2017年11月20日 11:23 弁護士ドットコム
大学の女子トイレに侵入したとして、兵庫県宝塚市の男性が11月上旬、建造物侵入の疑いで兵庫県警に逮捕された。男性は「女子トイレに入ったのは間違いない」としながらも「お腹が痛かった」「男子トイレが空いていなかった」と供述しているという。
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報道によると、男性は11月6日昼、正当な理由がないにもかかわらず、兵庫県伊丹市にある大阪芸術大短期大学部の女子トイレに侵入した疑いが持たれている。通報を受けて、県警伊丹署の署員らが現場に駆けつけたが、約1時間50分もトイレ個室に閉じこもったという。
「お腹が痛くて女子トイレに入った」というのは、一見して苦しい弁解のように聞こえるが、実は今年3月、静岡地裁沼津支部では、このように主張した男性に対して無罪判決も出ている。はたして、有罪と無罪の境目はどこにあるのだろうか。吉田要介弁護士に聞いた。
「建造物侵入罪は『故意犯』です。罪を犯す意思がなければ成立しません。たとえば、男子トイレと間違って女子トイレに入ってしまったというような場合、無罪になります。
また、検察官が『正当な理由がない』ことを証明できなかった場合、つまり、正当な理由があった場合だけでなく、正当な理由がないとまで言い切れない場合も、無罪になります」
どんなときに「正当な理由がある」とされるのだろうか。
「具体的には、男性の警察官が追跡していた犯人が、女子トイレに逃げ込んだのを捕まえるために立ち入るケースや、女子トイレに不審物があるとの情報を受けて、その捜索のために立ち入ったりするケースは、正当な理由があるものとされます。
また、あまり例はないかもしれませんが、男性の清掃員が女子トイレの清掃をするために立ち入る場合も、正当な理由があるものとされます。
さらに、男性トイレがすべて埋まって空きそうにない状況で、女子トイレはガラガラで誰もおらず、女子トイレで用を足さないと漏らしてしまう場合は、『緊急避難』が成立します。無罪になります。
緊急避難が成立する場合とは、簡単に言えば、自分の大きな被害を避けるために、やむを得ず、他人に小さな被害を与えてしまった場合です」
それでは、どんな場合に有罪になるのか。
「間違って女子トイレに入ったという弁解も、何度も通用するわけではないと考えられます。たとえば同じトイレで、過去に同じ弁解をしていた場合、過失によるとは認められず、有罪になる可能性が高いと思います。
また、女子トイレを盗撮した画像が入ってるデジカメを所持していたり、用を足すために必要な時間を明らかに経過して女子トイレに滞在していた場合は、『お腹が痛くて女子トイレに入った』という弁解が認められる可能性は低いでしょう。正当な理由がないとして、有罪になる可能性が高いと思います。
さらに、男性トイレが空いていたり、漏らしてしまうほど追い詰められていない場合は、女子トイレにやむを得ずに立ち入ったとはいえません。緊急避難は成立せず、有罪になる可能性が高いと思います」
男性がやむを得ず女子トイレを使用する場合、気をつけるべきことは?
「男子トイレの個室すべてをノックして、男子トイレに入ることが困難であったことを確認することや、女子トイレに入る際に『用を足す目的で入ること』を中にいるかもしれない女性に声をかけることです。
一番良いのは、女子トイレから出てきた女性に事情を話して、中の人の有無を確認してもらったり、トイレの外で男性が入っていることを知らせてもらうことでしょう。
そのうえ、用を足したら速やかに退出することなど、やむを得ず女子トイレに入ったと認めてもらえるような行動をしておくべきでしょう」
余程の状況ではないかぎり、女子トイレに入る行為はリスクが高いといえそうだ。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
吉田 要介(よしだ・ようすけ)弁護士
千葉県弁護士会所属。日弁連子どもの権利委員会事務局次長、千葉県弁護士会刑事弁護センター委員。法律を「知らないこと」で不利益を被る人を少しでも減らすべく、刑事事件、少年事件、家事事件、一般民事事件等幅広く手がけ、活動している。
事務所名:ときわ綜合法律事務所
事務所URL:http://www.tokiwa-lawoffice.com