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「母の介護」に一切協力しない姉2人、同居する息子が苦悩…法的義務はないの?

2017年11月18日 10:42  弁護士ドットコム

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親の介護が必要になったとき、誰が親の介護をするのかを巡ってきょうだい間でトラブルになることも多いようです。弁護士ドットコムの法律相談コーナーにも、「姉二人が母親の介護を拒絶して困っている」といった相談が寄せられています。


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相談者の男性は、実家を建て直して母と妻と3人で暮らしていますが、母が妻の言うことを聞かずに困っているそうです。経済的な負担も全て男性が負っているといますが、姉2人は経済的な負担や母を泊めてくれといったお願いも拒み、電話にも一切出ません。


男性は、「私を含め姉二人は母を見る義務があると思います」と訴えています。子どもには親の面倒を見るという法的な義務はあるのでしょうか。また、きょうだいが協力してくれない場合には、どうしたら良いのでしょうか。小田紗織弁護士に聞きました。


●揉めたら家庭裁判所で調停や審判を

親の面倒を見なければならないという法的な義務はあるのでしょうか。


「親の面倒を見ることに関して、民法877条1項に『直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある』と定められ、民法879条に『扶養の程度又は方法について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、扶養権利者の需要、扶養義務者の資力その他一切に事情を考慮して、家庭裁判所が、これを定める』とあります」


親族内で揉めた場合には、家庭裁判所で決めることになるのですね。


「はい。他の兄弟姉妹に親との同居や費用の負担を求めたいのであれば、家庭裁判所に扶養義務の設定の調停や審判を申立てる方法があります。


過去の審判例としても、子ども7人全員が老母の引取りを嫌がり、子の1人が他の兄弟姉妹を相手に審判を申立てた末に、家庭裁判所が子のうちの1人に老母を同居させ引き取ることを命じ、他の兄弟姉妹に対して扶養料の負担(月々の支払)を命じた例があります。


ここまですると親子は勿論のこと、兄弟姉妹、ひいては従兄弟姉妹の親戚関係に心情的なしこりが残ってしまうとは思いますが、子もそれぞれに家庭をもつなどすると、自分の都合だけでなく家族の都合や意向もあり、親の面倒をめぐる事情や思いは複雑です。そのため、法的手続をとらざるを得ない場合もあるでしょう」


●親を施設に入れるのも一つの方法

法的手続きをとる前に、できることはありませんか。


「冷酷に感じるかもしれませんが、親に施設に入ってもらうのも一つの方法です。親の資力から施設に入れないとお考えの方もいるかもしれませんが、サービス付き高齢者向け住宅に入居し、生活保護を受給して生活をしている方も多くいらっしゃいます。


『親に生活保護を受けさせてまで…』と思うかもしれませんが、親の扶養は、子の扶養とは異なり、『社会的地位、収入等相応の生活をした上で余力を生じた限度で分担すれば足りる』とされ、親の生活費としては、『生活保護法による最低生活の生活保護基準額を参考にするのが相当』とする審判例もあります。


ですので、親がいくら困っているとはいえ、自分や家族の家計に余力がないのに、更にそれを削ってまで親の面倒をみなければならないこともないのです」


●介護をしても必ずしも相続分が多くなる訳ではない

親の介護をしてきた子どもについては、遺産相続の際にも考慮されるのですか。


「親の生前は親の面倒をみない他の兄弟姉妹に不満をもちながらも我慢して親の面倒をみて、親亡き後に、親の相続をめぐり自分には『寄与分』があるから自分の相続分は他の兄弟姉妹より多いと言えないのかといった相談は多くあります。


ただ、親と同居して面倒をみる、介護をするのは子の扶養義務として当然のことであり、親の財産の維持や増加に特に貢献したのではない限り、『特別の寄与をした』(民法904条の2)とは直ちに評価されません」


無条件に優遇されることはないのですね。親の介護問題を巡る親族トラブルにでは、何が大事になってくるのでしょうか。


「親の面倒をみるのであれば、兄弟姉妹間の負担に差があってかまわない、親子である以上は当然だ、という精神が必要です。納得がいかないのであれば、兄弟姉妹間で負担することを考えるのではなく、施設の利用などを検討した方が、兄弟姉妹間での心情的なしこりが残らず良いと思います」


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
小田 紗織(おだ・さおり)弁護士
法科大学院1期生。「こんな弁護士がいてもいい」というスローガンのもと、気さくで身近な弁護士を目指し活躍中。
事務所名:神戸マリン綜合法律事務所
事務所URL:http://www.kobemarin.com/