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フォーミュラE開幕参戦の可夢偉「ファンブーストを使わなくても怒らないで」と珍要求

2017年11月22日 20:42  AUTOSPORT web

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フォーミュラEベルリン大会にも行き、テストはできなかったものの現地の様子を詳しく把握している可夢偉
12月2日から始まるフォーミュラEの開幕戦、香港ラウンドへの参戦を先日、発表したばかりの小林可夢偉が東京都内のホテルで会見を行い、参戦への経緯などを語った。会見ではフォーミュラEならではのレース中のマシンの乗り替わりやファンブーストについて、いつもの可夢偉節でコメント。新しいカテゴリーの見どころを詳しく語った。

「今回のフォーミュラEの参戦に向けて去年の終わりくらいから模索していまして、他のチームでテストするチャンスもあったのですけど日程が合わなくて、チャンスがなかなか巡って来ない状況でした。その中で最後の最後にアンドレッティ(・フォーミュラE)からチャンスをもらえたことに感謝しています」と、冒頭に参戦への経緯を説明する可夢偉。

 今季6月にドイツ・ベルリンで開催されたフォーミュラEには実際に足を運び、現場の関係者ともコンタクトをしていた。

「ベルリン大会を見に行って、実はフォーミュラEには昔からの知り合いがたくさんいまして、ユーロF3時代に所属していたチームがフォーミュラEのマシンを開発していたり、かつてのチームメイトやライバルといった同世代のドライバーが多かった。WECはトヨタがワークスとして戦っていますが、フォーミュラEでひとつ、楽しみにしているのは、そういった昔の仲間たちと戦えるという部分になりますね」と、可夢偉。

 マシンに関しても、その同世代のドライバーたちからいろいろと細かく事情を聞いているようだ。

「クルマは最高速が200km/hちょっとくらいなんですけど、実際、乗っているドライバーからすれば『いやいや、実際は400km/hくらいに感じるぞ』と全員、言うんですよ。システム的にもドライバーにはすごく難しい操作が必要で、レース中の作業が忙しい。レース中の無線の交信がすごく大事なのと、それに対するステアリングのスイッチの操作や変更がすごく大事で、そのちょっとした変更でレースを完走できるか、できないかまで追い詰められてしまう」

 体感速度がサーキットでのレースと違うのは、路面の違いと市街地というコース幅の狭いシチュエーションによるものだ。

「F1で開催している市街地とは違う路面で、本当の市街地のボコボコの道で開催するので、そういう意味では最高速200km/hと言えども難しさは感じるのかなと思います」と、可夢偉もその感覚を違いを理解している。

 フォーミュラEの特殊性は今後のドライバーとしてのキャリアにも、技術的な部分で魅力が多いという。

「フォーミュラEをドライブすることでひとつ言えるのは、バッテリーについてのノウハウとか、クルマを扱うことについての引き出しは確実に増えると思っていますので、そこでチャレンジできることが非常に楽しみ。予選では普通、ガソリンが軽くなってニュータイヤを履いたら、ブレーキポイントは奥になるんですけど、誰もが言うのが、予選でニュータイヤになったらブレーキポイントを手前にしなきゃいけないんだよと。『10m手前でブレーキしないと止まれないよ』と。これが出来るようになれば、それはそれでひとつ引き出しが増える」


「どんなクルマであろうとも、レースでは一番速く走るというのがドライバーとしては一番重要なこと。フォーミュラEのクルマはF1からもインディからもドライバーが来ているなかで、誰もが『思っていたよりも難しい』とみんながいうので、そのスキルを学びたいと思っています。もちろん、ドライバーのレベルもすごく高いというのも楽しみなところです」と続ける可夢偉。

「これからもシーズン4に関してはクルマの条件はそれほどイコールではないと思う。クルマは一緒ですけど、モーター、バッテリーの使い方がチームによって違うので、チームによってエネルギーの回生やリフト(ストレート走行時にアクセルを離して燃費節約)をマニュアルで操作しなければいけなくて、何もしなくてもいいチームもあったり、僕としてはWECの経験をうまく活かしてやりたいなと思っています」と、新しいマシンでのレースへの意気込みを語った。

 テストなしの、いきなりの本番レースについても、「僕も今まで、たくさんテストしてからレースに出たという経験があまりないので(苦笑)、なんとかなるかな、と思っています」と、いつもの可夢偉節で不安を一掃。

 さらには、フォーミュラEならではもファンブースト(事前のファンの投票によって、上位3人のドライバーがレース中に1回、5秒間、約40馬力出力アップするシステム)についても、「本音を言うと、ファンブーストって、ウワサによるとそんなに必要ないみたいなんですよね(笑)。ファンブーストを使うとバッテリーの温度が上がって、あとで大変なことになるらしいです」と、内状を暴露。

 さらには、「ファンブーストを頂けたら非常に嬉しいなと思いますが、気持ちだけで大丈夫なので(笑)。いや、嘘です。できれば、ファンブーストを投票して頂いて、日本人ファンもフォーミュラEに興味があるんだぞということを示して頂いて、いつか、この日本でフォーミュラEの公道レースが初開催できる日が来る手助けをして頂きたいなというのが本音です。実際、ファンブーストを投票して頂いて、もし僕が使わなくても、怒らないで下さい。それはバッテリーの温度の問題ですので」と、会場を爆笑させた可夢偉。

 最後には「大丈夫ですか、今の(発言)で?」と、司会に逆質問するなど、会見の最後の最後まで可夢偉劇場は健在。可夢偉が次世代のレースと言われるフォーミュラEという新しいカテゴリーでどんなレースを見せてくれるのかが楽しみではるが、そんな期待をよそに、会見の可夢偉には、まったく気負いは感じられず、いつもの自然体の可夢偉のままだった。