いよいよ2017年の最終戦を迎えたTCRインターナショナル・シリーズは、11月17~18日にドバイ・オートドロームで行われたイベントでドライバー、チーム、モデルの3部門すべてのタイトルが決定。ジャン-カール・ベルネイが初のドライバーズタイトルを獲得し、M1RA、フォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCRが、それぞれチームタイトルとモデル・オブ・ザ・イヤーを獲得した。
レパード・レーシングのレギュラーを務め、選手権リーダーの座をキープしてドバイに乗り込んできたベルネイだが、ここまでチームメイトとして戦ってきたロブ・ハフはWTCCマカオ・ラウンド参戦のため欠席。チームは急きょ、BTCCのスタードライバーであるゴードン・シェドンをスポット起用し、このタイトル決戦に挑むこととなった。
初参戦のシェドンは予選Q1を軽々突破すると、Q2では早々にトップタイムをマーク。さらにセッション終盤には自身のタイムを更新し、グリッド上でただひとりとなる1分27秒台を記録し、初参戦のTCRインターナショナルでポールポジション・デビューを飾って見せた。
「今朝からマシンを理解するのにかなりの時間を要した。セットアップに苦労していたし、ポールポジションはまったくの予想外だ」と、セッション後に驚きの表情を見せたシェドン。
「シリーズ、フォルクスワーゲン・ゴルフ、タイヤ、そしてチームのすべてが僕にとっては初体験だ。BTCCでドライブしているチーム・ダイナミクスのホンダ・シビック・タイプRとは何もかもが違っているけど、このTCRマシンのドライブを楽しんでいる」
「今日はジャン-カール(・ベルネイ)のタイトル獲得をアシストするためにここにいるわけだし、彼はとても優秀で速いドライバーだ。彼とチームのためにベストを尽くすよ」
そのベルネイはQ2で1分28秒045をマークし、シェドンと並んで幸先良くフロントロウを確保。ドライバーズチャンピオンシップを争うM1RAのアッティラ・タッシ(ホンダ・シビック・タイプR)は10番手に終わるも、リバースグリッドとなるレース2のポールを確保し、最終決戦へと臨むこととなった。
迎えたレース1スタートは、シェドンのVWゴルフが抜群の反応でスタートを切るも、それを上回ったセカンドロウ4番グリッドのぺぺ・オリオラ(セアト・レオンTCR)がジャンプアップし、先頭で1コーナーへ。
2番手シェドン、3番手ベルネイのレパード・レーシング艦隊を抑えてレースを進めたクラフト-バンブー・ルクオイルのエースは、再三にわたるシェドンのオーバーテイク・アクションにも動じずギャップをマネジメント。
その後方では、エンジン交換により21番グリッド発進となっていたテスト参戦のガブリエル・タルキーニ(ヒュンダイi30 N TCR)が、とてつもないレースペースを披露し18周目に3番手にまで浮上。
しかしレースがファイナルラップ突入を目前にしたところで、彼のヒュンダイはスローダウン。老兵のドライビングに耐えかねたタイヤがスローパンクチャーを起こし、ここでレースを終えることとなった。
先頭集団を掻き回したヒュンダイのリタイヤ劇の間、4番手ベルネイの背後にはタイトルを争うタッシのシビックが接近。自力で王座への望みを繋ぎたいタッシは懸命のキャッチアップを試みるも、残り2周で冷静さを失わなかったベルネイは、前を行くオリオラのチームメイト、ジェームス・ナッシュ(セアト・レオンTCR)をかわして3番手に浮上。
タッシとの間にマシンを1台挟むことに成功し、そのまま19周のチェッカー。この結果、ベルネイの2017年ドライバーズチャンピオンが確定。5位のタッシ、そして予選であわやポールという速さを見せながら、ギヤボックス交換に泣いた助っ人ドライバー、ジョシュ・ファイルズのシビックが6位に続き、M1RAチームが参戦初年度で初のチームタイトルを獲得した。
「今日のスタートは本当にプアで、自分で自分を苦しめる展開になった。シェドンと僕の間には別のマシンが挟まっていて、自力で状況を打開するしかなかったんだ」と、ベルネイ。
「でも僕は落ち着いていたし、背後のタッシとの距離を見ながらファイナルラップでは(前を行くジェームス・)ナッシュのタイヤがなくなっていたのが分かっていたから、前に出ることができた」
「シングルシーターでのタイトル(2010年インディ・ライツ)、ル・マンの勝利(2013年LMGTE-Am)に続いて、このツーリングカーでのチャンピオン獲得は多くの意味を持つ。あらゆる種類のマシンを速く走らせることができると証明したようなものだからね!」と、笑顔を見せたベルネイ。
続く、今季最終ラウンドとなったレース2は、リバースポールのタッシが気負いからかジャンプスタートを犯し、ドライブスルーのペナルティ。代わってベルネイの元チームメイトであり2年連続王者のコム・トゥ・ユー・レーシング、ステファノ・コミニ(アウディRS3 LMS)が意地の勝利。
2位にウェスト・コースト・レーシングのジャンニ・モルビデリ(フォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCR)が入り、この結果によりホンダ・シビック・タイプRを5ポイント上回り、フォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCRがモデル・オブ・ザ・イヤーに輝いている。