそ、みんなの気持ちが分かったり、意見できることがあると思うので。より現場に近いところから、グループをプロデュースしていくという立場ですね。


ーーメンバーの決定にも関わっていると思いますが、メンバーはどのようにして選んだのですか?


Misaki:美心とカノンは、2015年にDancing Dollsに加わったメンバーでもあって、Dancing Dollsは今も続いているのですが、そこからの派生ユニットといった形で最初は始まりました。そこへ美心の妹であるこりん(琳美)が加わり、りんりん(大西)はオーディションで入りました。


ーーMisakiさんが作るグループとして、イメージや基準はありましたか?


Misaki:まずフレッシュさ。こりんは13歳、りんりん14歳ですから。パフォーマンスの点では、ライブに対する意識の高さです。全員ダンススクールで学んできたダンス経験者なので、ダンスのクオリティとポテンシャルの高さは、私が太鼓判を押します。


ーーみなさんダンスや歌は、どのくらいやっていたのですか?


山崎:私は小2からやっていました。だから10年くらいだと思います。


美心:私は小学1年生のころに広島アクターズスクールに通っていて。一時期離れていましたが、小学校6年のときにまた入り直して今に至っています。


大西:私は小1から石川県のアクターズスクールに入って。


琳美:私は小5の終わりから広島アクターズに入りました。


Misaki:りんりんはダンスを始めて2年くらい、風光ル梟としての活動を始めてまだ半年ですが、その分吸収力がすごいです。みんなと切磋琢磨しながら、どんな風に成長していくのか楽しみです。


ーーダンスがグループの軸にある、と。みなさんが好きなアイドルも、やっぱりダンスが上手いグループでしたか?


大西:ダンスだけではないですね。私は私立恵比寿中学さんが好きなのですが、小学生のころにDVDを見て「キタ~!」と思いました。全員個性が違うし、ライブのパフォーマンスも格好いいのに面白い部分もあって。似ている人が誰もいないし。私もエビ中さんのようになりたいって思いました。


琳美:私は、ひめキュンフルーツ缶さんです。小さいころにライブを見たことがあって、歌が上手くて可愛くて。そのときにいただいたクリアファイルは宝物で、ずっと持っています。風光ル梟に入って活動を始めてから、イベントで一緒になる機会があって。そのときは、本当に感動しました。


山崎:私は、小さいころからいきものがかりさんが大好きです。小2のときにドラマ主題歌を聴いて、すごいなと思って。明るいポップな曲もあればバラードもあって、まったく違った声で表現する吉岡聖恵さんは、本当にすごいです。あと、オールナイトニッポンなどのラジオではおしゃべりもとても上手くて、私はMCで話すのが苦手なので、見習うところがたくさんあります。


美心:私は、モーニング娘。の鞘師里保さんです。スクール時代の先輩で、私が小1のとき鞘師さんが小4で、そのときから鞘師さんのダンスはすごくて、それ以来ずっと背中を追いかけている存在です。本当に格好良くて、尊敬します。


大西:私たちがアイドルに憧れて風光ル梟を結成したように、いずれ風光ル梟を見てアイドルになりたいと思ってくれる人が出てきたら嬉しいです。その人が頑張ってアイドルなったときに、がっかりされないように私たちも頑張りたいです!


ーーアイドルには、ダンスや振り付けは必要不可欠な要素。たいていのアイドルは可愛い振り付けですが、みなさんはダンスが激しくてカロリー消費がすごそうですね。


山崎:Dancing Dollsでもキレッキレのダンスを披露していたMisakiさんが、ダンスの振り付けをしてくれていますからね。ヒップホップ系のダンスで難易度が相当高くて、ついていくのに必死です。


Misaki:アイドルだけど男勝り、みたいな激しいダンスもあるので、そこはみんな毎回必死に頑張ってくれています。


美心:でも、全部がゴリゴリにというわけではなくて、途中でガラッと雰囲気が変わるところもあって。そういうところは、ある意味で見せ場だし、他のアイドルとは違うなって思ってもらえるところだと思います。あと、お客さんとの一体感も心がけていることのひとつで、たとえば「梟伝説」という曲で<ho ho ho ho>と歌うところは、ふくろうが羽ばたく様子をイメージした振り付けをみんなにもやっていただいています。


山崎:まだ結成して半年なので、一体感はまだまだかもしれないですが、そこはもっと伸ばしていきたいと思っているところです。


ーーダンスレッスンでは、Misakiさんからどのようなことを教わっていますか?


大西:私はみんなよりダンスがまだまだで、付いていくだけで大変なところがあって、家でも自主練をやるようにしていて。でも、Misakiさんはできないからって怒ったりしないで、しっかり指導してくれます。


琳美:Misakiさんの振り付けは、普通のダンスじゃなくて少し演劇っぽいと言うか。初めて踊るダンスばかりなので、毎回すごく楽しいですよ。


Misaki:演劇じゃないんだけどね(笑)。それは、歌詞に合わせた動きをする、「歌振り」と呼ばれるもので。歌詞の言葉や意味を意識して、振り付けしているんです。それに、ただ動きが揃っているだけではなくて、顔の表情も揃って初めて1個の作品が完成する振り付けだと思っています。無表情で踊っても伝わらないので、表情でも表現すると言うか。ミュージカル調というか。そういう部分は、すごく意識しています。


ーーでも、激しく踊っていると、ついしんどい顔になりますよね?


美心:しんどい顔をしたら、あとでMisakiプロデューサーに怒られるので必死です(笑)。


ーーMisakiさんは、そんなに怖いんですか?


美心:怒られるのは冗談ですけど、顔だけはしっかりしろって言われます。


山崎:撮影OKのライブもあるので、そういうときはより意識して笑顔を保つようにしていますね。


Misaki:変な顔をしていると、写真を撮られてSNSですぐ拡散してしまうし。どんなに体が疲れていても、笑顔でいる。それがプロだと思うので。


大西:一瞬も気を抜けないです!


ーー“風光ル梟”とグループ名は、最初はどう思いましたか?


植木美心
美心:「かっこいい!」って思いました。名前だけで気になってもらえると思うし。


大西:他のグループと絶対にかぶらない名前だし、いろんな名前が並んでいるなかで絶対に目立つ。


山崎:最初は梟という字が読めなかったですけど、今は全員ちゃんと漢字で書けます!


ーー人気拡大には、Dancing Dollsをダンドルとか省略して呼ばれることも大事だと思いますが。


山崎:今はまだなくて。


Misaki:たまに「風光ル」とか「ふくろう」とか呼んでくれる方もいますけど。「梟伝説」という曲の歌詞に<KAZEFUKU伝説>というフレーズが出てくるので、「かぜふく」というのは、もしかすると今後あるかもしれないですね。


山崎:名前を知ってもらうことが先決なので、まずは「かぜふく」と覚えてもらえたら嬉しいです。


・コンセプトは「王道アイドルソング×R&B/ヒップホップ」


ーーそんな「かぜふく」のメジャーデビューミニアルバム『風光ル梟』は、全楽曲を3rd Productionsが担当。加藤ミリヤ、清水翔太、青山テルマなどR&B/ヒップホップ系のトラックをたくさん手掛けている3rd Productionsが全面的に関わっているのも、みなさんの大きなポイントですね。


Misaki:風光ル梟のコンセプトの一つに、王道のアイドルソングの中にR&B/ヒップホップを取り入れていくというものがあって。私はもともとヒップホップが大好きで、自分が聴いてきた、踊ってきたものなので。それをアイドルに加えていったら面白いんじゃないかと思いました。


 デモを聴いた段階から、ここはこうしたいとか、もっとBPMを上げたいとか、いろいろ意見を言わせていただいて、こだわって作りました。アイドル好きの方だけではなく、音楽が好きな方に聴いていただいたとしても決して恥ずかしくない1枚になっていると思います。


ーー「梟伝説」はダンスホールレゲエで、「翼-TSUBASA-」はEDM。そういうビートで歌ったり踊ったりするのは、どんな感じですか?


美心:特に違和感は感じてなくて。むしろ自分たちらしくて、風光ル梟にぴったりだなと思います。


山崎:リズムは、聴いているとすごくハマります。歌っていても楽しくなるし、踊りやすいし。だから聴いてくれた方も、絶対に気に入ってくれると思います。


大西:自分たちでも踊って楽しいですし、ライブでもテンションがアガりますね。


琳美:お客さんも一緒にノッてくれていて、そのノリがいわゆるアイドルのノリとも違っていて。そこが私たちらしくて、嬉しいし楽しいです。


Misaki:美心は、メインボーカルで歌うという部分で、プレッシャーを感じていたんじゃない?


美心:はい。ものすごいプレッシャーでした。ノドの調子が悪くても替わってもらえないので、すごく責任が重いと思ったし。だからレコーディングの前日は、緊張してなかなか眠れなくて。


ーーノドのケアも、より気をつけないといけないですよね。


美心:お風呂で、口を開けてシャワーをがんがんノドに当てて、うがいをします。


大西:龍角散を飲むんじゃなくて?


美心:じゃなくて。超有名な声優さんもやっていると、テレビで話していて。「一緒じゃ!」と思って嬉しかったです(笑)!


ーー「トキメキ♡バレンタイン」は、最初に会話で始まるのが可愛らしい。ラップパートもたくさんありますね。


美心:ラップは誰もやったことがなかったので、Misakiさんがお手本を聞かせてくれて、それを完コピする感じでした。でも本当に難しくて、Misakiさんに付きっきりでアドバイスしていただいて。


山崎:歌ラップと言うか、メロラップにしていただいたので、少しは歌いやすくなったんですけど……。最初はもっと難しいラップだったので大変でした。


琳美:ラップでもちょっとした音程が付いているのですが、入るときの音程を取るのが難しくて。レコーディングのときは、ブースから「Misakiさん音お願いします」って、音程を取ってもらって。


Misaki:先ほど話したように、コンセプトは「王道アイドルソング×R&B/ヒップホップ」なので、ラップは必然です。リズミカルな「トキメキ♡バレンタイン」もバラードチックな「上京Story」も、デモの段階ではメロの部分はまったくなくて全編ラップするトラックだったんですけど、あとで私がメロを付けました。


 本人たちのキャラクターも考えて、彼女たちらしさが出るディレクションをしていった結果、ラップもメロディも両方ある作りになっていって。美心のボーカルにカノンがハモったりとか、それぞれの魅力をより発揮出来るものになりました。ハモリは、ライブでも生でやっています。バラードだけじゃなくアップテンポでも生でハモっているので、そこは他のアイドルにはないところだと思いますね。


山崎:主メロが3人なのに対して、ハモリは私が一人で担当しているので、信じられるのは自分だけ。自分を信じて、3人に負けないように歌っています。最初のころは、つられて主メロを歌いそうになることもあったし、一人だから大変ですけど、きれいにハモれるとすごく気持ちいいんです。ハモリにも注目して、聴いてもらえたら嬉しいです。


ーー「初めて恋を知って」という曲は、しっとりとした切ないバラードで、そういう少し大人っぽい一面があるのも作品としての魅力ですね。


山崎:はい。ポップな曲やダンスナンバーが並ぶ中で、1曲バラードが入っていて、そこは『風光ル梟』という作品のポイントになっていると思います。最初に聴いたときも、すごく良い曲だと思ったし歌詞もすごく共感できます。こういう部分も、今後どんどん出していきたいですね。


・明確な目標を掲げることでやるべきことが見える


ーーMisakiさんは、Dancing Dollsとして活動した経験を踏まえて風光ル梟をプロデュースしていますが、Dancing Dollsでデビューした2012年の当時と今で、アイドルシーンにはどんな変化がありましたか?


Misaki:ダンドルでデビューしたときは、アイドル戦国時代の先駆けとなった時代で、女性アイドルがどんどん増えていった時期でした。でも今は、男性アイドルがすごく勢いを増していて、若干女性アイドルの勢いが失速していると思っています。そうしたタイミングで風光ル梟がデビューするのは、女性アイドルのシーンに新しい風を吹かせるためだったと思って、使命を感じています。


 それにデビューした5年前は、どのグループも「目標は武道館です!」とか、どこどこを目指しますなど野望を口にしていたものですが、最近は現実を見過ぎてしまったのか、あまりそういう野望を口にしなくなった印象があって。そんな中で私たちは、結成と同時に、2年以内に武道館でワンマンライブをやるという目標を掲げています。そういう明確な目標を掲げることで、常に自分たちがやるべきことが見えている状態になるというか。


ーー今は男性アイドルも含めた戦国時代になっている。強敵は女性アイドルばかりではないということですね。


Misaki:はい。それにみんな本当にいろいろなことをやっていて、個性の競い合いですよね。何か新しいことをやろうとしても、先に誰かがやっていることも多くて。ラップもそうで、実際にラップをやるアイドルは増えているし、音楽面でしっかりやっているアイドル、ダンスをがっつりやっているアイドルと、新しさという部分ではもう隙間がないんですね。そんな中でラップもダンスもやろうとすると、より高いクオリティが求められるようになっています。私たちはそのクオリティという部分で、しっかり気を引き締めて頑張っていきたいと思っています。


ーーイベントなどで、ピリッとした空気は感じる?


美心:みなさん、頑張りたいという気持ちは持っていると思います。だから私たちも、負けないようにしなきゃって思うし。


山崎:他のグループを見ることも勉強になるし。


ーーAKBグループや坂道グループなどトップクラスのアイドルは、女性ファンが多いことも特徴。現代の女性アイドルは、男性ファンだけじゃなく、女子のファンを増やすことも重要になっていますね。


Misaki:はい。同世代の同性からも支持を得られるようにと思って頑張ってはいますが、そこを目指していくのは生半可な気持ちではできないことです。そういう部分では、メンバーを厳しく指導することもあります。でもみんな厳しくしてもへこたれることはないし、ここで戦っていくんだ! という、他の誰にも負けない強い気持ちを持っています。この気持ちをずっと持続していけるように頑張りたいです。


ーーデビュー前から様々なミッションを掲げていて。「東京23区制覇ライブ」は、実際に達成することができました。これは、武道館に向けての自信に繋がりましたか?


美心:はい。風光ル梟のことをより多くの方に知ってもらえたと思うし、ライブを重ねるごとにメンバーとの絆がより深まったと思うので、やって本当に良かったと思っています。


山崎:1日で2~3区回ってライブしなきゃいけないときもあって、体力的に厳しいときもありましたけど、今振り返るとそれもすごく楽しかったなって。


大西:区ごとに違うお客さんが来てくれていて、少しずつでも私たちのことを知ってくれている人の広がりを感じたので、それはすごく嬉しかったです。


琳美:振り付けを間違えるときもあったけど、反省すべきところはちゃんと反省して。移動の車の中では、みんなでゲームをやって楽しかったです。


Misaki:切り替えが早いのも良いところです(笑)!


ーーではこの勢いで、2年以内に日本武道館。


全員:必ず達成します!
(取材・文=榑林史章)