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乃木坂46、東京ドーム公演で示した“個性と自信” 新たなステージへの「きっかけ」を見た

2017年11月18日 10:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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「6年前、まだまだ蕾だった私たちが、同じところに向かって歩きはじめました。涙と汗を沢山流して少しずつ成長して、こうしてステージの上で花を咲かせることができました。今度はその花から生まれた種を、日本中、世界中、もっと広いところに運んでいきたい」(桜井玲香・2日目アンコールのMCより)


 乃木坂46が11月7日と8日に行なった『乃木坂46 真夏の全国ツアー2017 FINAL! 東京ドーム公演』は、6年間の集大成やファンへの感謝とともに、彼女たちがこの場所を終着点としない、という決意表明を示す場でもあった。


乃木坂46は次世代を“育てながら勝つ”グループに


 乃木坂46のライブは、これまで複数日開催の場合、各日で構成を変えてくるのが常だった。しかし今回は、一部を除きほとんどが2日間共通。つまり練りに練った選曲とステージングで、東京ドームという念願の舞台へ臨んだということだろう。


 1日目は、「Overture」のサウンドとともに、女子高生が東京ドームへ駆け出す映像から、次々とステージへ走り込んでくるという幕開け。しばらくその流れは止まず、一体何人でてくるのかと思えばその数なんと460人。各ダンススクールから集められたダンサーだという彼女たちが一斉に踊り出すと、キャッチーなシンセメロとうねりのあるベースが鳴り出し「制服のマネキン」が始まった。乃木坂46が東京ドーム公演をやる、と聞いた時、1曲目で真ん中に立つのは、生駒里奈であるべきだと思ったファンは多いだろう。センターとしてグループを初期から牽引し、二列目・三列目になってからも乃木坂46の顔として活躍する生駒が、記念すべきコンサートの幕開けを飾る。そんなファンの願いを叶えるように、生駒はセンターポジションで躍動した。


「東京ドームをやるって聞いたときは、私たち3期生が一緒に立っていいのかなと不安になったけど、もっとこのグループのために人生賭けて頑張りたいなと思った」(梅澤美波・1日目MCより)


 2曲目以降は「世界で一番 孤独なLover」、「夏のFree&Easy」、「裸足でSummer」、「太陽ノック」とセンターを変えながら夏曲が続き、デビュー時を振り返るVTRのあとは彼女たちのデビュー曲「ぐるぐるカーテン」へ。そこから「バレッタ」「三番目の風」と、1期生→2期生→3期生をセンターにした曲が並び、グループの歴史を端的に表現してみせる。3期生も単独ライブで鍛えた経験をもとに、かつてのような緊張はどこへやら、堂々としたパフォーマンスで、自分たちが乃木坂46の一員であることを誇らしげに提示した。


 ライブもそろそろ中盤に差し掛かろうとしたところで始まったのは、「他の星から」「でこぴん」「あらかじめ語られるロマンス」というユニット曲ゾーン。2日目の「他の星から」は若月佑美が舞台公演のため不在だったが、ほかのメンバーを補充することなく、西野・伊藤万理華・井上小百合・斉藤優里・桜井玲香・中田花奈の6人でパフォーマンスが行なわれた。かつて1stアルバム『透明な色』の収録曲を決めるカップリング人気投票でも1位になった「他の星から」は、グループのファンにとっても特別な意味を持つ。いまやグループの大きな柱となった西野七瀬が初めてセンターを務めた楽曲でもあり、PV・楽曲・衣装の完成度と、どれをとってもグループのなかで随一といえるユニット曲だからだ。


 3期生を中心としたMCを終え、VTRではアンダーメンバーの軌跡を辿る映像が流された。乃木坂46を語る上で、アンダーの歴史を切り離すことはできない。彼女たちは、固定劇場を持たない坂道シリーズの特性から、グループ初期は露出の少なさに思い悩んだが、8thシングル以降生まれた『アンダーライブ』は、そんな彼女たちにとって転機をもたらした。東京を中心にライブ公演を地道に積み重ね、会場をどんどん大きくし、今年前半には東京体育館3Daysを埋めるまでに至り、現在は全国へ乃木坂46の魅力を伝える役割を果たしている。選抜常連になるメンバーも現れるようになったが、辛酸を舐め続けるものもいる。乃木坂46にとって、アンダーは成長と苦悩の証だ。


 映像が終わると、彼女たちの名前が一人ずつ呼ばれていき、19thアンダーメンバーがステージへ上がったあと、ここまで姿を表さなかった中元日芽香と北野日奈子が登場。中元は体調不良を理由にグループからの卒業を発表しており、北野も少し前まで行われていた『真夏の全国ツアー2017』、『アンダーライブ九州シリーズ』より、体調不良による欠席が増えていた。すべての楽曲に参加するのは難しかったようだが、こうして結果的に46人全員がステージに立ったというのは、グループにとって意義のあることだ。


 さらに、ここから齋藤飛鳥、星野みなみ、堀未央奈、新内眞衣、衛藤美彩、井上小百合、最後に伊藤万理華と、アンダーから選抜常連になったメンバーも姿を表し、伊藤万理華のセンター曲「ここにいる理由」と、井上のセンター曲「あの日 僕は咄嗟に嘘をついた」、中元のセンター曲「君は僕と会わない方がよかったのかな」をパフォーマンスした。伊藤万理華と中元という、アンダーライブの一番苦しい時期を中心で支えた彼女たちがそれぞれ卒業を迎えるなか、このタイミングでアンダーの歴史を総括したことは、非常に意義のあることに思えた。


 そんなアンダーのパフォーマンスに呼応するように、選抜メンバーも眩いばかりの光を放つ。西野が床一面に設置されたビジョンの上に立ち、美しい映像とリンクするようにソロダンスを踊ったあとに披露された「命は美しい」では、無数のレーザーが飛び交う演出がなされた。流石ドーム公演といえる、これまでの乃木坂46には無かった技術とのコラボレーションを見せたあとは、センターステージで大園桃子と与田祐希が華麗に舞い、2人のセンター曲「逃げ水」へ。西野と対になるように、白石がエモーショナルなソロパフォーマンスを見せたあとの「インフルエンサー」は、これまでよりも熱を帯びているように見えた。現在はグループにとって一つの定形となった西野と白石のWセンターも、こうして様々な角度から切り込む演出によって、それぞれの個性が浮き彫りになる。


「乃木坂46として東京ドームのステージに立って『自信を持つというのはこういうことか』と実感した。ステージの上に立つには必ず持たないといけないと初期の頃に言われたけど、私には持てなくて。でも、ここでみんなで歌って笑顔で踊ることこそが自信なんだと思えた」(生駒里奈・2日目MCより)


 ライブ終盤、VTRで「乃木坂46の幹となった1曲」と紹介されたあと、ステージには生田絵梨花とピアノだけが佇む。これまでもテレビ番組やライブなどで度々披露されてきた、グループの代表曲「君の名は希望」の生田絵梨花伴奏バージョンだ。バックトラックは一切なく、メンバーの歌声と生田絵梨花のピアノ1本で、東京ドームの観客を一人残らず引き込んだ瞬間に、グループの積み上げてきたすべての経験が報われたような気がした。ことあるごとに「国民的ヒット曲がない」と言われてきた乃木坂46だが、グループがここまでブレイクする以前にリリースされたこの曲は、早すぎた代表曲であると同時に、彼女たちが撒いた鮮やかな花の種だ。グループの成長とともに、誰もが知る名曲へと大きな花を咲かせる、そんなヒットの形があってもいいのではないか。今の彼女たちが歌うこの曲からは、そんな自信すら感じ取ることができた。


「6年前のあの日、泣くことしかできなかった私たちは、こうして自分たちの足でこの場に立っている。それが大きな自信となって、また次の一歩を踏み出します」(齋藤飛鳥・1日目MCより)


 本編最後の「いつかできるから今日できる」の前、メンバーは両日において、自分たちの思いを口にしたのだが、先述の生駒を含め「自信」というワードが頻発した。乃木坂46は、あまり前に出ることが得意ではない、内気なメンバーも多いグループだった。しかし、CDの売上も伸び、テレビ番組やCMへの露出も増え、雑誌の表紙を頻繁に飾り、写真集も次々にヒット。舞台や映画、モデル、バラエティ、ラジオと幅広く活躍するメンバーも増え、それぞれの強みがしっかりと活かせる環境が整ってきたからこそ、ポジティブに自分自身を変化させ、こうして大きなステージへ自信満々に立つことができるようになった。蒔いてきた種はすべて、この舞台へ繋がっている。


 アンコールでは、「おいでシャンプー」や「ロマンスのスタート」などのライブ定番曲や、白石麻衣のシャウトがいつもより力強く響き渡る「ガールズルール」、そしてグループにとって初の全体楽曲であり、『真夏の全国ツアー2017』神宮公演でも大きな役割を担った「設定温度」を披露。楽曲が終わると、メンバーが長い紙をステージ後ろの装置にセットし、ラストの「乃木坂の詩」では、それらが連なって花の蕾の絵になるという仕掛けが用意されていた。この花はおそらく桔梗で、その花言葉は「永遠の愛」「誠実」「清楚」「従順」。ステージに掲げられた紫色の桔梗の花言葉は「気品」だ。「乃木坂の詩」のラストサビでは、その花が満開になる様子がプロジェクションマッピングで映し出された。2日目の最後では、メンバーへのサプライズとして、ファンがペンライトで作った「乃木坂46 アリガトウ」の文字がスタンドに浮かび上がり、こらえきれずに涙を流すメンバーが続出した。ファンがメンバーを連れてきたのではなく、メンバーがファンを連れてきたわけでもない。理想の関係性が、この演出に表れていたように思える。


 キャプテンの桜井は2日目の終盤、冒頭に書いたMCのように、日本だけではなく世界を見据えた発言をした。アジアでの公演も決定するなど、より広いフィールドへ踏み出す彼女たちは、まだまだ歩みを止めることはないし、2日間の公演が即完した今回の東京ドーム公演も、さらにビルドアップした形で見れることを期待したい。


「こうやって色んなメンバーも旅立っていくけど、この前向きな旅立ちが良い“きっかけ”であることを願って、この曲を歌いました。あらためて2人に大きな拍手を!」(桜井玲香・2日目ダブルアンコールMCより)


 そして、乃木坂46の東京ドーム公演を語るにあたって、2日目のダブルアンコールについても触れないわけにはいかない。この日は卒業を発表した中元日芽香と伊藤万理華にとって、最後となる大きなライブの場だった。そんな2日間を誰よりも笑顔で楽しんだ2人だったが、ダブルアンコールの「きっかけ」では、3期生を中心につくられたアーチが自然にできあがり、中元は思わず号泣。両肩を抱く斎藤ちはると生田絵梨花も涙を流しながら、メインから一番遠いステージへと足を運び、最後は2人をWセンターとする形で大サビを歌って全員が目を潤ませるなか、2日間の幕が閉じた。


「『君の名は希望』の<未来はいつだって新たな ときめきと出会いの場>という歌詞が大好きで。まりっかと乃木坂46の未来も、ときめきにあふれる素敵なものになると信じています!」(中元・2日目ダブルアンコールMCより)


「ありきたりかもしれないけれど、皆さんの応援があって、大好きなメンバーやスタッフさんがいてくれたからこそ、私はアイドルとしてステージに立てていたんだと思います。私もひめたんも乃木坂46も、ここから突っ走っていきますので、応援よろしくお願いします!」(伊藤万理華・2日目ダブルアンコールMCより)


 アートやファッション方面で才能を発揮し、個展まで開催するようになった伊藤万理華も、ラジオパーソナリティとしての適性を見出され、レギュラー番組を持つようになった中元も、乃木坂46というグループを個性的な色で輝かせたメンバーだった。中元は引退を発表しているが、伊藤に関しては卒業後の活動もいっそう楽しみだし、グループにいながら未だキャラクターを出せていないメンバーたちも、2人のように個性を伸ばし、どんどん自分の色を付けていくことを願う。それが選抜メンバーたちが語っていた「自信」に繋がることを、この舞台は証明してくれたのだから。(中村拓海)