FIA GT3の生みの親であるステファン・ラテルは数多のレースを主催する敏腕プロモーターとしても世界に名を馳せている。鈴鹿10Hの旗揚げにも携わった彼に、自身が持つ鈴鹿サーキットへの思い、そして欧州チームが10Hに寄せる期待度を聞いた(オートスポーツ本誌No.1468より転載)。
長年に渡って日本モータースポーツ界における夏の風物詩として歴史を紡いできた鈴鹿1000kmが幕を引き、来年の8月より鈴鹿10時間耐久レース(鈴鹿10h)がその後を継ぐことになったのは、これまで既報どおり。この鈴鹿10hは、世界中で人気を博すFIA GT3による、世界統一戦である。
鈴鹿サーキットとともに、この新たなイベントを創り出したステファン・ラテル氏は、ステファン・ラテル・オーガニゼーション(SRO)の創始者で、FIA GT3マシンの生みの親でもある。SROとして数多くのシリーズを主催する彼は、なぜ鈴鹿サーキットを新たなレースの舞台に選んだのだろうか。
「私と鈴鹿サーキットの間には強い絆があるのです」とラテル氏は語る。ラテル氏は1994年7月に開催された鈴鹿500kmレースにベンチュリー400GTRを駆り出場。それまでヨーロッパでレース活動をしていたラテル氏だったが、この鈴鹿500kmが国際格式レースのデビュー戦だったのだ。
GT2クラス2位というリザルトで「この時にいただいた“鹿”がいまもオフィスにいますよ」と明かす。また、翌95年の鈴鹿1000kmではポルシェ911GT2でGTクラス2位を獲得。そんな縁もあり、ラテル氏は「私にとって鈴鹿は、憧れのサーキットなんです」と語っている。
かつてのラテル氏のように、ヨーロッパを中心にレース活動をしているドライバーたちが鈴鹿10hに対してどのような反応を示したのかは、やはり気になるところ。「ヨーロッパのエントラントたちは、鈴鹿サーキットでレースする機会に恵まれたことに興奮しています。彼ら全員にとって鈴鹿は、ずっとレースがしたいサーキットだったのです」と、“レースの本場”での注目度の高さをうかがわせてくれた。
鈴鹿10hは世界中で人気を博しているGT3マシンをメインターゲットにしたイベント。インターコンチネンタルGTチャレンジのポイントも付与されるため、「同シリーズのエントラントが押し寄せることになるでしょう」とラテル氏はコメントする。先出の鈴鹿に憧れるヨーロッパエントラントの参戦が期待できるのはもちろんのこと、ブランパンGTアジアのエントラントの参加も見込まれている。
鈴鹿10hに先駆けて、日本ではブランパンGTアジアのレースが開催されるため、ラテル氏によると「多くのチームがそのまま日本に滞在し、10hに出場することになるのでは」と述べている。
具体的にどんなチームが鈴鹿を訪れるかは現時点では分からないが、ラテル氏は「スーパーGTに出ているマニュファクチャラー(トヨタ/レクサス、ニッサン、ホンダ/アキュラ)の参戦」を示唆。
さらに、スーパーGT GT300クラスのJAF GTマシンの参戦もできるため、日本代表と世界の精鋭たちによる、がっぷり四つに組んだ戦いが見られることだろう。
「競技とイベントのレベルは世界最高峰になります。鈴鹿10hは成功を収めることでしょう」と、ラテル氏も期待を語った。