アストンマーチンは11月16日、レッドブル・アドバンスド・テクノロジーズと共同開発している究極のロードカー『アストンマーチン・バルキリー』をベースに、サーキット走行専用車としてさらなるハイパフォーマンス化を実現させた限定モデル『バルキリーAMR Pro』を発表した。
アストンマーチン、レッドブルF1、AFレーシングのコラボレーションによって2019年のデリバリーに向けて開発の最終段階に入っているバルキリー。
“空力の鬼才”と呼ばれるエイドリアン・ニューエイがエアロダイナミクス設計を手がけるプロトタイプボディは2016年7月に『AM-RB001』として初公開されたのち、今年3月になってバルキリーという名称が与えられた。10月には日本でも最終デザインのモックアップが初披露され、その会場でレーシング仕様の開発が明言されていた。
今回発表された『バルキリーAMR Pro』は、究極のロードゴーイングカーとして開発されたロード版バルキリーから公道走行における制約など開放するとともに、エアロダイナミクス、軽量化をさらに追及したハイパフォーマンスモデル。アストンマーチン史上もっとも優れたトラック性能を発揮するサーキット走行専用のレーシング仕様車だ。
ロードカーともっとも異なる点はその外観で、サーキット仕様ではリヤオーバーハングを伸ばすいわゆるロングテール化がなされ、大型のリヤウイングを備える。その前方にはキャビン後方から伸びるシャークフィンが追加された。
また、マシンサイドではフロントタイヤ後方のフェンダー形状が変更されており、フロントタイヤハウス内の空気を排出するルーバーも確認できる。
タイヤサイズはロードカーが21インチなのに対して、新仕様では18インチに縮小された。これはLMP1マシンなどが用いるミシュランのレーシングタイヤを装着することを想定したものだという。
リヤミッドに搭載されるパワーユニットはコスワース製6.5リッター自然吸気V12型エンジンに変更はないが、制御システムの再プログラミングによって1000馬力を超えるパフォーマンスがさらに向上した。
車体の軽量化ではカーボンボディの最適化をはじめ、ヒーターおよびデミスターブロワー、インフォテインメントスクリーンなどユーザービリティアイテムを取り外したほか、フロントガラスはポリカーボネート製に、サスペンションアップライトのカーボン製にするなど、各パーツを軽量な素材に変更。さらにシートもレース用のものに付け変えられている。
限定25台生産となる『バルキリーAMR Pro』は、150台限定のロードカーと同様にすでに全車が予約完売済み。デリバリーは2020年を予定している。
「バルキリーは真のロードカーとして機能することが非常に重要だが、トラック専用のバルキリーAMR Proでは譲歩しない極端な進化を実現することができた」と語るのはレッドブル・テクノロジーズのチーフ・テクニカルオフィサーを務めるニューウェイ。
「ロード仕様とトラック仕様でコアとなるエレメントは共有されているが、空力、シャシー、パワートレイン、車体重量などはAMR Proのパフォーマンスを大幅に向上するように最適化されているんだ」
また、アストンマーチンCEOのアンディ・パーマーは「バルキリーは常に限界を追求し、その可能性を再定義してきた」とコメント。
「ロードカーは、パフォーマンス、エンジニアリング、テクノロジー(本当の意味でのハイパーカー)の新しい基準を設定し、トラック専用のバルキリーAMR Proでは、これらのリミットをさらに押し進めることとなるんだ」
「これは注目に値するプロジェクトだよ。驚異的なパッケージの新しいアストンマーチン車と25名のもっとも情熱的な顧客を新しく驚異的な領域へと進化させるものだからね」