WEC世界耐久選手権は11月18日、シーズン最終戦バーレーン6時間の決勝レースが行われ、TOYOTA GAZOO Racingの8号車トヨタTS050ハイブリッド(セバスチャン・ブエミ/中嶋一貴/アンソニー・デビッドソン)が総合優勝を飾った。このレースがLMP1ラストランとなったポルシェ919ハイブリッドは2位、3位を獲得している。
2017年のLMP1タイトル争いは前戦の上海で決着したものの、4勝どうしで並んだトヨタとポルシェの2メーカーがシーズン勝ち越しをかけて予選から激しい戦いを繰り広げている第9戦。
迎えた決勝レースは日没直前の現地時間17時00分にスタートが切られ、前日の公式予選でポールポジションを獲得したポルシェLMPチームの1号車ポルシェ919ハイブリッドがホールショットを決める。
その後方では3番手スタートの2号車ポルシェが好スタートをみせ、マイク・コンウェイ駆る7号車トヨタTS050ハイブリッドを交わして2番手に浮上。さらに4番手の8号車トヨタのブエミも僚友をパスして3番手につけた。
そんななかスタートからわずか5分後、ターン13イン側のボラード(オレンジ色の杭)が接触によって弾き飛ばされコース上に転がったことからセーフティカーが導入される。
このセーフティカーランは7分ほどで解除されるがリスタート後、2番手の2号車ポルシェがペースダウン。1周あたり4秒ほど遅れ、2台のトヨタに相次いで先行を許し4番手に後退する。
その後、2号車ポルシェの失速原因がコース上に落ちたボラードを車体下面に引っ掛けていることと判明したため、チームはティモ・ベルンハルトのドライブする2号車ポルシェを緊急ピットインさせている。
スタートから約30分後、1秒差でトップを追いかけていた8号車トヨタが1号車ポルシェをキャッチすると、ブエミが1コーナーでオーバーテイク。さらにグリッドからひとつ順位を落とした7号車トヨタのコンウェイもスタートから40分となる直前にニール・ジャニがドライブする1号車ポルシェをターン13で交わして2番手に浮上。これでトヨタのワン・ツーとなった。
1回目のルーティンピットでは1号車ポルシェを先頭に各車が給油のみのピット作業を行なっていくが、2番手につける7号車トヨタはコンウェイからホセ-マリア・ロペスにドライバーチェンジするとともにタイヤ交換を実施。順位を3番手に下げる。
これにより2番手にポジションを上げた1号車ポルシェだったがスタートから1時間26分、7号車トヨタのロペスにターン4のアウトから交わされ、ふたたび3番手に。ニュータイヤでペースに勝る7号車トヨタは勢いをそのままにトップの8号車トヨタとの差を詰めていく。
スタートから1時間50分過ぎ、トップを走る8号車トヨタがピットに戻り、ドライバー交代とタイヤ交換をしたタイミングで7号車トヨタが先行。8号車トヨタが2番手、ポルシェが3、4番手というオーダーでレースは中盤へと移っていった。
ピットストラテジーの差によって2台のトヨタが順位を入れ替えるなか、2番手となった7号車トヨタにアクシデントが発生。レース折り返し直前の2時間54分、小林可夢偉がステアリングを握る7号車トヨタがターン2でポルシェGTチームの92号車ポルシェ911 RSRと接触してしまう。
サイド・バイ・サイドの状態で接触した2台はともにダメージを負い、7号車トヨタはマシン右サイドカウル、アンダーパネルなどを損傷。ピットでの修復を余儀なくされ、トップから3周遅れとなった。また、92号車ポルシェはリタイアを喫している。
のちに7号車トヨタに対してストップ&ゴー・ペナルティが課されたこのアクシデントによってポルシェ勢が2番手、3番手に浮上してくるが中嶋一貴がドライブする8号車トヨタのリードは変わらず。
その後、ポルシェは1号車を駆るニック・タンディに3スティント連続走行をさせ一時的にトップに立たせたものの、1号車ポルシェは4時間目前にガルフ・レーシングの86号車ポルシェ911 RSRと接触。左フロントタイヤを壊してスローダウンしたことで8号車トヨタはもちろん僚友の2号車にも先行を許し、3番手にポジションを落とした。
レース終盤は後続に30秒以上のギャップを築く8号車トヨタが安定したラップを重ねて今季5度目のトップフィニッシュ。チャンピオンのポルシェを勝利数で上回ってみせた。
2位は2017年シリーズチャンピオンの2号車ポルシェ。僚友1号車ポルシェが3位に入り、ポルシェは“LMP1ラストレース”をダブルポディウムフィニッシュで終えている。
OMG! Contact between LMP1 #7 @Toyota_Hybrid @kamui_kobayashi and LMGTE-Pro #92 @PorscheRaces @ChristensenMK ! #6hBahrain #WEC pic.twitter.com/wRFfORMmMg— FIA WEC (@FIAWEC) 2017年11月18日
LMP2クラスではランキング上位3チームがグリッドのトップ3を占めるなか、3番手グリッドからスタートしたヴァイヨン・レベリオンの31号車オレカ07・ギブソン(ジュリアン・キャナル/ニコラス・プロスト/ブルーノ・セナ)が、レース終盤に発生した電動パワーステアリングのトラブルを乗り越えて今季4勝目を達成。
ランキング2番手のジャッキー・チェン・DCレーシングの38号車オレカ、ポールスタートでランキング3番手につけていたシグナテック・アルピーヌの36号車アルピーヌA470・ギブソンを振り切りLMP2ドライバーズチャンピオン、チームチャンピオンの両タイトルを、LMP1-Lからの移行初年度で獲得してみせた。
LM-GTEプロクラスは前戦上海でマニュファクチャラーズタイトルを手中に収めたAFコルセの71号車と51号車、2台のフェラーリ488 GTEがワン・ツー・フィニッシュを飾った。
タイトル争いではレース最終盤に僚友に勝利を譲った51号車フェラーリ(ジャームス・カラド/アレッサンドロ・ピエール・グイディ)が、フォード、ポルシェを破ってダブルタイトルを決めている。
今シーズン、5チームで争われたLM-GTEアマクラスは、ランキングトップのアストンマーチン・レーシング、98号車アストンマーチン・バンテージ(ポール・ダラ-ラナ/ペドロ・ラミー/マティアス・ラウダ)がポール・トゥ・ウインで有終の美。今季4勝目を記録し、チームとしては95号車アストンマーチンがタイトルを獲得した2014年以来3年ぶりのクラスタイトルを獲得となった。
澤圭太を擁するクリアウォーター・レーシングは最終戦での逆転チャンピオンを目指したが、結果は2位に終わり惜しくもタイトルには届かず。それでも参戦初年度から優勝し、最終戦までタイトル争いに加わるなど存在感を十分に示したと言えるだろう。