2018年のWEC世界耐久選手権参戦に向け、アストンマーチンは新型バンテージのロードカーをベースに、アストンマーチン・レーシング(AMR)が製作した新型GTEモデル『アストンマーチン・バンテージGTE』を同日公開。並びに、開発ドライバーとしてもプロジェクトに携わったアレックス・リンが、来季のLM-GTEプロのワークスドライバーとなることも発表された。
AMRのチーム史上もっとも華々しい成功を収めたモデルとして、ル・マン24時間でも複数のクラス優勝を遂げた『V8バンテージGTE』に代わり、来季2018/19WEC“スーパーシーズン”からの投入が予定されているこの新型モデルは、パワートレイン、シャシー、エアロダイナミクスを徹底して最適化することで、新型バンテージの持つデザインと運動性能を、かつてない高いレベルにまで昇華させたと謳われる。
英国バンブリーにあるAMRの本拠地で進められている開発プロジェクトのリーダーには、従来の『V8バンテージGTE』の設計と開発を主導したテクニカルディレクターのダン・セイヤーズが継続して就任。
開発中のモデルは2回の30時間連続走行テストを含めた1万3000kmの走行試験をすでに完了し、とくにスペイン・ナバラのサーキットで実施された30時間連続走行では、すでに前モデルを上回る耐久信頼性を示しているという。
また、路面状況が厳しいことで知られる米国フロリダ州のセブリングでも、過酷な耐久試験が行われ、このテストプログラムにはダレン・ターナーをはじめとするAMR所属のドライバー全員が参加。
そのAMRドライバーたちからのフィードバックには「従来の『V8バンテージGTE』よりも限界域でのコントロール性が優れている」との報告も挙がっており、トップレベルのアマチュアドライバーも多数参戦するLM-GTEアマクラスにおいて、こうした特性は大きな強みになる、とAMRの開発陣は自信を深めている。
「新しいレースカーの設計開発は非常に順調に進んだ。ゲイドン本社と緊密な協力関係を保ちつつ、ロードカーとレースカーの開発を事実上並行して進めることができました」と語るのは、テクニカルディレクターのダン・セイヤーズ。
「私たちは、プロセスのあらゆる段階でディテールを煮詰めることを重視し、マシンの各エリアを大きく改善することができました。テストカーを製作する最後の瞬間まで設計を最適化することに専念した結果、現在行われているテストスケジュールで非常に良好な成果が得られています。これは、私のこれまでのキャリアの中で、もっとも集中して作業に没頭し、もっともやりがいのあるプロジェクトのひとつになりました」
AMRによって改良されたメルセデスAMG製ターボチャージャー付き4.0リッターV8エンジンは、ドライバビリティとパフォーマンスの最適化に取り組み、電動ウェイストゲートを内蔵したボルグワーナー製専用ターボチャージャーやアクラポビッチ製インコネル合金エキゾーストシステムを採用。
また、ブレーキシステムについてはアルコンが、サスペンションに関してはオーリンズが、専用タイヤの開発に関してはダンロップに代わりミシュランがそれぞれ新たなパートナーとして迎えられ、モノブロックのフロント6ポッド/リヤ4ポッド・キャリパーを含むブレーキシステムや、ジオメトリーが見直されたダブルウィュシュボーンに合わせた5ウェイ・アジャスタブル・ダンパーを開発、供給している。
2017年のル・マン24時間でLM-GTEプロクラスを制したターナーとジョニー・アダム、そして2016年のLM-GTEプロクラスでWEC年間王者になっているニッキー・ティームとマルコ・ソーレンセンに加え、今回新たに24歳のイギリス人、アレックス・リンがAMRドライバー契約を締結。ワークスドライバーとしてアストンマーチン・レーシングに加入することとなった。
「新型モデルへのスイッチというエキサイティングなタイミングで、アストンマーチンに加入できるなんて最高の気分だ」と、現在もフォーミュラEのDSヴァージン・レーシングでレギュラーを務めるリン。
「僕の夢は常にマニュファクチャラー契約のドライバーとして戦うこと。アストンマーチンが、僕のように若いドライバーを選んでくれたことは本当に特別でクールな出来事だ」
リンは来季の"スーパーシーズン"でLMGTE-Proクラスの1台をドライブすることになると見られ、AMRによれば今後もさらなるドライバーアナウンスが続くことになるという。