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態度の悪い後輩は殴られても仕方ない? 日馬富士の貴ノ岩暴行事件を巡る報道への疑問

2017年11月20日 19:21  キャリコネニュース

キャリコネニュース

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横綱・日馬富士が10月下旬、平幕・貴ノ岩を暴行したとの報道が、連日マスコミをにぎわせている。日本相撲協会が11月19日に日馬富士に事情聴取し、暴行が事実だったことが判明した。ただ、一部報道で言われているビール瓶での殴打についてはまだ不明だ。

暴行沙汰が明るみに出た当初は、日馬富士がビール瓶で殴ったとされたことから、彼の酒癖の悪さや人間性、振る舞いに関する報道が多かったが、次第に被害者側である貴ノ岩を取り上げるメディアも出てきた。

その多くは、「同席していた白鵬からの注意を聞かず、スマホをいじろうとした」「先輩への口の利き方がなっていなかった」など、本人の態度の悪さを指摘するものだ。そして、はっきりと書かなくても「日馬富士をここまで怒らせた貴ノ岩も悪い」と言いたげのものも多い。

「日馬富士擁護論」を産む、メディアによる「貴ノ岩の過去や態度」晒し上げ

日刊スポーツは19日に「日馬富士の貴ノ岩暴行問題、始まりは錦糸町での口論」との記事を掲載。貴ノ岩が10月に東京・錦糸町の飲食店で、モンゴル出身の若い衆らに声を荒げて説教していたことや、白鵬の友人らに対し「俺は白鵬に勝った」「あなたたちの時代は終わった」「これからは俺たちの時代」などと豪語していたと報じた。

20日には、産経スポーツが「日馬暴行の発端、白鵬の説教だった…貴ノ岩の非礼な振る舞いに激怒か」のタイトルで、白鵬が貴ノ岩を注意している最中、貴ノ岩が「知り合いから連絡が来たとしてスマホを操作しようとした」ことや、日馬富士が「その態度に怒り、暴行に及んだ」ことを伝えている。

また、同日の日刊スポーツによるとこの知り合いは貴ノ岩の交際相手だったそうで、「誰とだ?」「彼女です」とのやりとり後に日馬富士が手を上げたとも明かされていた。どれも、暴行を受けた貴ノ岩の態度の悪さを槍玉に上げる内容だ。

19日のスポーツ報知は、貴ノ岩が今年の夏の巡業中、モンゴル人力士を殴っていたと報道。「今回の日馬富士の暴行事件の背景には、思い上がった後輩の態度を許せないと判断した横綱の"制裁"の意味もあったと指摘する声もある」と、日馬富士の行為を正当化するようにも読める内容だった。

こうした報道が増えるにつれ「日馬富士擁護論」も聞かれるようになった。横柄な態度を取った貴ノ岩が悪く、日馬富士は暴力をふるってもある程度許されるという論調だ。

「暴力は絶対にだめ(ただし事情があれば許す)」は成立しない

こうした報道にネット上では疑問の声が出ている。19日の日刊スポーツの記事には「『暴行される側も悪い』って、いじめの論理そのものやん」「生意気だからって、暴行するのはダメだろ」と指摘するコメントが多数寄せられた。

暴力をふるっても相応の理由があれば許されるといった空気は、今年の夏にも産まれていた。8月にトランペット奏者の日野皓正氏が舞台上で中学生を往復ビンタしたとして非難を浴びた件だ。被害に遭った中学生の振る舞いが知れ渡るにつれ、矛先は中学生に向くようになっていった。

マスコミは普段、「暴力は絶対にだめ」と言っておきながら、渦中の人物が大物だったりすると、「やられる方も悪い」と手のひらを返したり、制裁やしつけの意味があれば大目に見ても良い、と取られる報じ方をしていないか。ツイッターでは、

「相撲の暴行事件だけど、貴ノ岩の発言や態度が悪かったからとか言うけど、だからって暴行していいわけない。態度悪いから殴っていいとかないでしょ」
「貴ノ岩の態度が悪いから殴られてもしょうがないよねって雰囲気出てない?それは違うよね。ビール瓶だろうが素手だろうが手を出してしまった日馬富士の方がダメでしょ」

などの声も聞こえている。